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漆黒の長い髪に、細身であるが筋肉質の美丈夫がそこにいた。

人と違うのは、左頬に鱗のようなものがあり、虹彩が縦長であると言うことか。

「あら、やればできるじゃない。それと、私の名前はライラよ、そうね、貴方の名前はコクレンにしましょう。」

「うん、俺、コクレン!」

小さくなったと言っても2メートルはありそうだ。その大柄な男に抱きつかれているライラの体はすっぽり覆われている。

「あ、そうだ!あ……ライラの喜びそうな証書取ってきてやったぞ。誉めろっ!」

渡された丸まった用紙を広げる。

「まぁ、これは、誉めなければならないわね。でも、コクレン、ちょっと離れてちょうだい。」

さんざんごねたがコクレンはライラを解放し、代わりにアルバート達を睨んだ。

「威嚇しない。アルバート殿下。陛下から正式な婚約白紙命令書です。」

広げられた羊用紙を見たアルバートは顔を青ざめた。

用紙は血痕が付いていたのだ。

わなわなと震えるアルバートと周囲の者達は、物々しい足音が近付いて来たことに気付いた。

それは、王立騎士団の精鋭達だった。騎士達は、ライラとコクレンを取り囲んだ。

「貴方、何したの?」

騎士達は、一斉に剣を向け、魔法の詠唱を始めている。騎士はライラにも逃げるように言うが、頭を振った。

「止めておきなさい。彼は、ドラゴンのドラゴニュートよ?あなた達が敵うわけないわ。」

ドラゴニュートと言う言葉に詠唱が止まる。

「亜人の国からの、使者か?」

尋ねる騎士団長。

「いや、俺は目覚めた、ダンジョンの王。」

何故か片言のコクレン。

「外から来た、番、殺された。ダンジョン、出て、妻の魂探した。ここにいた。」

また、ライラに抱き付く。

「この国の王妃、ライラ、虐めた。国王、ライラ孕ませようとしてた。許せなかった。だから、ちょっと、お願いした。」

ニコッと笑う。

「父上と母上をどうしたのだ?」

震える声でアルバートが尋ねてきた。

「こうした。」

コクレンが手を差し出し左から右へと振る。

すると、重い鎧を着た騎士達が音を立てて波のように倒れていく。中庭の出入口付近で悲鳴が上がる。逃げられないように中庭に閉じ込められたアイラを始めとした令嬢達のものだった。騎士団長以外のすべての騎士が昏倒したのだ。それは、アイラ達令嬢の前で構えていた騎士も同様だった。

立っているのはアルバートと取り巻き、アイラ達令嬢、そして、騎士団長と魔法師団長だった。

「ダ、ダンジョンの中の魔物は、ダンジョンの中でしか生きられないはずだ!」

叫ぶ団長に対してコクレンは冷静に答える。

「番、殺され、どうでもよくなった。だから、一度死んでみることにした。で、新たに生まれ変わったら、ダンジョンから出られた。番の魂、探した。ここにいた。」

ライラは、ポンと手を打つ。

(コクレンの言葉が片言に聞こえるのは、言語理解の魔法を受けていない騎士団長を通しているから。魔法の残思のせいで一応、騎士団長は理解出来ているのね。)

面白い現象だとライラは扇で口元を隠し笑う。片言も可愛いけど、まどろっこしいからとライラはそっと術を放つ。

「説明を求めるなら、当事者も呼ぼう。ライラ、力、借りる。」

流暢になったコクレンがパチンと指を鳴らすと目の前に息を弾ませ真っ青な国王と王妃が転がった。

「ぐ、ぐるじいぃ!」

胸を押さえて踞る国王と乱れた髪、涙で化粧の落ちた顔でこちらは喉元を押さえている王妃の姿があった。

「て、転移?まさかっ!ありえん!!」

叫んだのは魔法師団長だ。

「転移はまだ未開発の魔術!しかも、他人を呼び寄せる術など!」

怪異を見るような人々の視線。しかし、ライラは気にしない。

「ちょっと、私の力勝手に使わないで頂戴。まぁ、いいけど。にしても、あれしきの転移で魔力を失うなんて、国王陛下と王妃陛下は存外、矮小なのですね。私はとっても親切だから、話が出来るほどに癒してあげましょう。」

決して笑っていない目をしたライラがすっと手を上げ二人を癒した。

先程まで息も出来ない程の苦しみを味わっていた二人が息を整えはじめた。

二人とも涙と涎と鼻水でボロボロだった。


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