okie-dokie-valkyrie-ladies2
おねーさん井戸端裁判における限定派三人。つまり条件突きで何かくれるっていったのが受付、図書館、訓練所のおねーさんだ。訓練所おねの条件は、仮想敵として初心者どもをぶちのめすこと、である。訓練所おねがぶちのめしても、それはおねーさんだから、で済まされることが多いので、同年代の圧倒的に強いやつに鼻っ柱へし折られる経験をさせたいのだそうだ。
この初心者の街1は全国のあらゆる少年少女がやってくるので、虫も殺せない者から武才に傲る者、びっくりするような怠け者まで色とりどり。
勝てない戦いを繰り返すなかで、それでも戦うこと、それでも生き延びること、それでも訓練し続けることを学ばせたいそうだ。
サキュバスにとってレベルドレインは攻撃手段の一つだと主張して、レベルダウンしない程度ならOKいただいた。経験値吸われる理不尽さも学ばせるべきとの判断だろう。やったぜ。
この条件クリアでいただける貰い物は、スキル《ノーバディ》が発動する殺傷力のある生活用品を用いた戦い方である。俺だけじゃなく、おねーさん自体も農具等々で真剣に人を殺す術理なんてこれまで考えたことはない。のだが、そこはさすが武芸百般なおねーさんなので、すぐに得物のコツを掴み、最大効率な殺しの技術を数日で身につけていく。
「昨日、ピッチフォーク活殺自在剣に開眼したよー。今日はこれを伝授するねー」
どういう名前なんだよそれと思ったが、敵に気取られぬ様意味をずらして名付けているらしく、ソードブレーカーのように使って剣を活かすも殺すも自由自在という殺法だった。
他にも鍬を桑、開墾を蚕と字を変えて蚕桑流と書いて敵に得物が何か気取られぬようにしているものも教わったが、手に鍬という動かぬ証拠もって戦うのに何言ってんだって感じだったな。とにかくなるべく情報渡さないことが重要らしいが。
今日も今日とて同年代でも大分ガタイの良い方の騎士だか武士だかの子を叩きのめし、悪魔めと罵倒を受けながら訓練用の砂場に立つ。ふふん、死屍累々のなか独り佇むのは気持ちが良い。…何か錬金術士だったころの記憶が引き摺りだされそうになったのであわてて蓋をした。過去と上手く付き合って行く小粋な悪漢しぐさ。時には見ないふりもタフガイには必要なのさ。
悪漢なので、死体蹴りも忘れない。お駄賃がわりにレベルの減らない、ほんの挨拶程度にドレインしてやった。子悪魔めと罵倒を受けた。また1人、癖を歪めてしまったかもしれん。こいつの奥方だか愛人だかの1人には、確実に附子が加わることだろう。1人、というのが奥ゆかしいな。
多分こいつ初恋を大事にというか引き摺るタイプだから、附子からは1人だけなんだろうなと思う。流石はサキュバスの附子。こういうことまで何となくわかってしまう。
…将来生まれた子でもこいつに嫁がせて政治に食い込んではどうだろうかと商人だったころの過去生が囁くので、採用することにした。過去と上手く付き合って行く粋な悪漢しぐさ。時には知恵を巡らせることもこのマッチョマンには出来るのさ。