表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex―III 】……魔王討伐編前段階のパートです。
97/147

(96 β ――ウルクアレク・オブ・ザ・デッド)

ありがとうございます。

こちらは95話までを踏襲したおまけ要素な「96 β話」になります。



 ぱんだ亭の常連客らが噂をささやく夜。

 すでに異変――いいや変調は起き始めていた。


 月の光も隠れるプジョーニの路地裏。

 噂のウルクことアレクが人を襲っていた。

 ただし戦士は腰の武器を使わず、牙のような尖る歯で咬みつき、食いちぎり相手を殺した。

 それから、ふらりふらり。

 白目をむくアレクは街中へ姿を消した。


――そうした夜が明け、朝を迎える。


 それは、奇妙な朝であった。

 霞むそうなうめき声に支配された朝であった。

 人の気配はあった。

 だがしかし、そこに人の生気が感じられない。


「……ルォォォぉ……ネぁぁァァ」


 アレクが何かを求め徘徊するが――。


――それはもう、人ではなくなった姿でのことだった。


 青く変色した肌。

 だらりとよだれを垂らす口。

 意識があるとは到底思えない、光のない眼。


――ずるり、ずるり。


 人でなくなったアレクの後ろで、給仕服の少女が足を引きずり歩く。

 少女もまたアレクと同じような症状に冒されていた。

 むろん。

 この二人だけなく、街の者達の大半がこの『ゾンビ症』に感染していた……。




 人が暮らす街として、プジョーニが最後の朝を迎えてから、数ヶ月。

 400年前に死滅したとされた病原体の繁殖は、腐る人間と壊れた街並みを生み出していた。

 今はもう、『ゾンビ症』に冒された者達しかここにはいない。

 しかしそこに、生きた人間が足を踏み入れる。


――アーサーら、勇者一行であった。


 大陸への被害拡大を防ぐため、彼らはいた。

 目的は殲滅。

 すべてを焼き尽くし、浄化させる使命を帯びる。


「……本当にいいのかい」


 勇者が声をかけた少女は、小さくうなずくと駆け出した。

 涙を流す少女が、愛する兄と出会えたかは分からない。

 ただはっきりしているのは、袂を分かつ魔法士の少女が死を選んだという事。


「神アマンテラスよ! ここに貴方の慈悲を授け給え」


 アーサーはその身に宿す”神の加護”の力を増幅させてゆく――――。


――この日、大陸からプジョーニの街そのすべてが消えた。


 こうして、一人の男の冒険譚が完全な終わりを迎えた。

 また、それから程なくして、大陸は”大塊受胎”を迎えるのであった――――。


 


   ―――― WOLFALEX OF THE DEAD ――――


             了




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ