下界へ
一冊の本を探して3ヶ月が過ぎる
毎日毎日食事も睡眠も取らず探している
もう諦めようか何度そう思ったか
その度に幻聴があの時助けられなかった
エインヘリャルの女の子を何回も蒸し返す
それが逆に原動力になっていたのかもしれない
神正会の役員になっても
エインヘリャルを選定は出来ない
それは分かっている
助けられないのも分かっている
しかしもっと細かに通達してくれたら
心の準備が出来たはずだろう
分かっていながら曖昧な通達で
私達に伝えるそのやり方が気にいらない
私はその思いだけで今日も
唸るほどある本の中から一冊を探す
探し始めてから4か月になろうとしている
ダイスケは文句一つ言わず付き合ってくれた
もういい加減ダイスケにも悪いし
諦めようか?そうぼんやり考えていた時
ダイスケが興奮気味に立ち上がり私を呼ぶ
「おい!ユウジ!この本見て見ろよ!神正会の歴史の本だよー!」
なに?やっと見つけた?
私は急いでダイスケの元へ走る
ボロボロの本でかなりの年数経っているのが
見るだけで分かった本だった
「どこですか?」
私も興奮気味にダイスケの横へ並び本を見る
そのページには
『神適正委員会とは』
本を読むとそう書いてあるやっと見つけた
ダイスケは私に向かって
両手を下げながら落ち着けと促す
私も右手を胸に起き一度深呼吸して
ダイスケの目を見て大丈夫と小さく頷く
「ダイスケさん、やりましたね、それで肝心の役員になる方法のページは?」
ダイスケはニヤリと笑って
「ちょっと待ってね〜、なになに?神正会とは?ここは飛ばして、次!」
ページを強めにめくる
「次は、神正会の役割?次」
またページをめくる
「次、次、次、次」
どんどんページをめくる
まさか書いてないのかもしれない
そんな不安が頭をよぎる
「あった!ここだ!」
ダイスケが叫ぶ
少し離れた場所で見ていた
図書部の管理者の若者に「しー」と
人差し指を口に当て怒られる
「ダイスケさん、落ち着きましょうか?」
内心は私も興奮していたがなんとか飲み込む
ダイスケも少し落ち着いたみたいだ
それよりも早く読んでみよう
なになに?神正会の役員になるためには
【天界に居る者】
【大神に認められし者】
【大天使メタトロンに認められし者】
この3つの条件を満たし者のみ
役員への立候補ができる
投票は現職の神様により決められる
一回目の投票は紀元前3000年前
それ以降は記録がない
つまり約5000年前から
役員は変わっていないのか?
大天使メタトロンって誰?
ダイスケの顔がだんだんと険しくなる
「コレほとんど無理だよー、大神って紀元前3000年前のゼウスとアラーの2人と違って、今は4人も居るし、大天使メタトロンは堕天しちゃって何処か下界で暮らしている。何処かは分からないし、それに4大神のうちブッダとイエスは有給で下界に居る。神様は下界に降りる力はないよ〜、徳を積んで降りるしかないけど、何年かかるか分からないね〜」
私はそうなのか?でも役員になれる方法はあった
なんとかなるかもしれない
希望を捨ててなかった
「ダイスケさん、私に最初に説明してくれた時覚えてますか?私は覚えてます。下界に帰ることも出来る、そう説明してくれましたよね?見習いの私ならば下界へ降りれるのでは?」
ダイスケは はっとした表情を浮かべる
「そうだよユウジ!君はまだ神様じゃないから下界へ降りるのは自由なんだよ!どうして気付かなかったのか!」
図書部の管理者にギラリと睨まれる
「ちょっとダイスケさん、声のトーン落としましょうか?」
小さな声でそう言う
ダイスケは左手で口を抑え右手でOKサインを作る
よしなんとかなりそうだ
「ダイスケさん、早速下界へ降りてブッダとイエスから許可をもらってきます。下界へはどうやって降りるんですか?」
ダイスケは嬉しそうに答える
「簡単だよ〜、下界への定期便に乗るだけだからね〜、見習いのユウジの場合徳は必要無い全て天部の支払いになるんだよ〜」
そうなのか?なんて簡単なことなんだ
「じゃあその定期便に乗ります。何処にあるんですか?」
ダイスケの先導で歩く
神様業務をする階の更に下の階
天上界みたいに人がいない
そこに小さな空港みたいな場所がある
「ここが下界に1番近い場所だよー、もう下界手続きはしてあるからね〜、あの飛行機に乗るだけだよー」
飛行機で下界へ降りるのか?
って言うか降りれるのか?
少し不安になる
「じゃあダイスケさん、行ってきます」
久しぶりにダイスケと別れることになる
半年近くも寝食を共にした仲だ本音は寂しい
しかしブッダとイエス後メタトロンを
探さないといけない
ブッダとイエスは東京の住所まで
分かっているがメタトロンは分からない
私は飛行機に乗り込み
下界へと旅立つ




