2 裁判
ガシャンッ!
そうして私は牢に入れられた。
そして数日後、
私の意識は戻ってきていた。
・・・ニーナが襲われた・・・
それも私が任務に行っている間に・・・。
きっとあの二人が私のことを証言してくれるから、
私の方はすぐにでも釈放されるはず・・・。
となれば、考えるのはニーナのことですね。
・・・殺されたとは言われなかったことからも
まだ生きているはず・・・。
となれば、すぐに会いに行かなければ、
きっとひどく心を痛めているだろう。
どうにかして慰めてやらなければ・・・。
そんなことを考えていると、
「ほら、出ろ!」
「しゃ、釈放ですかっ!?」
「は?
んなわけねえだろ、裁判だよ。」
「へっ?」
「ほらすぐに行け。」
「ちょっと待ってくださいっ!
なぜ私が裁判なんて・・・何もやっていない・・・というか任務に行っていたというのに。」
「いや、よく知らんが、
それの検証なんかをやるんじゃねえのか?」
・・・・・・それは考えづらい・・・。
教会が裁判をするといった場合、
いい方に判決が出ることなんて、まあ、まずない。
となると私は・・・。
「おい、兄ちゃん、大丈夫か?」
いえいえ、いけません。
信じる者は救われる。
ランス司教もおっしゃっていたではありませんか、
さっきのはたいていの場合であって、
すべてではない。
私が2人を信じなくってどうするんです。
「兄ちゃん?」
「ええ、大丈夫です。」
私は牢を出て、
騎士に連れられ、裁判の間に向かう。
そして裁判が始まった。
「被告アデルは二つの罪を犯した暴行に淫行・・・これについて審議を始めたいと思う。」
「話し合う必要などない。
こやつは有罪です。」
「ワイーズ大司教、それはなぜで?」
「こやつは妹であるニーナに並々ならぬ愛情を抱いていた。
とても兄妹の親愛の情とは思えないものだった。
そう教会内で噂になっております。
その現場を見たというものも・・・。」
「そ、そんなことあるはずないっ!
私は彼女を愛していたのは事実です。
ですが、それは・・「口を慎みなさい。被告に発言権はありません。」・・。」
・・・くっ・・・・。
「ワイーズ大司教、発言は以上ですか?」
「いえ、さっきのことが事実だとわかるように証人を出しましょう。
ほら、入ってくるといい、マックス。」
っ!?
今なんてっ!?
カツンカツン、カツン。
「・・・マックス・・・。」
私はこの状況を信じられなかった。
信じたくなかった。
よりにもよって・・・なんで彼が・・・。
「証人マックスよ。
本当か?」
「ええ、審問官様、
本当でございます。
彼は私によく言っておりました。
ニーナを愛している。
彼女を自分のものにしたい、どうすればそうできるのかという相談までされました。」
ざわざわざわ。
「そ、そんなのは嘘だっ!」
「口を慎みなさい。」
・・・なんで・・・なんで君が・・・。
私に何か手は・・・ってあるじゃないかっ!
「審問官様っ!
私に発言を許していただきたい。」
「ん?よろしいですかな?」
コクン、コクン、コクン、コクン。
「発言を許可しよう。」
「ありがとうございます。
私はニーナを襲ってはいません。
理由がないなどということではなく、
物理的に不可能なのです。」
「ほう。」
「続けて。」
「ニーナが襲われた時間はわかりませんが、
私は任務に出ていたのです。」
「なるほど・・・で、君は証人を召喚したいというわけですね。」
「ええ。」
「その必要はない。」
「ど、どういうことですかっ!?」
私は激しく動揺する。
「君が呼びたいであろう相手を私が呼んでおいてあげたんだから。」
「・・・ってまさか・・・。」
「来給え、エリー。」
僕はもう何をしていいのかわからなかった。
「証人エリー、君に聞こう。
君は彼と一緒に任務に行ったのか?」
「いいえ、
私は脅されたのです、そう言うように・・・。」
彼女は眼を伏せながら、
そう答える。
「そ、そんなはずは・・・。」
「そうよ、だってあなた言ったじゃないっ!
私が一緒の任務に行ったことにしなさいって・・・
ねえ、マックス、あなたもそう脅されたわよねっ!」
「ああ、だから、俺はここに来たんだ。
彼を裁いてもらおう。
もう彼に怯えなくていいように・・・。」
・・・エリー・・・マックス・・・!
「判決は決まったようだ。
判決を言い渡す。」
「ってちょっと待ってほしいっ!」
「・・・なんだね?」
考えろ・・・考えるんです・・・。
このまま刑を執行されると、
一生出てくることすらできなくなります。
そしたら・・・
・・・クソッ!
なにか・・・
ポケットの中を漁る。
・・・依頼書・・・。
・・・これだっ!
「審問官様!」
「なんだね?」
「ありました!
2人が嘘をついているという証拠が!」
私は彼に向かって、依頼書を差し出す。
「それはなんだね?」
「依頼書です。
これで証明されるでしょう?」
騎士に依頼書を渡し、
審問官が受け取る。
「ふむ。確かに・・・これは正規のもののようですね。
ならば、再考せねば・・。」
「審問官殿、
待ってほしい。」
「なんです?ワイーズ大司教?」
「彼のスキルについてです。
覚えてらっしゃいますよね。」
いやらしく笑う。
「そ、それは・・・ってまさかっ!」
「流石、審問官殿。
わかったようですね。」
・・・スキル・・・
・・・まさかっ!
私は審問官を見つめる。
すると、徐々に審問官の顔が真っ赤に変わっていく。
そして、
「被告アデル・・・よもや、私を愚弄するとは・・・判決はっ!」
バタンッ!
「失礼します!」
「なんだ、騒がしいっ!
今判決を・・・ってどうしたのかね。」
「・・・ニーナが死にました・・・。」
僕はそれからのことは覚えていない。