表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex―II´ 】……今回の冒険の結末がさらなる冒険を呼ぶ予感パートです。
52/147

52 運び舟、ハコブネ ①



 最上部に三角の屋根を持ち、四面に壁を下ろすヤグラの足元。


「本当に、このヘンテコな塔で間違いないのだろうな」


 アレクは固く閉ざされた扉を前に文句を垂れる。


「”鉱山へ行く場合は、安全便利な『運び舟』を利用しましょう!”――の項目に書いてある場所とは合ってるし、塔の絵も一緒だし……ここが運び舟乗り場だと思うよ」


 ココアにランタンの明かりを担当してもらい、エリが『手招きドラゴン討伐の手引き書(ガイド)』をパラパラめくる。


――荷物の中にあった商工会発刊のガイド本。


 ドラゴン討伐において定番の一冊らしく、ドラゴンの詳しい情報はもちろん、ドラゴンが棲まう鉱山への行き方。目的となる最奥部へのおすすめルート。それから、街の人気グルメ特集など、充実した内容になっている。


 役立つ手引き書(ガイド)は、街の商店やギルド会館などにて3000ルネで購入できます。是非お買い求めを――。

 喧伝文句はこのような具合だ。


「そうか。ならば、こうするまで」


――バゴンッ。


 力強い蹴りが扉を襲う。

 バキッと破壊音を鳴らし、バンッと景気よく扉は開いた。


「階段以外なにもなさそうだな」


 ドカドカ。

 アレクは静まり返る屋内へと踏み入る。


「すみません……お邪魔します……」


「おジャマしまーす」


 エリがそろりそろり。

 ココアがぴょーんと飛び込む。

 それから一行は階段を上った。


――ぴゅ~。


 屋根はあるも壁がなくなるここには風が吹き抜けた。

 風に髪をなでられるエリが外を望む。

 上方のロープは夜空の中、ずうっと向こうまで伸びる。

 柵に手を掛けのぞき見た光景は、ぱんだ亭の屋根裏部屋の窓から見る高さよりも高い。

 建物だと五、六階の窓からのそれっぽい。

 しかしながら、そのような階層の住まいは珍しくもある。


「ノッポさんくらいかなあ……」


 プジョーニの街では一際高い建築物のっぽな時計塔、通称ノッポさん。

 エリの目測だとそれになるようだ。


「どうやら、このカゴみたいなヤツに乗るみたいだぞ」


 物色もほどほどに、アレクが促す。

 足場(フロア)を横断する位置で停まる『運び舟』。

 先は船首のように尖るも、平べったい底ののっぺりした姿はカゴの形容が妥当だろうか。

 ロープに繋がる鉄柱に、浅い底。頑丈そうな分、乗り口も椅子らしきものもない簡素な乗り物。

 重装備の冒険者でも、整列して乗り込めば10~15人程度は運べる大きさ。


 そしてこの乗り物は、5000ルネの往復チケットを購入することで利用できた。

 本来なら、係員がそれを受付け乗り物に同乗し運用される。

 ただし、星々が綺麗に瞬く遅い時刻ともなれば、発着場は利用時間外となっていた……。


「ココアがいっちばーん。とーっ」


「ぬお、こらっ。チビコのくせに、俺を差し置いて勝手に乗り込むなっ。どりゃっ」


 ココアとアレクが競って乗り込む。

 『運び舟』は少しばかりぐらりぐらりと揺れた。


「ふむふむ。おそらくコイツが出発のレバ―だろう」


 船尾部にある制御装置が、わくわく顔のアレクの目に留まる。

 魔術回路を組み込む円筒状の鋼板(ブリキ)。その脇でニョキリと飛び出す取っ手。


「では、ガコンといってみるか」


「いってみるかー」


 愉しげな物言いにココアが輪を掛ける。

 宣言通りに、ガコンと上がるレバー。

 さすれば、駆動音とともに乗り物がゆっくり動き出す。


「ここ、管理している人とか――!? うわ、うわっ。待って、置いてかないでよっ」


 どてんと倒れ込みながらに、エリが慌てて飛び乗った。


――『運び舟』が夜空の航海へと旅立つ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ