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5.過去との邂逅

 店の外に悲鳴が響き渡る。次いで「泥棒!」「早くしろ!」などの怒号が聞こえてきた。


 そちらに目をやると、ずんぐりむっくりしたふたりの男が全速力でこちらに向かってくる。その手には似つかわしくない真っ白なバッグが握られている。


 泥棒、とは彼らのことだろう。

 彼らのはるか後方に、数人の男たちが走る姿が見えた。バッグの持ち主の使用人だろうか。


(そういえば……副長が最近女性ばかり狙ったひったくりが増えてるって……!)


 もしやこの短髪に似合わないドレスも、彼らを誘き寄せるための扮装(ふんそう)なのではないか。


 自分は囮だ──そう思い至ったアルティーティは、靴の留め金を外した。

 ジークフリートの背に合わせた、ヒールの低い靴とはいえ動きにくい。ひったくりを油断させて捕らえるには邪魔だ。


 ひったくりたちが駆けてくるのにあわせ、波が引くように一気に人が道の端へと移動していく。


「子供が!」

「エーミール!」


 短い悲鳴が上がる。

 幼い子供が、転がるボールを追って道に飛び出したのだ。離れたところから母親らしき女性の声も聞こえる。


 やっとのことで子供はボールに追いつく。しかし迫り来る巨漢に、子供は恐怖のあまり動けないでいた。


 アルティーティの脳裏に、一番古い記憶が浮かぶ。


 ──凶刃に倒れた母の血溜まりの中で、幼い彼女は呆然と立ち尽くしていた。あまりの出来事に声が出ない。頬を濡らしているのが涙なのか、母の血なのかすらわからない。


 刃を持った男が今にも襲い掛かろうとしたその時、現れたひとりの騎士。その華麗な剣さばきを前に男は倒れた。


 彼がいたからこそアルティーティは今ここにいる。彼のような騎士を目指そうと志したのだ。騎士であればいつか、彼に会えると信じて。


 もう顔も思い出せないが、彼が言った言葉だけは覚えている。


(……絶対、助ける……!)


 刹那、彼女は駆け出した。ドレスをまとい、コルセットで締め付けられているとは思えないほどの速さだ。


「おい! 待て!」


 背後でジークフリートが声を上げたが、彼女の耳には届かない。彼女の目にはひったくりたちと子供しか映っていなかった。


「どけ!」

 

 ひったくりの怒鳴り声に、子供は身体を大きく振るわせる。怯えて身動きが取れない。


 動かない子供を避ける素振りもなく、ひったくりたちはそのまま直進してくる。全力疾走とはいえ、アルティーティの足では間に合わない。


(こうなったら……!)


 アルティーティは足を止め、()()()()()()()()()

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者さんに〇〇に似てるというのはタブーだと思うのですが、ここまでの描写を見るに、図書館戦争って小説を楽しんで貰えるのではないかってワクワクしました。もしよろしければ読んでください! この小…
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