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地獄

色々な下界の欲も見えた私も考えたこともある

神様は全てお見通しだったのだ

神様業務体験は休憩も無く

うっすら聞こえる幻聴とも戦いながら

なんとか定時まで体験を受けることが出来た

私も下を向いてブツブツと

助ける助けない叶える叶えないそう言っていた


「ユウジお疲れ様、もう交代の代理神が来るからねー」

ダイスケは優しく声をかけてくれた

しかし私はそれに答えられないほど疲れていた

今度は白人の大きな男性天使だ

「憧れの日本を担当出来て光栄です。出来る限り頑張ります」

デジャブ?そう思うがどこか違う

頭が混乱しているようだ

「ユウジ大丈夫か?」

ダイスケが心配してくれている


「なんとか大丈夫です、ちょっと休ませてください」

そう言って私はその場で横になる

「少しならばいいよ、タイムカードがあるからねー、長くは休めないよ〜」

それを見ていた白人天使は

「では、交代します」

そう言って座り込みブツブツと言い始めた


よしっ!もう大丈夫だ

1分だろうか5分だろうか

何も考えず横になっていた私は

自分に喝を入れて立ち上がる

それを見てダイスケも立ち上がる

一緒にタイムカードの場所まで行き

終了のボタンを押すそしてカードを入れ

ガシャンと手ごたえがある

見ると18:14と刻印されていた

ふと後ろを振り返ると順番待ちの列が出来ている

ぼんやりする暇もない

早々にここから退かないといけない

だがふらついてすぐには退けない

ダイスケが肩を貸してくれた


タイムカードから離れて

誰も居ないところまで歩く

「ダイスケさんありがとう、もう1人で歩けます」

私はダイスケの肩から手を外して

1人でその場にペタンと座り込んだ

ダイスケは少し離れて座り込む

「どうだった初日は?」

私はまだ頭がクラクラするがなんとか答える

「いやいや、あれが神様業務ですか?内容もですけど休憩も無いんですね。正直言ってこれはキツいです」

私の本音だった


ダイスケは優しく笑い

「初日にしては沢山助けたよね〜、中には助ける必要もない悪人も居たけどまだユウジには見えないからね〜、仕方ないよ」

まだ見えない?あれ以上何が見えるのか?

「ダイスケさんには、何が見えるんですか?」

ダイスケはゆっくり下を向いて

「その人の悪行だよ、人生でやってきた悪い事全てが一瞬で見えるんだよね〜、これは神様じゃあないと見えないからねー、ユウジにはまだ見えないんだよね〜」

あれ以上の情報が頭に入って来るのか?

これを毎日?休み無く?休憩も無く?

18年間も続けてきたのか?

と言うか1000年も続けないといけないのか?

諦めて談笑するグループの気持ちを少し理解した


なんでもかんでも神様に願うんじゃないよ

こっちは1人で日本中の願望と命を

一瞬で判断しなきゃいけないんだ楽じゃない

でも下界に居る時は深く考えずに

神様にお願いしたこともある

少し後悔して恥ずかしい気持ちになる

それを察してくれたのかダイスケが

「自分を責めなくていいんだよ、助けを求めるのは悪いことじゃないんだからね、生きてる証だし生きたいって事なんだから、本気の自殺は神様に願わないから助けられない、全てを助けることなんて出来ないんだからね」

私は泣きそうになっていた

今まで私はなんて自分勝手だったんだろう

命に関わらないまでも困っている人を

見てみないフリもしたこともある

後から助けてあげたらよかったと後悔もした

諦めて談笑するグループの気持ちも

心ならず理解してしまった


「こんな私でも、神様になれますか?」

泣きそうな顔でダイスケにあらためて聞いてみた

「なれますか?じゃなくて、ならないといけないんだよね〜、僕も最初の1ヶ月はキツかったよ〜、でも慣れるんだよねこのキツさに、発展途上国の諦めたグループの気持ち、分かったでしょう?日本はまだ豊かだから助けられるし、助けた後も希望があるんだよね〜、でも助けても希望がない国もある。これはまだ話してなかったけど天国はあるんだけどね〜、地獄は存在しないんだよ、ある意味下界が地獄なのかもしれないね〜」


そうだ 私は病気だが炬燵でぬくぬくと

ゲームをやっていたくらいだ

発展途上国に産まれた子供たちに比べたら

なんてぬるま湯生活なんだ

なんて恵まれた生き方なんだ

自分が悲劇の主人公になったつもりで

考えていた時期もあった

今まで生きてきてなにをしただろうか

自慢出来る事を何もしていない

自分への怒りさえ湧いて来た


ダイスケが優しく笑い話してくれた

「ははは、初日のショックは大きいよね〜、でも自分を責めても答えは出ないからね〜、今までなにをしてきたか?じゃなくて、今からなにをするのか?が、大切なんだよね〜」

私の考えの答えだ

そうだこれからだったまだ始まってもいない

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