アスモデウス-明日のデウス-昔日のリリス!3
「『牧場女神官の縦ロールのチョココロネ感』」
ガコン
「ド、『楢の民の子供大人のビフォーアフター感』」
ガコン
「ぬぐぅ。『宿屋女神官のツンデレかぁーん』!」
「「「オオオオォ!」」」
戦いは白熱していた。何人かのおねーさんは死んでいるが仕方ない。公の場で傷を抉られてるからな。しかし、場が白熱している限りこの戦いに限度はない。
これは個々人の胸三寸で重さが決まる戦いだ。多くの形のないもを量ることで確信できた。だから舌先三寸口八丁で俺が終わらせてやる。
「リボルバー!例の動画をあげろぉー!」
「了解!造物主!」
腰帯にじゃらじゃら付けていたアイテムの1つたる無線を取り叫ぶ。
過去生の俺が未来の現在の為に神様に奉納したかつての無生物にして今生の新たな人類、蜜蜂薄荷の最初の人たるリボルバー、またの名を歯車生肉が命令に従い動画をポチっとアップする。
「む、なんだ?天秤の様子がおかしい?」
「おねーさん。俺がこの試合の最初に量ったものを覚えているか?」
「む、たしか、『ジョンスニーカーの雄っぽさ』だったか」
やめてくれ受付おねーさん全国放送で。ライ麦畑は昔の名前捨てたんだ。実家が旧王家側だったし名前と顔隠してるんだ一応。バレバレでも大義名分が必要なんだぜ。
まあ、俺はもっと酷いことを今してるんだがな。
「ここからじゃ見えないが、俺は全国の配信設備にある動画を流した。それがこの天秤の異常の原因さ」
「どういうことだ?」
「この天秤は、形のないものを量ることができる。しかし、その重さとは、真実不変のものじゃない!みんなが思ってる何となくの感覚を量っているんだ!『うん、そうそう、教会おねーさんって明らかに乳盛ってるよねー』とか『武器屋おねーさんって絶対ダメンズだよなー』とか!現実普遍のものを量る装置なんだよ!!」
「「「なっ、なんだってぇー!!!」」」
いや、教会おねーさんの偽乳がバレてたこととか、かわいそうな武器屋おねーさんは置いといて、なんで受付おねーさんがびっくりしてんだよ。知っとけよそこは。
元々が公正を量るものだから時代や流れ、によっていくらでも揺らぐんだろうな。もしかしたら永遠に揺らがないものも在るのかもしれないが。
「そして俺が全国に流したのは、ライ麦畑の雄っぽい所を余すとこなく映した動画だ!」
都で王族救った時とか、レジスタンスに助太刀した時のエピソードが講談として広まって、救国の乙女って呼ばれてるからな!そもそも男と知ってるのが一部の民だけで、後は誰もが皆、魔王に仕える可憐なくノ一の女の子と思ってるからな。あ、魔王って俺の事な。あれ?現実が物語に追い付いたぞ?実際色欲の魔王じゃん今の俺。
ちなみに講談の中でルーシーちゃんは、ライ麦畑の一番の親友にしてライバルって設定だ。確かに日頃の二人の姿は男女のイチャイチャには見えんものな。今回の神と悪魔の試合では、実はルーシーちゃんは魔王だったというカミングアウトでいいね!が爆上がりしてた。関連グッズの売上も爆上がりである。無視できない財源になってきてホクホクである。
「あからさまな場外戦だワ、しかもヒワイなものを国中にばら蒔くワ、ルールブックにはたしかに書かれていませんガウ、決してフェアではない行為!まさに外道!B-T選手には倫理観がないんでしょうかー!?」
無いね!
大衆に真実を見せてしまえば、現実は容易に変わる!
さあ、天秤が傾くぞぉー!
ガガガガコン!
あ、やべ、重くなり過ぎか!?
ガコン!
「いえ、大丈夫です造物主。最終的に世間のライ麦畑の評価は『凄く雌っぽい雄。悪実始まったな。全然イケる』に落ち着くように調整しています。全て、手筈通りに。悪実も薄いとはいえ妖精種。これで今後はより雌っぽい雄が増えていくかも知れませんね」
ギリギリ、皿が地面に付いていない!そして、おねーさんが『宿屋おねーさんのツンデレ感』を量った直後!つまり、受付おねーさんは自分側の受け皿の位置を均衡以下に出来なかった!俺の勝ちだ!
てかなんだよ宿屋おねのツンデレ感って!?あの人にデレなんてねぇーから!!試合の熱に押され過ぎだろ世間よ!皿が重くなったら負けるので指摘せんがな!!
「勝負ありー!色欲の魔王!B-T選手の勝ちだぁぁぁぁ!試合は神様側3、魔王側5、引き分け1で、魔王チームの勝利だぁぁぁぁぁ!」
「後半の追い上げが凄まじかったですね!会場の熱気冷めやらぬままですガウ、このまま授賞式に移ります。準備が整うまでしばらくお待ちください。ガウガウ~」
…あ、やべぇ。勝っちまった。




