神様業務体験初日
まばらな神様の中をかき分け
1人の黒人女性天使のところまでゆっくり歩く
その天使は座り込みブツブツと何か言っている
その女性天使の左肩をダイスケが優しく叩く
「お疲れ様、交代の時間だよー」
女性天使は立ち上がり
「お疲れ様です、憧れの日本を担当出来て光栄です。頑張りました。後はお願いします」
そう言って私とダイスケに一礼して
タイムカードのある方へと歩いて行く
「さぁユウジ急ごう、下界のみんなが神様を待っているよ〜」
私はどうしたらいいのかわからない
とりあえず座り込みあぐらをかいてみる
ダイスケは私の横に座って右肩に手を乗せる
その瞬間 頭の中に沢山の声と画像が出てくる
宝クジが当たりますようにと願う男性
首を吊ろうとしてる女性
好きな先輩と結ばれますようにと願う女子中学生
欲しい玩具がもらえますようにと願う小学生
今まさに産まれて来そうな分娩室
様々な願いが様々な思いが
一瞬のうちに頭をよぎる
そう考えていると次の新しい思いが
次から次へと出てくる
ちょっと待ってくれこれは早過ぎる
私はダイスケに聞いてみる
「ち、ちょっと待ってください。これなんですか?一瞬のうちに色々と頭の中で、画像と思いが通り過ぎるんですけど?」
ダイスケは真面目な顔で
「これが神様業務体験だよ、僕がサポートしているけど、神様になったらこの業務を1人でやるんだよ、さぁみんなが待っている業務に戻ろう、助けたい人を強く願うんだよ、そうしたら助けられるからね」
そう言っても一瞬の出来事で
誰を優先して助けるかなんて選べない
でもこう考えている間も助けを求めている
私は目を瞑りその一瞬一瞬に集中を始めた
キャバ嬢をモノにしたいサラリーマン
この思いはスルーしよう
介護疲れから母親を殺そうとする息子
これは助けたい強く願うと
息子は思いとどまったのか包丁を戻す
また分娩室だ難産で母体と子供どちらも危険だ
これも助けたいそう強く願うと
「オギャー」と大きな泣き声で無事出産できた
次はビルの屋上から飛び降り様とする男性だ
これも助けたいと強く願う
男性は思いを変えてくれたのか泣いている
ここでダイスケに
「ちょっと待ってください、これはなんですか?神様業務なのは分かりますけど、思いや命を助けているんですよね?キャバ嬢とかどうでもいいのも混ざっているんですけど?」
ダイスケは私の目を見ながら
「神様の業務に大きい小さいはないんだよ、『神様』って願う下界の人間の全てが対象なんだよ、願いの大きさは関係無く全てが見えるんだよね、助けるか助けないか願いを叶えるか叶えないかもユウジの自由だよ、さっき助けた介護疲れの息子、助けたからと言って幸せではないんだよ、思いとどまった事でまた終わりのない、母親の介護が待っているんだからね」
ならばどうしたらいいのか?
私はちょっと怒った感じでダイスケに聞いた
「じゃあなにが正解なんですか?なにが正義なんだよ!あの親子は見捨てたら良かったんですか?私はそんなことしたくないです!」
ダイスケはニコリと笑い
「正解なんてないし正義なんて定義はないよ、正しいと思い行動することが大切なんだよ」
私は一瞬理解出来てなかった
しかし行動することが大切なのは理解した
さぁと気合を入れて気持ちを切り替え
また神様業務体験へと戻る