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教会で酔っ払った翌朝、錬金術士のちびっこに見送られながらダンジョン、初心者の産道へと入る。
無食子さん家にカチコミに行って、クチコミで信徒を増やすとか何とか。道中、護謨玉埃黴とそれに跨がった這鼠刺が合わせ技で戦闘の隙を突いて殉死しに来て、何組かはそのまま成功させやがった。最悪だぜ。むかつくが、もうこの初心者の産道では殺し合いOKにしたので仕方ない。生まれた素材は大事に使わせてもらおう。
「救世主さまごきげんよう。そして死ねぇぇぇ」
「死ぬなぁマーティン!てめぇだけは意地でも殺さねぇぇぇ!」
何でこいついつもいつも自身に対して死ねと叫ぶのか。すごく怖い。まだ栄光あれー!とかだったら許せるのだが。
そのまま、バライロ氏の形見を身につけた《伊達鼠のミッキーマーティン》を連れて無食子の多く出没する層まで向かう。ほっといたら視界の端で綺麗な姿で死にかねないので、邪聖少年に抱えてもらって道中を進んだ。戦力減るが、まあ楽勝朝飯前だ。遠距離攻撃でチン、と手早く料理。そのままモンスターたちは昼食のグリルとして平らげた。
「ピギィ。またお会いしましたね」
なんか馴れ馴れしいやつがいた。顔の見分けはつかないが、たぶん俺に服くれた無食子だろう。コートの下に着るものが出来てありかだいかぎりだぜ。新作ねーの?
「ピギィ。もちろんございます。お家からとってきましょうか。すぐそこなので」
マーティンの身に着けた羽帽子や外套の裁縫を確めやさしく撫でるオーク。ああ。お前か。癖歪みピチピチくノ一モドキにバライロの刺突剣を持ってこさせる。
「これもお前が拵えたのか?すっかり暗器の1つとして使わせてもらってるぜ」
「ピギィ。ばれてしまいましたか。はい。元々は奥方の形見だったものを磨り上げさせていただきました……ピギィ!?」
「ひゃわ!急な益荒男。犯されるでゴザル!?」
無食子が急に加速して癖歪みを掴んだ。振る舞いから紳士だとおもっていたが、あるいは紳士だからこそなのか癖歪みに辛抱堪らず抱きついたと言うことか。その尻は俺のだぞ!さわるんじゃない!
「ピギィその、このファスナーはどこで?」
「へあ?えっと、武器の女神官様が。つい最近手に入った最新技術だって言ってたでゴザル」
「おお、神はやはり」
尻の、良く見たら背中のファスナーを撫でながらこちらをその円らな瞳で見つめる無食子。スライド式ファスナーの噛み合わせの部分を撫で撫でしながら。とんでもないド変態じゃねぇか。今度俺もそれやろ!
「あなたこそが。ピギィ。ぜひとも我が家へお越しください。仲間たちにも会わせたい」
複数人でだと!かわるがわる癖歪みを!見たい。いやしかし。
「このファスナーは、決して最新技術ではありません。もう30年以上前に私が発明し、その画期的な仕組みから思わず、居もしない、遥か昔に忘れ去られた祭壇へと奉納しました」
肩に癖歪みを担ぎ、その体の隅々を、正確にはファスナーを撫で撫でしながら道を進む紳士無食子。普段から服飾に関わる仕事をしているためか、非常に紳士的な手つきであり、とても趣深い。
「ピギィ。それが今になって人類圏に伝わったということは」
「神との契約が更新された」
邪聖少年が服飾紳士の言葉を継いだ。
「あなたがB兄ちゃんに服を渡したことがきっかけでしょうね。おそらく、まだあなただけが再び繋がった状態です。僕たちは、あなたたちを宗派に取り込みに来ました」
「なんと。こんな日が来るとは。ピギィ。ピギィ」
「はひぃ。はひぃ。ちょっと触りかた上手すぎでゴザル。加減して」
「ピギィ?」
服飾紳士の言う我が家とやらは、地下深くに広がる一大帝国で、何かすごい文化文明が発達していたので思う存分楽しんだのであるが、行く先々で新たな神との契約の証明である癖歪みのくノ一スーツに老若男女みんなが群がり、ファスナーを有り難がって撫でるので癖歪みが新たな癖に開眼してしまうのだが、それはまた、別のお話。初期装備とちがって《必要最低限の性能を維持》のスキルを持たないので、洗うのが大変だったぜ。
「はうぅー。すごぃぃ」




