Kobold-Vagrant-Batshit-Bastard4
「おのれぇーニンゲン!次会った時は必ず必ず食い殺してやるぅぅぅぅ」
何とか封印できた。
あの後、召喚契約石の失敗からグダッた戦いを、手のひらから少しずつドレインすることで持ち直し、女傑を仕留める寸前までいったのだ。だがしかし流石は女傑。略してさすけつ。戦闘の最中に《魔獣覚醒:人狼変生》なるスキルに目覚め、ステータスのアップに加えて若干のドレイン能力にも目覚めたうえ、終には見た目が悪っぽくカッコ良くなるという凄まじい巻き返しを見せた。
再びジリジリと、カッコ良さですら負けそうになりつつ打開策を探る中で俺は驚くべき発見をする。《猿真似》、戦闘でいらない子扱いされたこのスキル内のリストに《召喚契約》が新たに加わっていたのだ。俺は見誤っていたよ。この子は無機物からすら習得できる優秀な子であった。噂に聞く、役立たずと追放され後に大活躍今さら戻って来いと言われてももう遅い、というやつだな。反省だ。将来、実際に同じ様な仕打ちを、パーティーメンバーにしてしまう日も来るかもしれん。その時は涅槃に連れていって再調教だな。外でたわわに大きく育ったかつての仲間を再び収穫するのだ。鮭捕りみたいだ楽しそうだな。癖歪み忍者あたりに仕向けてみようか。
脱線したが、《召喚契約》を試行回数の暴力で成功させ、流石の女傑も、略してさすけつもとうとう陥落したということである。石ではなく直接俺が魔法を使ったからか、契約の証が下腹部に浮かび上がっている。この証はさすけつ個人を示す紋章というか、魔法で呼び出す際はこの紋様を読み取ってさすけつの肉体を再現しそこに魂を戻すので、さすけつ個人を情報として保存したものというか、とにかく謎パワーで俺とさすけつは一心同体となった。当初の予定と違うが、まあさすけつもこれで寂しくないだろう。
「結婚、おめでとー!」
邪聖少年をきっかけに、おめでとう、おめでとう、と見物客から聞こえてきた。立ち会い人のお坊さんも印を切って祝福してくれている。そういう方向で話を納めるのな。
「姉上、良かった!ニンゲンの子よ。末長く姉上と幸せに。たまには顔を見せてくれたまえワン。種族は違えど、大切な家族。甥っ子姪っ子の顔もみたいワン」
同じ種族同士、一緒にいるのが健全だろう。という配慮なのだろう。皆、さすけつが幸せになることを心から望んでいた。より一層、さすけつの孤独さが際立ち悲しい。が、それはそれこれはこれ。文句も言われないのでそそくさと去るに限る。ハネムーンで忙しくなるから後日親御さんには挨拶すると伝え、我らが初心者の街1へと帰るのだ。捕獲したがまだまだ反抗的だったし、じっくり時間をかけて洗脳していかねば。
街道まで見送りが絶えず、凄く罪悪感湧きながら帰路につく。もう狗尾草を殺せないかもしれんな。
「ぶるぶるぶるるぅぅぅ」
「貴殿!敵襲!この距離まで!?」
もうすぐダンジョンにたどり着く、という所で巨大なモンスターに奇襲を受けた!盗賊系のスキルが使える奴が3人もいて誰にも気取られずにここまで接近を許すとは。強敵の予感と、パーティーのバランスの偏りに戦慄しつつ鎚矛を抜く!何で三人も盗賊ポジションいるんだ!
「ひひぃーん。ふひひーん。ぶひひひぃ」
「これは、幻獣?」
「いかんっビューティー!近づくんじゃあないッ!」
「ふおぉおおおおおぶべへっ」
相手が邪聖少年に魅せられている間に鎚矛で横っ面を叩く。《隠忍雀》のスキルによってコピーされた《魔獣覚醒:人狼変生》も発動しての渾身の一撃だ。
「今の内にダンジョンに潜るぞ!」
「う、うん!」
「「カッコいいー!」」
ふふふ。尻尾が狗っぽくなり、牙なんかも凶暴に生えてる。カッコよかろう。
とにかく、この恐るべき幻獣種、ショタコーンと邪聖少年の対話を防ぐことが出来た。国盗りはまた今度な。




