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Last-Different-Night

お休み変わり果てた愚者

 剣と知恵を持ったネコと、何も持たない人類とでどちらが強いんだろうな。


 剣と魔法と回復を繰り返し、堅実に削っていく戦い方は《赤の賢者》の基本型に則ったスタイルだ。魔法も物理も強い《賢者》系でも特に単独戦闘に特化した《赤の賢者》を職業に持つから、彼は1人でもその教団とやらと戦えたのだろう。夜は勿論、怪物として暴れまわるだけでよいし。


 もう1人の彼は、変わり果てたそれは愚者とでも呼ぶべき存在だった。最初に逃げ道を探り、そこから後は与し易いと考えたのか小柄なネコを相手にひたすら突撃しては避けられ小さな傷をつけられていく。いたぶるような笑みを浮かべているが、自分がいたぶられていることに気付いていないらしい。


「ふむ。愚かな自分にゃど見るに耐えにゃいにゃ。ふふ、わたしも十分に愚か者だったがね。ふふ、愚かさは五分と五分でわけたのかもしれにゃい」


 傷をつけられてもすぐに回復していくタフなディファレント=ナイトだが、動きはぎこちない。やっと異変に気づいたようだ。


変わり果てた(ディファレント)愚か者(ナイト)よ。やっと気づいたか。この剣は僅かだが《魂喰》の特性が付与されている。本来にゃらば、肉体における《延焼》や《吸血》のように、精神において微弱にゃダメージを追加する補助的にゃ効果しかもたらさにゃいが」


 動きの鈍ったところで膝を剣で突く。痛みよりも大きな違和感によって、ディファレント=ナイトは叫んでいるようであった。


「このように、殺さにゃい程度に削っていけば、魂が先に擦りきれる。死にゃにゃいお前を確実に殺すための、わたしのとっておきだ」


 相手が動けなくなってからは一方的だった。肉体が死にそうな時は回復魔法をわざわざかけ、何度も突き刺して、終いに完全に怪物を亡き者にした。もう生き返らないように。


「わたしには地獄すら生ぬるい。魂すら失って、神の下へも逝けず完全な無になるのがお似合いさ」


 元々真っ黒だった黒猫だが、今では炭の固まりのようになっている。朝日に照らされても、その姿がまともに映ることはもうなかった。


「わたしはね、元々誇り高き中立属性だったんだよ。それが心身を引き裂かれて善と悪にわかれてしまった。魂の在処は悪寄りだったみたいだがね。延々と似合わないことをしてきた気分だ。それもやっと終わる」


「なんだよ?俺たちは盛大な自殺に付き合わされていたのか?最悪なんだけど」


 一件落着したら仲間に誘うつもりだったのによ。


「ふふふ、看取りがいてくれて良かった。どうか、神様にお伝え願えないだろうか。あなたの敬虔な信徒はテメェのケツをテメェで拭いてからおっ死にました、と」


 自分で言ってこいよと返そうと思ったが、死ぬどころか無に返るんだったな。徐々に崩れていく旧黒猫、現ボタ山。


「ああ、ビアンカ…」


 最後に誰か、多分奥さんとでも見間違えてから崩れ灰になりやがった。とりあえず、全身真っ白に姿を変えてやり、オマケでむちむちな体型にしてから弔ってやった。多分こんな感じだろうビアンカさん。


「みたか皆。中立属性って厄介だろ?分裂するんだってよ?善属性も厄介だ。こうやって自分だけで解決して終わる。やっぱり悪が1番だな」


 形見になっちまった装備はどうするかね。大分立派な装備だが、サイズが特注すぎるな。なんだ、こんなの拵えてくれるような仲間がいたんじゃねぇかあいつ。マーティンにでもあげようかね。


「いえ、救世主さま。帽子やマントは喜んで家宝にいたしますが、剣は受け取れません。過分な力を持っていたら、余計な殺生をしちまいそうだ。おれは」


 これだから善属性は。悪が1番だな。この無辜の民の代わりに、いっぱい悪者をころし、懲らしめてやれるからにゃ。

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