hot spring winter spot summer of fall 4
難敵ばかりだった。
見た目こそ悪いがお酒に善く合う大蒜の燻製だとか、空飛ぶ蕎麦切りモンスターとその教徒たちだとかを二重の意味で物理的に平らげこの《温泉湧く湧くランド》の最下層、俗にボス部屋へと着いた。
「むー!むー!」
ムム!未亡人らしき野老美女が拘束されている。その横には、斧を持った巨大な、あれは牛額か。なんて如何わしい組み合わせなんだ!
「初手から全力だ」
「ピギィ。猫道」
ソテー氏のスキルによって舞台に存在しない通路を通り皆でボスの背後へ回る。
牛額を糸で縛り、邪聖少年が剣で足首を、牝柿母♂は錫杖で膝裏、草臥れジト目は薪雑棒で足の小指を叩く。いや、足ばっかり!
「こんな木の棒でダメージ与えられるとこなんてここしかないんだもん!」
「朕、宗教上の理由で女の子に暴力はちょっと」
「B兄ちゃん、この子、優しい目をしている」
各々ろくでもない理由で手加減したらしい。全く最高のメンバーだせ。てかメスなのかこのモンスター。未亡人拐ったのに?テンションが上がるな。
確かに牛額を見ると、長い睫に濡れたような優しい黒目のウシさんだ。白と黒の斑模様もなんか可愛らしい。
「んー!んー!」
未亡人が必死に何か叫んでる。サル轡を外さなければいけないが凄く外したくないな。しばらく眺めてたいぜ無意味にいや有意義に。
ガキン。と背中から音が聞こえてきた。
「へえ、神様、面白いものを飼っていたんですね。イヌか、嫌いなんだよね」
「ワタシの鼻は誤魔化せんぞ。一見、未亡人っぽくかつ純潔っぽい匂いで隠れているガウ、モンスターだなお前」
ヘソ周りの召喚契約紋が輝く。
俺と契約し、互いに不可分となった狗尾草の女傑スーサイド。召喚の度に契約時の姿に再構成される為に、全盛期の強力な姿の彼女が俺の背中からニョッキリ生えてきた。
「神様、改めて自己紹介を。《温泉湧く湧くランド》ダンジョンボス。《悪役》系派生職《詐欺師》系《征服者》コン」
美しい白い肌はそのままに、
房の付いたウシの尾だったものは根本から解けていき、筆先の様なフサフサふっくらしたキツネの尾に。
霊峰のような白い角はとんがり具合はそのままに、幻術が解けて銀色の三角耳に。
「名前はありません。ダンジョン産のモンスターにそんなものあるわけないじゃない?コーンコンコン♡」
「むー!むー!」
捕まってる未亡人が叫ぶ。わかる。わかるぜ。これを伝えたかったのか。
「B兄ちゃん!囲まれた!」
ダンジョンの壁に化けていた雑魚モンスターたちが、変身を解いて集まってくる。宿でも従業員に化けていたし、雑魚もボスの特性を色濃く受け継いでいるようだな。
装備制限付きのダンジョン。たしかに直接の戦闘力は低いんだろうが、こういう属性持ちとは厄介だな。
未亡人風純潔少年が、未亡人風冷血少年キツネ風モンスター下衆裏切り仕立てになってしまうとは!戦闘力は低くても破壊力は抜群だ!厄介だ属性てんこ盛りぜ全く!




