pork-poke-past4
「ふむ。自己肯定感を上げるにはどうしたら善いんだろうね。私の天使、と呼ぼうかこれから」
「ぜってーやめろ。ぶち上げられても気分が悪い」
「へぇ?気分がねぇ?ちょっと本音と違うだろ?今さら隠すなよ。本当は?」
「……そんなタマじゃねぇよ俺は」
「自己評価低いとポジティブな言葉も真に受けられなくなるんだな。謙虚と呼ぶべきか、屈折と言うべきか。しかしますます気に入った」
「変な奴だな。俺も大概だが、あんたほどじゃねぇ」
「そうだろそうだろ。この村は私並みに変な奴ばかりだ。芭蕉は何にでも寛容みたいなのさ。男でもあり女でもある。懐の奥行きが単純に倍なんだよ」
「だから、俺も居て良いって?」
「そうだ、権天使と呼ぼうか。下から数えて3番目に偉い天使だ。つまり大分下っ端。それなら許せるだろ?やーいやーい下から3番目の男女ー」
「話聞けよ。はぁ。まあ、それなら別に。もうなんでも良いや」
「言ったな?ふふん。ちなみに、この権天使、人間が出会える天使の中では最高位だからな?」
「物好きな奴」
ふむ。落ち着いたらこの肉体、ビアンカ夫人の甘酸っぱい記憶が蘇って来たぞ。何だコイツ。こんな凶悪なもんぶら下げといてこれまでの人生で全然使って無いぞ。初心にもほどがある。附子の風上にも置けない奴だ。
「へえ。未来から歴史を変えるためにやって来たのかいそりゃすごい。最近、海洋貿易で蕪券とやらが流行ってるらしいのだがあれ出資しとくべき?」
みんなでジャム突っ込んで茶葉を啜る。ソテー氏が距離を取って座るので座り直す振りをして少し詰める。
乗ってきてバライロも、おかわりを注ぎながら大胆に詰める。コイツは自然な動作、というか所作が普段から芝居がかって胡散臭いので不自然な動作なのだが、違和感ないのでバレない。
「南洋の方に出資してください。遠いですが、見返りに芭蕉族の北の橋頭堡として優遇される計画がありました」
ありました。なるほど、俺の暗殺のせいで復讐鬼になっておじゃんになると。未来のこの村、郁子も附子も居なかったしな。全部捨てたんだな。
「おいおいそんな目で見るなよ?惚れ直しちゃうだろ。なぁに大丈夫さ。これでも良いとこの出なんだ。村人の繁栄の為に精々、精出して頑張るよ。君が死なない限りはね」
昔言ってた教団とやらの暗殺の阻止ね。どうすりゃ善いんだ?村にトリモチとかトラバサミとか仕掛けまくるか?しかし郊外の森とか茂みとかは貴重な村人の憩いの場だ。村人に被害が出てしまうな。
「ピギィ。大丈夫です。その為に私はここに戻って来たのです」
シュルシュルと藁束をほどき笠や簑にして着込むソテー氏。素肌にそれはチクチクしない?
その特殊なスキルに感心している体でバライロと結託して距離を更に詰める。夫婦らしい息の合い方だ。バチコンとウインクしてきた。カワイイ。
「我ら3人なら、敵拠点をぶっ潰せます」
ピギフシュー。と息巻くソテー氏。時間を遡ることによって心の若さも取り戻し、ドングリ眼もつやつや輝いている。
「ふむ。昨日までこの世全てに絶望していたのにな。時間は、君に豊かな感情を与えてくれたんだね。いや、愛の力かな」
ピギテレテレと恥ずかしがるソテー氏。ちらとこちらを見る。俺はバライロに目配せ。いや、これは我慢できんだろ。
「ピギ?ちょっと2人とも?」
「どうしたんだい間少年」
呼び名通りに間に挟む。バライロ氏も俺ほどじゃないがガタイが善い方なのでもはやソテー氏は生地に包まれた具も同然。あとは焼き上がりだか茹で上がりだかを待つだけである。
「ダメですこれは!解釈ちがい!花々の間に挟まるなんて死んでしまいます!!」
「そりゃそうだ。俺たちが責め殺すんだからなぁ!」
「エフフフフフフ!」
「ピ、ピーギィィィィィィ」




