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Elise-conversation-かんばれ-最後に愛は勝つんだぜ!

エリーゼ曰く、誤解です!私そんなこといってません!

 体を縛られ、運ばれてる時にズタ袋がくるりとずれて覗き穴が後頭部に回り、目隠しの役割を果たした。そのまま何も見えないまま尋問が続く。

 中立属性の私は、誰とでもパーティーを組めたのだが、職業があまりにも不遜に過ぎて、1人で旅をすることに決めた。人に知られたくなかったから。

 だから、あのカッコいい狗女さんに、こうやって簡単に捕まってしまったのだけど。


 ̄ ̄まだよまだ。あなたはまだ死ぬ運命じゃないわ ̄ ̄


 心に残った母が囁く。永遠の命を求めて私の体を奪おうとして、そして逆に記憶も魂も奪われてしまった母が。私は、別に母に体をあげても良いと思っていたのだけど、現実は、運命はそうならなかった。


 ̄ ̄感情の起伏が薄い子だと思ってたのだけど、ただ器がデカかっただけなのよね ̄ ̄だからお母さん負けちゃった ̄ ̄凄いわウチの子 ̄と思ったものよ ̄ ̄


 憎くはなかったのだろうか。私のような、いわば素材ごときに邪魔をされて。飼い犬に手を噛まれたら、私ならばお鍋の具だ。


 ̄ ̄憎らしくも愛しい ̄私のエリーゼ ̄ ̄何を犠牲にしてでも不死になりたかったのは本当だし ̄この身を擲っても惜しくないほど愛していたのも本当よ ̄ ̄


 それが人間なのだろうか。その相反する強い感情が。きっと半分が不変(リッチ)である私にはわからないのだろう。永遠に。


 ̄ ̄ほらエリーゼ ̄もうすぐあなたの運命がくるわ ̄ ̄


 後ろ向きになったズタ袋が剥ぎ取られ、纏めていた髪が広がる。彼も鍔の長い帽子を外し、お団子にしていた髪をほどいた。蛍光緑の私、蛍光ピンクの悪魔さん。お友達。心臓を鷲掴みにされた。


 ̄ ̄いえエリーゼ ̄おっぱいよ ̄ ̄あなたおっぱいを鷲掴みにされてるわ ̄ ̄


 物理的に掴まれてた。ひゃわー。


 それが教父様。ステキなお兄ちゃんとの出会いだった。たまにお姉ちゃんと呼びそうになるが、どっちも似たようなものだ。可愛いし。


 ̄ ̄うふふ ̄あなたが大器すぎてお母さんついてけないわ ̄ ̄


 やはり、人間とはわかりあえないのだろうか。


 這鼠刺(ラットマン)の言葉だってわかるのに。心だけは。



 狗尾草の国でのお祭り騒ぎから帰ってすぐの頃だった。


 私はいつものように墓地の毒草畑のお世話をしてその帰り。


 いつか白亜の街でのように、私は、今度は私が怪物のように追いたてられ、袋小路に誘い込まれた。周りの建物は無人で助けは呼べそうにない。私の実力では逃げきることすら叶わない。それでも、出来ることはある。

 かつては、遥か昔は溢れるように若者が街にいたのだろうが、既に初心者の街1区しかまともに機能せず、他の建物は真新しい姿のまま死んだように並ぶばかりだ。死者の葬列。運ばれて来たのは4人。……少ない。1パーティーも用意出来なかった?本当に?


 ̄ ̄きっと指導者とその護衛 ̄何処か安全な所へ逃げているのね ̄ ̄どうするの?何としてでもここを抜けて ̄その事を伝えるべきじゃないかしら ̄ ̄


 いいえ、お母さん。きっとビューティーさんならすぐ気付くわ。頭が良いもの。私と彼らの死体を見ることで。


 ̄ ̄残念だわ ̄ ̄出来ることなら代わってあげたいけど ̄私には魂すらないから ̄ ̄うふふ ̄流石私の娘 ̄ ̄





 じわじわと切り刻まれ、お返しに切り刻み、繰り返し繰り返し、体がふらついてくる。そろそろ限界だ。4対1で戦いが拮抗した、そのタネが割れる。私は虚脱し、膝をつく。大鎌も、もう持っていられない。


「我が王のためだ。すまないレディ」


「やっと効いてきたか。おとろしいやつだ。そうだ。このナマクラどもには《魂喰》のスキルが付与されている」


「畏れ多いことだ。こんなにも神聖の強い人を…しかし私は」


「仕方ないわ。それでも私たちは」


 あの白亜の街の、不死身の怪物同士の殺しあいを思い出す。死んでも甦るこの初心者の街で、殺人を行う為の数少ない手段。そのまま、魂を削りきるために、私の四肢に刃が突き刺さる。血を流し過ぎて死なないように。確実に魂を殺すために。

 肩を突き刺す戦士職らしき少年の手に爪をたてた。割れた骨の様に鋭く尖る爪を。血が滲み、そして、少年が膝をつく。


「レディ。あなたは」


 私の魂を彼らが削っていたように、私もバレない限界まで、彼ら4人の魂を削り、啜っていたのだ。擂り潰して、グチャグチャにしていたのだ。かつての母の魂のように。


「私の職業は《死神》。畏れ多くも神と名の付くこの職業は、あらゆる行動に《魂喰》の効果が付与される。そして、まるで、お伽噺のように、死が、運命が見えるのです。あなたたちも私も、今日ここで死にますよ」


 咄嗟に袋小路(デッドエンド)から来た道を戻ろうとする神職の少年。しかし、逃げることは出来ない。

 《死神》のスキル《旅の始まり(デッドエンド)》は、死の運命がそこにあるかぎり、誰もその場から逃がさない。必ず、死出の山へと誘うのだ。逃げることすら叶わないなら、全員道連れにしてやる。


「さあ、人間。ここからどう挽回しますか?死に戻りも出来ずに。私は《魂喰》の度に少しずつ回復しますがあなたがたは4人。良い塩梅の戦いになりそうですね?頑張れ。がぁんばれ。がんばれば、もしかしたら、まんにひとつ、いきのこっておうちにかえれるかもしれないぞ、いっぴきくらいは」


「…………最早決定的になった。それでも恩義がある。忠義がある。最後まで戦い殉じるよ。それが逃れ得ぬ運命でもね。レディ」


「最早決定的になった。しかし楽しいな。楽しいね。もちろん戦うぜバケモノめ。何だよ、こいつが一番与しやすいんじゃなかったのか?おとろしいやつらだな。ここで終わりたくはないが、運命なら仕方ない」


「最早決定的になった。だからもう私は神様に楯突いたりしたくない。ここで終わらせてくれ魂ごと」


「最早決定的になった。愛してる(Baby,)私の王様(I want you)


「興醒めだなぁどいつもこいつも。諦め顔で。もっとちゃんと抗ってくださいよニンゲン。運命に!あらがえ!わたしはB-Tさんからそうまなんだぞ!」


 運命が見える。冷たく朝露塗れ血塗れの、私たち5人のズタ袋のような死体が。

 お兄ちゃんに、お母さんの名前を伝えておけば良かった。私たちの、いまだ名も無き宗派は、魂が無いものすら帰依できるのだから。













「そんな大層なこと教えちゃいないね俺は」


 《旅の始まり(デッドエンド)》が終わる。運命が、変わった。

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