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Cat-Sit Rat-Fat Bat-shiT3

 人生は唐突に選択を迫られることが多い。


「うう。恥ずかしい。最近、スイッチ入っちゃう時が多々あるでゴザル。貴殿(との)、新しい魅了(チャーミング)に目覚めてなーい?」


 どちらかといえば、癖歪み忍者の誘いに魅了され興が乗り、情動が惹起され、ジャッキアップ!ジャッキアップ!状態になるのだが、此れはどう回答するのが正解だろうか。つまり、

 目覚めてないよ、お前が単にいやらしい子なんだよ。と自覚を促すのと、

 そうだよ目覚めたよ、と嘘をついて魔法のせいで仕方なく乱れているだけだと思い込ませてより大胆不敵にさせるのと、

 どちらがより癖歪みの癖歪みをビルドアップできるかという話しなのだが、非常に悩ましい。高ステータスな今生の俺でも、流石に長考に入らざるを得ない。


「え、ねぇ、どっちなんでゴザル?なんか、せめてなんか言って?」


 む、答えないという答えで想像を膨らまさせ、より悶々とさせる。これが答えか!何でも安直に決断してはいけないということか。今後の教訓になるな!




 ネズミー浄土は白亜の街だった。土壁を防水防火を兼ねて石灰で塗り固めており、陽光を照り返し街全体がギラついていた。ふむ。俺に似合う風景じゃね?太陽に殺されそうだ。


 黒ずくめ、血塗れバンデージ、ずだ袋に半人半犬のモンスターと頼もしい仲間と練り歩いていてさながら仮装パレードだな。皆が皆、固唾を呑み此方の様子を窺っている。手を振り替えしてくれても良いんだぜ?けけけ。


「怪物は夜に現れます。だから最近は夕方には誰も外を出ないんですが、運悪くダンジョンから死に戻ってきた奴が犠牲に」


 どうれいっちょ経験値にしてやろうか。おかげで鼠肉がもう食えなくなっちまったんだ。腹いせにな。


 真夜中をこのイカした仮装チームで練り歩き、まあ、夢魔と骸骨と人狼もどきがいるので仮装というか正装なんだが、怪物いねーがーと嗅ぎ回り這い回り、夜明け前についに見つけた。

 旨そ、若そうな這鼠刺(ラットマン)が襲われる刹那、街中に飾られてたカボチャをくり貫いて作られたランタンを掴み投げつける。ボゴン、と怪物の腕を吹き飛ばした。いや、これもクリティカル入るんかい!確かに人を殺せそうな重さだけども!

 とにかく、間一髪、新たな犠牲者を出さずに済んだ。手負いのモンスターなんて何度追い詰めたと思っているのか。遮二無二逃げる怪物を余裕綽々で徐々に囲んでいく。街の地図は全員頭にいれてある。袋小路に追い詰めて、そのまま袋のネズミだ。洒落てるぜ。


 黒い影が、追い詰める予定の袋小路から延びている。勢子役を買って出た這鼠刺(ラットマン)有志が各所に設置したカボチャのランタンの光だろう。流石は齧歯類。あんな固い野菜でよくも見事に加工するな。彼らには怪物に食われないよう、怪物の通れない狭い道や、地下の水道等を使って決して無理をしないように言ってある。あと、仲間のために積極的に自殺を図らないよう厳命した。


 全身剃ってから鍋みたいな容器に入った奴がいて、這鼠刺(ラットマン)独特のお風呂なのかなと思っていたら、温度が上がってもそのまま壮絶な顔で浸かり続けていたので慌てて介抱した事件もあった。俺に食われようとしたらしい。

 仲間を助けるために覚悟を示すことが美徳らしく、確かに人類でも美徳の部類だが、小さい生き物が殉死するとか気の毒で仕方ないから勘弁してほしい。


「ふふふ。気の毒とは。B兄ちゃんもこの子たちの可愛さがわかってきたようだね」


 見れば皆が皆、ちび這鼠刺(ラットマン)をかいぐりかいぐりしていた。いやいや、全身脱毛五右衛門は別として、流石に悪漢にして冷血漢でもある俺ですら、動物の子供が可愛いという感性くらいあるさ。1匹受け取りだっこさせてもらう。


「どうじょ。おめちあがりくだちゃい」


 功徳の高い子だったらしいな!やめろ!殉教するにはまだ早い早すぎる我が子よ!!



 おっと、今日のお昼に生まれた新たなトラウマが早速フラッシュバックした。いかんいかん、この心のノートは封印だな。



 袋小路の影が…徐々に影が、縮んでいく?どこかに逃げ道があったか?面倒だな。ここで仕留めたい。全員で先を急いだ。


「む、人類圏の子ら。珍しいにゃ」


 袋小路の端にて、下水道の蓋が空いており、その手前に、なんか、ちっちゃい二足歩行のネコがいた。


「もしかして、あの怪物を追っていたのかにゃ?残念にゃがら逃げられてしまった。わたしには土地勘がにゃいので深追いは出来なくてね。みすみす見逃してすまにゃい」


「誰だお前露骨に怪しいぞ」


「わたしかい?わたしは古き夏梅(ケットシー)族の末裔、中でも誇り高き長靴をはいたネコ(ロングブーツ・ケット)の流れを汲む、うむ、そう、バライロ=デイズと言う」


 ズビシーンと決めポーズをとる黒猫。ちょうど朝日が地平線から覗き始め、白亜の街を美しく染めていく。


「この赤い靴に誓って決して怪しい物ではにゃい。ふふ、この靴、にゃぜこんなに真っ赤だとおもう?」


 真っ赤な夕日を踏みにじり夜を称える様を体現しているからだ、とかか?


「おお!にゃぜわかったのだ」


「正解なのかよ!ますます怪しいじゃにゃいかてめぇ!」


「すぐに他人の口癖がうつる教母教父さま素敵です」


 ありがとうよズタ袋少女。ついでに毎回悪びれもせずお母さんと呼び間違えるのそろそろ直してくれよこっちが恥ずかしいんだよ。


「安心したまえ。わたしも追ってきたのだ。奴をこの手で始末するために。…あの怪物、ディファレント=にゃイトを」


「…」


「…」


「ディファレント=にゃイト」


「…」


「ディファレント=にゃ」


「…」


「ディファレント=…ヌァイトを」


「どんだけ噛むんだよ!」


「言いにくいんだもんこのネコの口だと」


 怪しいけど、こいつもしかしてただ只管に怪しいだけなのかねぇ!?どっちなんだろ!?

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