Melissa-condenser-dispenser-yessir!2
深夜から早朝にかけて、気分によってば眠ることもあるが大体吸精の効果で三大欲求全部満たせてしまうので今回もリボルバーこと歯車生肉のラボでお手伝いしている。
巨大なガラス瓶の中に新たな蜜蜂薄荷の子らが並んでいる姿は壮観だ。ふむ、最初の俺の子たち、ということになるな。感慨深いぜ。
「うん?いや、君の子はたしか、」
と、同伴していた図書室のおねーさんが何かの書類をパラパラめくる。……え?なに?どっかに既にいるの?いやだって街は宿屋おねが怖い…………あっ、やべぇ心当たりがある。
故郷のあれとかあれとか狗尾草のあれとか這鼠刺のそれとか、……まさか無食子のあいつか?
いや、多分俺は植物とも子をなせる。癖歪み忍者との夜のおさんぽの時とかにうっかり野バラに、という線も。
「どんだけ心当たりがあるのさ……そして正解だよ。領主家の夫人と長女と次女がそれぞれ」
「え、夫人と長女は心当たりありまくりだけど次女はまだ、え、まじで、あれで出来たの?奇跡じゃん」
というか可哀想に領主。長男は骨抜きだし家族は全員俺の子産むしで実質御家乗っ取りじゃん。……使えるな。いざというときは隠れ家にするか。
「いや、生まれついた性質に文句は言いたくないけど、あそこの長男もそろそろお年頃だから、刺される準備くらいしときなよ」
ハハハ、なーにイッてんですかおねーさん。あいつはいつもさされる側だったよ。後ろからさされたり首絞められたりが大好きなんだから。……マジで上流階級は癖の歪んだやつしかいないのかもしれんな。
「は、初めて認知されたのは僕の子らです。だから主の最初の子は僕たちです」
何か対抗意識燃やしてる。可愛い。
と言ってもまだこの初心者の街1に来て2ヶ月経つかどうかってくらいだ。まだ生まれてくるかもわからない……俺の子か。
4分の3がサキュバスの俺の子なんだよな。安産どころかもう産まれてるかもしらん。そんな恐ろしさを感じるぜ。
「ほら、先に生まれるからやっぱり僕たちが最初の子です!」
うむうむ善し善し。兄弟姉妹仲良くしたまえよ。全員俺の子だからな。
昨日の訓練所の陰陽まじぇまじぇが尾を引いているので全員今日は1日休みにしている。せっかくだしまたパーティーメンバーの1日を追おうと思う。
ズタ袋少女とスーちゃんの女子コンビの気配がしたので武器屋に向かう。
そういえば街に呼ばれた歯車生肉には初期装備支給されたけど、スーちゃんはモンスター扱いだからか貰ってないな。一応、コボルトじゃなくて人類のハズなんだが。
いや、俺たちや狗尾草の定義なんて神様には知ったこっちゃないだろうし、やはり狗尾草なんだろか。
おねーさんズか邪聖少年に相談するか。単に年齢制限とかに引っかかったのかもしれんし。
武器屋に着くとスーちゃんが曲刀を複数眺めてうんうん唸っていた。防具に改善の余地がないので武器に投資するつもりなのだろう。
スーちゃんは子供の体型に変わったことと元々自前の毛皮があることから急所を塞ぐ革製のヘッドギアに腹巻きとパンツのみというグラディエーターなスタイルで戦っている。
あとは要所要所にバンデージ巻いてるくらいか。スピード重視御用達だな。素材を強化したらバカ売れするんじゃなかろうか。無食子にでも依頼してみるか。
「どうした?金が足りないのか」
「おお、御前か。いや、この街の値段などたかが知れてる。リーチや重さがな」
しっくりくるものが無いってことか。そういやどんどん装備更新してる癖歪み忍者以外はウチのメンバー初期装備ばかりだな。
防具は初期装備連中はメンテナンスフリーなのも含めて現状維持でもまあ善いが、武器はな。
これも無食子か、もしくは歯車生肉に相談だな。銃の類いの生産はルール違反でも、合金の塊くらいは提供できるだろう。それを無食子か武器屋おねに渡して加工すりゃよいのだ。
スーちゃんと同伴しているエリーゼは、ぽへーっと店内を見回し、少年少女たちが修作した装飾品など眺めている。
装備はローブのみ、あとはズタ袋を被るかどうかくらいなのでこいつこそ防具が必要なのであるが頑なに嫌がるのだ。
せめて気に入ったアクセサリーでもあれば着けてくれるのかね?
「そうですねぇ。バンデージくらいならまあ。あとは粟の民の首飾りとか」
それミイラみたいに包帯ぐるぐる巻きにするためだろうし、狗尾草の首飾りは人間の歯や顎で出来てるので女子のおしゃれ感じゃねぇ。相手に恐怖を与えることしか考えてないのか。
「それが習性ですからねぇ」
そうか、習性ならしゃあないですねぇ。
「武器はリボルバーに相談だな。今回ワバンデージだけにしよう。エリーゼが全身に巻くならワタシの分も含めてありったけ買ワないと」
武器防具にして医療用品なので常に需要があるバンデージ。安価だが儲かっているんだろうなぁ。やはり強化バンデージは開発しなきゃな。これはウチの宗派の資金源になるかもしれん。
「お昼ご飯屋台で買いますが恐怖さまも来ますか」
せっかくだしご一緒させて貰おうかね。……今教父のニュアンス違うくなかったか?
「げぇ!こないだのマッドアルケミストグルメ!」
「おお!また来てくれたんですねっ。やっぱり美味しいには勝てませんでしたか」
二人の行きつけの店は、芋を無毒化した加工品を出してた錬金術士のとこだった。たしかにココ食感は善かったけどよ。
「この新商品はなんだ?食感は寒天みたいだが」
「ああ、果汁に定着させた菌の生成物です」
「なんてもの食わせてんだてめぇ!」
「なんでそんなに出自を気にするんですか!?生まれてきたこの子たちに罪はありませんよ!」
そうだな。罪があるのは生んだお前だ。
「人類の食文化ワ変ワってるな」
「毒とか腐敗とかに耐性があるのでどんと来いです」
「腐敗じゃなくて発酵ですぅ!美食万歳!」
ダメだ。価値観が違いすぎてここには賛同者がいねぇ。




