Be-Tried! blue-bad-beauty-boy
がんばれ!青-悪-美-少年
大変だった。おねーさん方は怒り狂うし、スーサイドはエリーゼの遺体を担いで教会地下の召喚獣合体の施設へと向かい、レディスケルトンを触媒に自身と合体させて、骨と芝の神へと成るし、俺は血の記憶がこびりつく心のノートをベリベリと引き剥がすハメになって今も気分が悪い。
まあそのお陰で、リボルバーが誰によっていつ奉納されたかも思い出せたので、こうして奴が隠していた禁忌のタイムマシーンを復活させて過去に戻ってこれたわけだが。
タイムマシーン。人の希望、心の重要な部分であるそれを代償にして起動する禁忌の装置。つまり冒険心を忘れない、不屈の闘志と鋼鉄の意思をもつ俺様なんかは実質ノーコストで無尽蔵に使えてしまうそれによってこうして妹を助けたわけである。
何もかもこれで穏便に終わるぜ。…骨と芝の神だけどうしよう。最早エリーゼでもスーサイドでもないけど存在しちゃってるんだよな。確かにエリーゼは骸骨のハーフだし鎌ももってるし何より《死神》だから相性良かったんだな大シバ様と。最悪だよ。大シバ様存在させちゃったよ。
「義兄教父様。私」
運命を受け入れてしまいましたごめんなさいって言いたいのか?謝罪はいらん。心配させやがって。さあ、帰るぞ。そこの経験値4匹をたっぷり搾ってからな。
過去の明日の早朝の、ええい紛らわしいな。明日の早朝の死体や状況を、エリーゼと家に帰って邪聖少年に伝え、賢いのでそんな少ない情報から逃走ルート割り出して深夜のうちに主犯とその護衛を捕まえた。
下水路を、糞尿に塗れながら歩いているところを出口で待ち構え、リボルバー謹製の放水車で川の水をブッカケて制圧と洗浄を一挙両得してやった。
護衛の高そうなお洋服も主犯のぼろ切れもまとめてひっぺがしてやり、手枷首枷付けてあられもない姿にしてやった。いやあ、こんなハクいおじょうさんを、好きに出来ちゃうなんてなぁ。どう搾り取ってやろうかな。護衛のお嬢さんと羞恥なことでしてもらおうかね?お世継ぎ増やして困らせるか?どうしよう。どれが1番辛いのかな高貴な生まれの生き物ってば。
「B-Tさま。最早決定的になった。今はもう、あなたさまの御慈悲を乞うばかりでございます。どうか、わたしはどうなってもかまいません。何とぞ家族だけは。どうか彼らの命だけはお救いください」
可哀想だなぁ。可哀想だから冠だけは返してあげよう。裸王冠。んんー、セクシーだねぇ。
「父は狂っていきました。契約の重圧と罪悪感に耐えられず。今回の粟の民との新たな契約で、おそらく崩壊します。趨勢は決して、当家の狂気も徐々に徐々に……」
くんくん。髪が下水臭いな。手から石鹸水を出して泡泡に洗ってやろう。
「鸞、ビューティーさまによって、新しくそして古き善き血へと置き換わるのでしょう。多くの悪しきを瀉血しながら」
凶悪な形に変えて眼前に突き出してみた。金属のようなトゲトゲの、挿さったらズタズタで死ぬようなやつに。想像力を鍛えるため、それを体に擦り付け引っ掻き傷をつくる。その涼しい顔を歪ませたいぜ。
「附子排除の理由は、その血なのです。王の血が薄くなりすぎて、最早契約の維持ができないから。だから《枠》を減らそうとしました。してきました。だから、自分がいつか裁かれることを覚悟して、それでも排除にまわったのです。父も、そしてわたしも」
久しぶりの目からビームで金属板に凹凸を作る。B-Tとロゴの入った焼きごてを作ってみた。ジュッ、とそのまま王子様の下腹に印をつける。ふむ、痛みも屈辱も感じないのかな。
「この排除は今にはじまったことではなく。過去にも多くありました」
「ああ、バライロなんか被害者だな」
ジュッ。もう1つ。理不尽で心を折ろう。
「はい、いえ、そうではなく、かつては粟の民も大昔には榁の民も遥かな太古には楢の民も、我が国の臣民。人類圏を形成する構成員でありました附子へのそれと同じように、これまで多くの種族を迫害して、当家を成り立たせていたのです」
護衛のお嬢さんを、顔が腫れ上がるくらいぶん殴る。初めて悲痛な顔をした。へぇ、いいなお前、
「薄くなりすぎたのです。王の、其の身に流れる赤い血ではなく、祖の魂から継いだ青い血が。もはや国体を維持できない程に。遥か北の辺境に残る、天藍石のような濃い青い血に置き換わってしまうほどに」
ははは、泣くな泣くな。別に自分が殴られてるわけでもないのに。
「それでも。流れに逆らおうとも神と民の不利益にしかならなくとも、王として、人の子として、抗わなければならなかったのです」
運命に?いや、身内の安寧のために?だましだまし継ぎ接ぎでぼろ切れの王衣を纏って。終いには剥ぎ取られて罪人スタイルじゃないか。
「どうか、このままでは狂った王に殺されてしまう。何とぞお救いください。その振り上げた腕を彼女ではなく、どうかわたしに。わたしに一身に背負わせてください。当家の罪を。わたしの罪を」
いいぜ、糞まみれのクソガキ王子様。お前の可愛い弟妹たち、大切な乳母一家、全部助けてやる。そうだな。
代わりにお前、これから一生食事は俺の糞尿だけな。
「ありがとうございます」
いいねぇ。
こいつ、そんなことで許して貰えるのかと安堵したぞ。託すだけの老いぼれでなく、何も持たない乞食でなく、罪を犯した餓鬼道でもない、至尊なクソガキがだ。いいな。こいつ。極まってるじゃないか。本当にこれで青い血が薄まってるのかよ?代償を増やしてやればこいつでも十分
ボウガンが放たれ、癖歪み忍者が手で掴みとる。下水路越えてるからギリギリ街の外なんだよな。ファインプレーだぜライ君。あとでルーシーちゃんの姿で労ってやろう。
「B兄ちゃん。それは浮気だよ」
凄まじい嫉妬の顔。ボウガンを放ったのは当然邪聖少年であった。善いじゃねえかケチ。こんなにそそる奴なら2号さんにしたくもなる。
「貴殿、どうする。仲間内で殺し合いはしたくないが」
大丈夫だライ麦畑。ちょっと拗ねてるだけさ。ビューティーが本気ならバレない時か、最早どうしようもない時に殺してる。
クソガキ王子様に、あごを開くよう指示する。代償だ。失うことでこいつの聖性は高まり、もしかしたら邪聖少年に匹敵するかもしらん。《犠牲》とは、我らが母君、死と闇の女王のもっとも大好きな物だ。
「さて、もう必要がないからお口の歯を全部抜いちゃいましょうねぇ」
ぐちゃ。
いてえ!背後から殴られた。
「脅かすのはやめなさい。その気もないくせに」
げぇ!あんたが主体だったのか。意外だな受付おねーさん。俺はてっきり宿屋おねーさん辺りが当たりだと思っていたよ。あっちなら喜んで一緒に抜き抜きしそうなのによ。
「いやなにたまたまさ。あれらは全部私だし、君らは全部大切な我が子だ」
脅かしはここらで善かろうと、護衛のお嬢さんの頬を癒し、クソガキ王子様ともども枷を外す。寒いだろうから仕方なしに羽織っていた初期装備の外套を貸してやる。
あ、今日は下は裸だったから今度は俺が裸に。裸手袋長靴に。仕方ないので癖歪みのくノ一スーツも脱がして護衛お嬢さんに着させた。これで寂しくない。
「キミも、ビーちゃんのところに」
「あの、その、朕、B君兄様の糞尿で全然問題ないというか」
儚い顔のクソガキ王子様が頬を染める。
「むしろ望むところというか」
貸してやった外套が一部盛り上がり、俺のテンションも盛り上がった。悪い方にな。予想外だろこんなの。墓荒らし気取ってたら墓穴掘ってたわ。スコップで棺桶にクリティカルヒットだわ。
「……ハハッ」
おい、諦めた笑いやめろ地母神。たすけて俺を!
「お兄さんと呼ばせてください旧王の子息よ。素晴らしい志です。僕もこれから一生それでいこうと思います」
「ビューティーさん……。ではB君兄様が長男、朕が次男、あなたが三男ですね。ステキ、家族が増えました」
「年齢的にはB兄ちゃんが1番年下だから、何か興奮しますね」
おい何ほのぼのしてんのヤバくないちょっと。この俺が臆し思わず後退る。そして背中にぶつかる柔らかくもしなやかな筋肉の感触。つやつやもちもちの癖歪み忍者、スーツ剥ぎ取られてるから癖歪み褌がたっていた。それはもうそそりたっていた。
「拙者もためしに」
「やめろぉ!」
「いや、流石に一生は無理でゴザル。一週間、一週間お試しで」
お前の開発され具合だったら一生になりそうなんだよぉ!キャパシティ広すぎだろ新大陸かお前の肉体と精神は!
「フロンティアスピリーッツ!」
「ぎゃああぁぁぁぁ」
た、助けて、とびきりの美少年3人に尻を狙われてる!栄養補給源として!
「ビーちゃんの自業自得だ。まあ、長い人生、そんな時もあるだろう」
「義兄教父様にも堪えられない事ってあったんですね」
「尻から食料だせるのか。御前、まるで大昔の豊穣神みたいだガウ、もしそうならワタシも1口欲しいワン」
ちげぇから!そういうのじゃねぇからこれ!神様的な表現じゃなくて性癖的な話だから!増えないで!
「フトモノホネェェェフカフカァァァァ!シバフノオテイレェェェオイシィィィ!」
この窮地には絶対役に立たねぇ骨シバ神きちゃった!いらん、リボルバー、リボルバー来て欲しい!もう一度タイムマシーンで過去に!墓穴掘る前の時間に!
「ごめんなさい、造物主よ。この装置にも造物主から制約が課せられていまして、1度、旅の終わりを迎えたら、それ以上その時間を変えることは出来なくなるのです」
ステキな制約ですねぇ!ハッピーエンド?じゃあ今はエンドロールが流れてるね絶対!これがハッピーエンドに見えるならその造物主は頭イカれてるよ!誰だよそいつ!俺だった!
「「「「さあ、試しに1口」」」」
邪聖、クソガキ、癖歪み、スーちゃんの4人に四肢を固定される。レベルはやや劣るが高ステータスたる俺の力をもってしても、4人がかりでは勝てなかったよ。いや、4人が固定で精一杯だから粘り勝ち出来るか!?捕まれた手足からちょっとずつドレインすれば!勝てる。勝てるぞ!
「《分身の術》」
ぎゃあ!癖歪み褌が増えた!?お前、いつの間にそんなスキルを。
「狗尾草王の禅譲前には既に。ふふふ、貴殿が陰陽を和合してくれたお陰でゴザル。様々な力に開眼しました」
くそぅ。癖だけ開眼してれば善いものを!予想外だったよお前の存在は!賑やかしのつもりでパーティー入れたのに、まさかここまで成長するとはな!
「母乳が無尽蔵に出るんだ、こっちも無尽蔵にだせるでゴザロ?」
あああああ!た、助けてぇ!
「みんな死なない、ハッピーエンドですね。私、生きてて善かった」
俺の尊厳は死ぬ寸前なんだけども!
「おめでとう!君たちは見事、狂王の魔の手から街を救った!短くも厳しい旅を終えて、大きな栄光とささやかな安寧を得た。今は一先ずの休息を楽しみなさい。だが、忘れてはいけない。冒険はまだ始まったばかりなのだから!」
おい、おい!おねーさん!その締めくくりのナレーションみたいなセリフは何だ!やめろ。ゲームクリアーじゃねぇんだよ。過去1の、過去生ひっくるめて1番の難所きてんだよ今!
「どちらかと言えばゲームオーバーじゃないかしらね」
最悪のタイミングで来たよ、宿屋のおねーさん。
またしても持ってた藁しべでこちらの鼻をくすぐられ、力が抜けて変質者どもの餌食になった。文字通り。
「ありがとう。義兄教父様」
空気読まないエリーゼが本当に幸せそうにそうのたまうので、まあ、善しとするか。どういたしまして。




