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なな

「やり過ぎだ!これ以上、罪を重ねるな!」

アルバート王子の声が飛ぶ。

ライラは冷静に彼を見る。

元々身長の高いライラだったが華奢な体からは信じられない力だった。

「この場にいる者達を殲滅すれば、罪はなくなるわ。」

あっさり笑顔で言うライラの言葉に戦慄が走る。悲鳴を上げて逃げようとしたアイラの取り巻きの令嬢達がパニックを起こし中庭から出ようとするが、透明の壁に阻まれていた。

「…そ、それほどに、我らが憎いのか?」

「憎いとか憎くないとかではないかしら?ただ、皆様の苦しむ姿、足掻く姿、断末魔の叫び。全てが私のご褒美なの。今まで苦しみ、耐えてきたライラの敵などついでですわ。」

だらりと力を失った王妃を投げ捨てる。

「母上!」

アルバートが王妃の体を支える。死んではいないようだ。

「ライラ、こいつら喰っていいのか?」

「消化不良起こすからやめておきなさい。」

「ちぇっ、」

ライラが再び指を動かすと、壁を叩いていた令嬢達が転がるようにライラの前にやってきた。

令嬢達はライラの姿に息を飲む。

ライラは、片っ端から令嬢の頬を叩いていく。

想像以上の痛みに誰もが倒れる。その中の一人の髪の毛を掴み顔を上げさせる。

「あなたには、こうされたことがあるわね?」

ニッコリ笑うライラに令嬢はぐしゃぐしゃの顔で謝罪の言葉を述べている。

「やられたら、何倍にもして、返すのが鬼の流儀なの。」

「なぁ、ライラ、いい加減、姫んとこ行こうぜ。」

ことを見守っていたコクレンが欠伸をしながら言ってきた。

「それもそうね、じゃ、姫様に手土産を。」

「いいね!何?こいつらの肝でも持ってく?」

「姫様は血生臭いのはお嫌いよ、そうね、ライラに直接関わり、虐めていたものからは、20年の寿命、間接的に加担していたものからは10年の寿命を頂きましょうか。」

キラキラとしたものがライラやアルバートから抜けていく。

「ライラに関わりなく、この場に閉じ込められた方々からは、2年。王妃の侍女からは5年の寿命を。父公爵には、近い内に死んでもらいましょう。腹立たしい国王と王妃には苦しみながら来年、お義母様はその肉体を腐らせながら3ヶ月以内。で、アイラ。」

怯えたアイラ。

「自分では直接手を出さず、裏で取り巻きやアルバート王子を誘導していたあなたは、そうね……。寿命は取らないで、その瑞々しい表面上の若さを貰いましょう、ライラを散々婆臭いと罵っていたものね。」

アイラの皮膚、髪から潤いと艶が消えていく。

アルバートも周囲もアイラが老婆のような見た目になったことに言葉が出ない。皺とシミの増えた手、ざらつく顔、間近にいる母親が後ずさったことにアイラは悲鳴を上げる。

「見て!コクレン!綺麗な玉ができたわ。」

「おう!これなら姫も喜ぶぜ!天才だな!」

嬉しそうな二人。

「アルバート王子、来年には、あなたの父親も母親も死ぬわ。今の内に引き継ぎを頑張って下さいませ。出来ることならアイラを正妃に。と言っても、あなたも寿命が10年縮んだから、さっさと子作りした方がよくってよ。それでは、皆様!私はこれから、ただのライラとして、我が主の元に参ります。お世話になった覚えは全くもってありませんが、遠い地で、この王国の行く末を楽しみにしておりますわ。」

コクレンがライラを横抱きにすると二人の姿が消えた。



静まり返る中庭。

今起きたことが、現実離れしすぎて呆然としていた。

しかし、皆の視線がアイラに向くことで現実だと思い知る。アイラは顔を皺だらけの血管の浮いた手で覆い泣いていた。

気のふれた国王は近衛によって、王妃も疲労困憊と言う体で侍女に支えられながら引き上げていった。

アルバートは、事態の収拾に取りかかり、アイラをはじめとした者達から改めて聞き取りを行った。その中で自分が如何に浅はかな考えでライラに接していたかを知り、国王と王妃、そして、公爵家の罪を明らかにし、来るべき日のために準備を整える必要を説いた。しかし、ライラと竜人の力を実際に見ていない、体験していない者達からの反対意見が出されたのも事実であった。あの場にいたアルバートや、貴族令息、令嬢、そして、騎士団の話や、国王と怯える王妃、老婆のような見た目となったアイラが真実であると分かると動揺が生まれた。

国の建て直しをする中、アイラの母親が無惨な死を遂げた。その後、ライラの失踪から数ヶ月、閉じ込もって出てこないアイラを無視する生活にもなれ、自身に掛けられた呪いのことを忘れていた公爵は、アイラとアルバートとの婚姻を押し進めるために訪れた玉座で、王家と家臣が呆れる中、死んだ。ライラの呪いが真実であると自覚した者も多く、国を上げてライラの捜索、解呪を願うようになっていく。国王アルバートは、自らを振り返り、良い国造りを目指し邁進。後継は自らの子ではなく、親戚から選び、引きこもるアイラを見捨てなかったと言う。


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