3 大切なこと
私は牢に入れられて数日、
何も考えられず、呆然とただ時が過ぎるのに身を任せていた。
すると、ある時、大司教がやってきた。
「席を外してもらえるかな?」
「は、はいっ!」
こんな声が聞こえた気がしたが、
もうどうでもよかった。
彼女が死んでしまったのだから・・・。
・・・ニーナ・・・。
すると、
隔離された牢の中を声が響く。
「彼女はかなりいい具合だったよ。」
・・・いい具合・・・?
「私が彼女を抱くといい声で泣いてね。
嗜虐心がそそられた。」
・・・嗜虐心・・・?
「思い余って、殴りすぎてしまったよ。」
・・・殴った・・・。
この男は何を言っている。
「まだわからないのか?」
私は内心認めたくなかった。
きっとそれを認めたら、私は壊れてしまう気がしたから、
きっと今のままの私でいられなくなってしまうだろうから・・・。
けれど、それを認めさせる言葉が、
この静かな空間に響く。
「私がニーナを襲ったんだよ。」
この瞬間私は怒りに任せて、
彼に殴りかかる。
だが・・・
「流石、結界石だ。
教会騎士の攻撃を防ぐなんて。」
・・・届かない・・・。
その間に、
「何をやっているっ!」
警備兵が飛んでくる。
私は抑え込まれる。
「離しなさいっ、離せっ・・・離せよぉ~~~~っ!」
抑え込まれた私に彼は声をかける。
「君が悪いんだよ。」
と、
そして続ける。
「君はいいカモだった。
騙される方が悪い。」
「うおおおぉぉぉぉ~~~っ!」
悲しみに暮れた私の声が牢の中を響き渡る。
いつまでも・・・いつまでも・・・。
私はどこか落ち着いていた。
日にちがあったこともあり、
この状況を完全に受け入れていた。
判決はどうやら、
魔界の最深部に飛ばされることのようですね。
きっと、あの下種を殴ろうとしたことが祟ったのでしょう・・・。
後悔はありません。
これでニーナのところに行けるのだから、
「ほら、行けっ!」
私は下に開いたゲートの中に入れられてしまう。
私はゆっくりと沈んでいく。
私は諦めていた。
本当に諦めていた。
これは仕方のないことなのだと・・・。
これが私の天命なのだと・・・。
・・・けれど、私は見てしまった。
大司教、マックス、エリーが笑って、私を見下ろしていたのを、
私を見て、ひどく楽しそうに葡萄酒を飲んでいるのを・・・。
その時に私は思った。
なんで・・・
・・・なんであんなやつらが幸せそうで、
私とニーナがこんな目に・・・。
私たちが一体何をした?
むしろ、善良に生きていた。
それなのに・・・。
では、私たちとあいつらの違いは何だ?
あの下種どもとの違いは・・・。
ニーナはあいつらに妹を犯され、
そして殺された。
私は偽りの証言をされ、
偽りの罪を被せられた。
・・・そうか・・・
・・・私は間違っていたんだ・・・
・・・信じることが救われるなんて間違いだったんだ・・・。
なにが善良だ・・・
まったくもってあほらしい・・・。
・・・救われるのは・・・
・・・常に騙す方だったんだ・・・
「ははは・・・。」
きっと気でも触れたんだろうと、
連中は私を見ている。
そして、私の笑いが止む。
・・・絶対に生き残ってみせます。
私は彼らに笑顔を向ける。
そして・・・
あなた方を・・・
・・・・殺します・・・。
それまではどうか、ご存命であってください。
私は恭しく礼をする。
こうして、私は魔界に旅立った。