Elise-conversation-かんばせ-Genovese!3
短毛で全身が細長い実に速そうな流線形で、実際に一番速かった奴が癖歪み忍者Ver.Koを捕まえた。
腰布とチューブトップと人間の歯で出来た首飾りだけという狗尾草っぽい格好をあっという間に剥かれ、残りはバンデージ褌とイヌ耳シッポのみである。助けるのではなかったのか。襲ってどうする狗尾草よ。
「むふぅー!むふぅー!付け根から良い匂いがするハウ!」
「だめぇ!しっぽ。しっぽぬけちゃうぅーでゴザルワン」
あわやという所で、しかしそこは腐っても悪実の益荒男。可憐な顔立ちでも武家の血を引く大丈夫。すっかり俺の情婦に転職してしまったが、ぷりんとした尻ぺたで相手の胴体をかち上げ、つくった隙間から流れるように首に足を巻き付けた。
恐ろしい体捌きである。忍者由来の体術というよりは彼ら悪実の伝統競技、スモーの流れを組む技術なのかもしれない。
スモーは男達が寸鉄1つ帯びず、熱き肉弾をぶつけ合う神聖な行事と聞く。やはり寝技では油断ならない奴だったか。でもあの顔立ちだし公式試合とか出られなかったんだろうなあいつ。相手選手の癖を歪めてしまうからな。
「どすこーい!」
むっちりと筋肉の詰まった太ももが、相手の長い首を締め上げ、そのまま捻る。下顎が尻に埋まってなんとも幸せそうな死骸が出来上がった。これで4匹目。
実は途中から仲間の振りをして狗尾草達と一緒に癖歪み忍者を追いかけていた俺。水路に入っていく胴長短足の1匹目を眺めつつ、癖歪みの尻に夢中な2匹目と3匹目を始末していたのだ。
これで残りは推定女傑と、側にいた副官っぽい奴のみ。冷静な大人二人が残ったな。
古参兵と新兵という派閥による致命的な練度の差。おかげでここまで有利に進めてきたわけだが。格上が2匹いるのは厄介だな。
「B兄ちゃん。僕に良い考えがあります」
足元の鉄格子を押し上げて邪聖少年と緑髪のエリーゼ、通称ズタ袋少女が這い出てくる。
初対面でのジャーキー拷問の折りに被っていたズタ袋、なんと彼女の初期装備であった。骸骨の附子だからか、髪が燐光を帯びて光るのでダンジョンではとても不利なため、このズタ袋で隠しこれまで1人で探索していたらしい。
ズタ袋にくすんだローブ、大きな鎌と、装備の点数こそ少ないが魔法も物理も破壊力のある中々の拾い物であった。
装備もステータスも打たれ弱いが、リッチの特性を継ぎ物理的な攻撃に高い耐性を持つので矢面に立たせても強い。とは本人の談なので試してない。
逆転の目があるとしたら、この新戦力たるズタ袋少女の秘められしスキルが、その起点になるだろう。
「いや、彼女は戦わせませんよ。被保護者だし」
違うんかい。
「あれ!?ここから私が活躍するものとおもってました!墓穴があったら入りたい!」
それはもしかして、骸骨ジョークなのだろうか。
「は、挿入らないでゴザルからな!貴殿」
変装を見破られず、素手で直接破られてしまった癖歪み忍者が、残る褌一丁の尻ぺたを隠しながら俺を睨む。何の想像したんだよ。ズタ袋少女を何処に突っ込ませる気なんだよ。
「任せて。これで一網打尽さ。名付けて、火付け油樽大爆発大作戦。これで彼ら2名もこの砦も粉々さ」
さすがにここ粉々にしたら報復がすごい。不採用だ。
引き際を弁え、落とし何処を見誤らないのが荒事慣れした悪漢しぐさというものよ。世の中に反逆こそすれ、全面戦争は避けきり利益のみ掠め取る。気宇壮大なピカレスク・ロマンの申し子なのである。




