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lady-skeleton-key2

 やっと冒険の時間だぜ。


 あれからおねーさん方に無心してみたが、個別に交渉してたのが不味かったらしく、おねーさんズで井戸端会議ならぬ井戸端裁判が始まった。

 集まったのは9人。協力3、中立3、条件付き3で人数がキレイに割れた。いや、反対派がいないなら何で裁判受けてんだ俺。

 侃々諤々、やれ甘やかしてはいかん、この甘酢漬けおいしい、やれ可愛そうだ、デコルテのラインが可愛いそうだ、等々、話がまとまらない中、宿屋のおねーさんが、「あげたい子は個別であげて」と鶴の一声を発し無事、放免された。流石俺。幸運の女神がついてるんじゃないかな。

 ちなみに宿屋のおねーさんは馬小屋の藁を一本持ってきて、「これをお屋敷に替えてもらいなさい」と言ってきた。実質何もくれないのと同じなので彼女は中立筆頭である。


 一番厄介だったのは受付のおねーさん。協力する条件は一晩泊まっていくこと。望むところなんだが、しかしこの方、性的な快楽を抱かず母性的な法悦をかましてくるので、サキュバスハーフ的には天敵である。終いにはシャンプーや背中流しで成仏させられるんじゃないかな。と気が気じゃなかった。


 貰い物たちは追々、紹介していこうと思う。


 それではダンジョンに入る。



【初心者の洞窟】



 薄暗い道が続くが、附子(デーモンハーフ)たる俺は夜目がやたら利くのでずんずん進む。相手より先に見つけ、時に隠れてやり過ごし、数が少ないとみるや仕掛ける。狡賢く慎重でタフな悪漢らしい戦い方だ。


 今も至近に3匹の狗尾草(コボルト)がいるが、こちらに気付かず素通りである。いくら鼻が利くといってもここにいるのは低レベルのモンスター。盗賊系職業ならだいたい持ってる《ハイディング》系統のスキルでやり過ごせてしまうのだ。ちなみに悪漢におけるスキル名は《雌伏》である。何でもかんでも逆境を感じさせるワードが入ってくるのが悪漢クオリティ。実にピカレスクロマンな職業である。


 3匹なら奇襲からのごり押しでも勝てるが、バレてないので隠れたまま投石紐(スリング)で、こちらに背を向ける最後尾の狗尾草(コボルト)をぶちのめす。石は無尽蔵に拾えるのでとても便利だ。たまにクリティカルも出るし。あ、言ってたら2匹目の頭が石榴のように!先頭の1匹に肉片が降り注ぎ、パニックになっている。近付かずにこのまま倒せそうだな。ついてるんじゃないかな。


 おっと、…鳴き声と足音が近付いてくる。


 他の敵グループに気付かれたようだ。なるほど、考えたら当然だ。俺はスキルで気配が消えてるが、向こうで挽き肉まみれキャインキャイン言ってる狗尾草(コボルト)がいるんだからそりゃ近くにいたら集まってくる。やっぱりついてないんじゃないかな。


 おかわりの2匹を再びやり過ごす。仲間の恐慌を宥め、事情を聞こうとしているベテランっぽい狗尾草(コボルト)を狙ってまた投石。後頭部に当たり崩れ落ちた。

 立て続け周囲を警戒していた若そうな方に棍棒をぶん投げる。狩猟用の投げ棍棒で、これは牧場のおねーさんからの貰い物だ。熊みたいな犬を引き連れ、家畜を素手で絞める女傑で、しかし顔立ちは甘く柔らかく中々の好みである。寝付けぬ夜に一緒に羊でも数えたい。

 投げ棍棒の、くの字に曲がった先端が若い狗尾草(コボルト)の左眼窩にめり込みそのままこっちも崩れ落ちる。

 更にパニックになった恐慌狗尾草(コボルト)に近付き、《雌伏》状態で発動できる奇襲スキル、《アンブッシュ》を発動する。対になるスキル名が《雄飛》で無いことに突っ込んでは行けない。きっと、輝かしい未来が待ってそうなワードが悪漢的に無し、だったんだろう。大したピカレスクロマンである。大声は出せんのでひゅうっと息を吐き出し全力で頭をかち割る。

 手に持つのはおねーさん方の貰い物その二、鎚矛(メイス)である。金箔が貼られているのかやたら派手な色で、戦闘用でなく儀礼用なのでこれもクリティカルがでる。クッソ重いのでもしかしたら純金製かもしれん。そんなものポンとくれるなよ。重いわ色々。

 まあ、良い。貰ったからにはせいぜい使い潰すさ。先立っては投擲で倒した奴らの頭を潰してまわろう。悪漢的残心の仕草である。


…明日はもうちょい使いやすい道具にかえようかな。

【初心者の洞窟】


 初心者の街の存在理由はこの国の王と神の富国強兵の契約であるのだが、国民からすれば知ったこっちゃなく、だいたいどこの村も大人になるための通過儀礼という認識である。そのためか、どうにもサービス精神旺盛なこの神様、最初期の頃とは大分ダンジョンの形を変えてしまったらしい。


 サナギからチョウになるように、オタマからカエルになるように、大人になるイコールもう一度生まれ直すことであるという思想が一時期から流行したとかで、このダンジョンも産道を模して洞窟型になったのだ。とかなんとか。これは知識、という形で図書室のおねーさんがくれた貰い物である。


 俺も過去生でなるべく本は集めたが、こういう当時の習俗を知る者ならではの知識は非常に得難い。心のノートに記録しておこう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 心のノートが具体的にどんな存在で主人公はどういう認識をしているのか導入で少し触れてもらえると分かりやすかったかも知れません。 [一言] わらしべ長者w 導入からとても面白く今後の展開が…
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