okie-dokie-valkyrie-dress5
「何か、強くなってるでゴザル」
「毎日陰陽を合一してるからー、丹田が練られたんだろーねー。忍者は仙術とも親和性高いしー、ちょっとまなんでみるー?」
「貴殿!この事を知っていて毎晩毎晩朝昼晩と?陰で無駄射ちモンスターとバカにしてすまんでゴザル!」
くノ一スーツの試運転に訓練所おねーさんとバトってたら感動された後罵倒された。とりあえず護謨の余りで造ってもらった鞭でしばく。
「いたぁい!ちょっと、クリティカルでたらどーすんでゴザル!」
ふむ。やはり、殺傷力があるかどうかが重要らしい。飽き性なのを踏ん張って、種類別に一万回ずつ素振りしたが、今、癖歪み忍者のつやつやもちもちにぶちまけた、殆どロープと変わらない鞭では1度もクリティカルが入らなかった。一撃で殺し得る可能性がない限りは、悪漢のスキル《ノーバディ》は発動しないらしい。もしかしたらゼロじゃないのかもしれないが、その時は運がなかったと諦めよう。とにかく、何がどこまでクリティカルの範疇なのか知らないと、おちおち日常生活も送れないのだ。
左右の手で別々に次々と鞭をぶつけて実験していく。もちろん癖歪みの尻ペタが弾けたら困るので、藁束と竹で組まれた的にぺちぺち当てていく。先端に錘が付いていたり、束ねて剛性が増している鞭などは《ノーバディ》の対象になってクリティカルが発動するみたいだ。
そして拷問目的のバラ鞭や肉刑に使うような硬鞭等、使う対象が人で、大いに殺す可能性のあるものなどはクリティカルが発動しない。とんでもなく面倒である。
もしかして手術道具なんかも発動しないのかもしれないが、もし外科手術なんかしなきゃいけない状態で発動でもされたらたまったもんじゃないので却って良いのかもしれないな。
使いやすさやらヤり安さやらを鑑みて、牧畜で使うような一本鞭を採用した。普通に使っても巻き藁をへし折るくらいは出来るのだが、クリティカル発動すると首部分がポンポン飛んでくので冷や汗もんだぜ。他の鞭は趣味で使うとしよう。良い汗かけそうだ。
「地母教父様、この靴、というもの、足が蒸れてイヤです」
余った素材で靴を用意してみたのだが。というか、今まで勧めても断ってきたので、今回新素材使ったプレゼントとしてかわいいデザインのものを押し付けたのだが、どうもお気に召さなかったらしい。花を愛でたり仔牛を撫でたりするような情緒はあるのだが、自分を着飾ることには無頓着なようだ。
足の防御自体は本人が語るように不死者とのハーフなので問題なく擦り傷1つつかないのだが、女子供が裸足で街中を生活するというのも、境遇や種族等は置いといて気の毒に感じたのだけど、うまく行かないもんだぜ。
「それは狗尾草文化差別だな。ワレワレは裸足こそ誇りだぞ」
「スーちゃんどの。自分で蔑称するの良くないでゴザル。粟の民って呼ばないと」
「そうか?狗尾草って、かワいいと思うんだガウ。狗尾草は粟のご先祖様と言ワれてるしな。人類もなかなかセンスがある。…ワタシ、厳密には人類側だった…孤独」
「急に落ち込まないででゴザル!?」
「ほらスーちゃんさん!私も裸足。裸足同士。仲間ですよー」
「ふむ。文化や個人の違いは尊重していくべきか。向こうが附子排除に動いているならこちらは弱者救済、マイノリティの尊重で。何だかんだ豊かな国だし、こっちに転ぶお人好しは権力者にも多いだろうな。B兄ちゃんがいれば幾らでもパトロン増やせるだろうし…」
邪聖少年が完全に邪悪モード入ってブツブツ言ってる状態が久しぶりなので非常に眼福なのだが、そうか、スーちゃんも履き物ないな。
「ふむ、飾り紐みたいなやつだけでも結べばオシャレかね?女神官サマよ」
「私に言われもー。力帯くらいしかもってないしなー」
訓練所のおねーさん。ぽややんとしているがムキムキゴリゴリの武闘派だからな。硬質な髪をざんばらに、褌とバンデージ位しか巻いてなくて野蛮そのものなんだが、顔だけは、眼差しだけは貴婦人なおねーさんで、そのギャップがたまらんのだが。是非とも稽古付けてもらいたいぜ。
「いいよー。陰陽を合一しようかー」
「マジかよやったぜ!今晩な!明日1日休みだぞお前ら!そこの名も無き少年少女どもも全員明日は来ても無駄だからな!ひゃひゃひゃ」
…普通に仙術の修行だった。生きながら死ぬ。イき死ぬかと思った。
腹いせに癖歪みの修行に反映してやった。めでたしめでたしだぜ。




