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ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex――I 】……街でのひと騒動をズバんと解決する導入部分のお話です。
18/147

18 始まりのエピローグ ◆

気分はアイキャッチ◇

挿絵(By みてみん)




 なだらかな地形が色濃くなった道沿い.

 脇には低い背丈の茂みが並ぶ。

 人の肌を少しだけ冷やす夜の風が吹き抜けた街道に人の行き来はなく、ぽつんと西へ進む魔晶ランプの明かりがあるだけであった。


 カラカラ、ガラガラ。


 道に残るわだちをなぞる元奴隷商の馬車は、順調にその車輪を回す。

 二頭の馬の手綱を預かるエリ。

 汚れていた顔はいつもの綺麗な白さといつものハツラツとしたを取り戻していた。

 そして、その後ろでは荷車を独り占めするアレクが得意気な顔で講釈を垂れていた。


「自衛団のどいつかが馬車は東へと向かった言っていたからな。だがしかーし、髭面どもが山道を越えて先の街や村に向うことはあり得ないっ。……おいクサコ、何をボーっとしている」


「ほえ? ボーっとはしてないよ。ちゃんとお馬さんを真っ直ぐ走、らいたっ。なんでおでこに指ピンするのお。……アレクのすんごい痛いんだよ」


「『ええ!? なんで髭面どもは山道を越えらないんですか?』とお前が驚いて、俺へ聞き返す番だろうがっ。どうしてあいつらの居場所が分かったのか、お前が俺に尋ねたのだぞっ」


「ううんと、そうなんだけど……はふう。ええ!? どうして髭面さんたちは山道を越えらないんですか」


 エリは赤味を帯びる額をすりすり擦りしながらも、台本通りに問うた。


「なんだ、クサコは日暮れグマが夜行性というのを知らんのか。夜の山にはアイツらがわんさかいるからな。弱っちい髭面どもごときでは、山道を越えられんのだ。そんなこともわからんとは情けないヤツめ。だあはははは」


 痛快と言わんばかりに尖る歯を見せるアレクの頭の中では、半壊したカウンターにて喋るぱんだ亭店主ヨーコの姿があったことだろう。


 奴隷商が東へ向かったこと。

 夜間の山道を避けるためどこかで一夜を過ごすだろうこと。

 追われる者に働く身を隠そうとする心理などの条件から、エリが見張り塔で軟禁されている可能性が高いとヨーコはアレクに伝えていた。


「――昔はあの塔を冒険者の避難場所に使っていたらしいからな。もうあそこしか考えられんというわけだ」


「そうかあ……なるほど。アレクって意外と物知りなんだね」


「当然だろう。剣の腕だけでなく頭もキレる男が俺だからな。意外と物を知っている。ぬ? 待て。意外とはなんだ、このっ」


 今度は分厚い手のひらでバシリと後頭部を叩かれたエリであった……がしかし。


「お前……叩かれてニヤけるとは、キモち悪いヤツだな。アレか。そうアレだ。クサコはヘンタイというヤツでもあったか」


「違うよ。私ヘンタイさんじゃないよう……違うの。ええとね、なんかプジョーニの街の明かりが見えてきたら、ちょっと嬉しくなってそれで。えへへ」


 家路を急ぐ馬車の先。薄暗い景色にほのかな火の色が集まっていた。


「喜んでいるのだから、やはりヘンタイだろう。まあ、クサコのヘンタイ性などまったくもってどうでもいい」


「うう、ヘンタイ違うのに……」


「クサコは俺にまた(・・)1万ルネの借りを作ったのだからな。しっかり払えよ。それまでのがしはせんからな」


「逃げたりはしないよう……明日もお仕事しないといけないし、ヨーコさんからお給金もらったらちゃんと、あれ? また……”また”って?」


「さっき俺は髭面どもをぶっ飛ばした。するとまたクサコがついてきた。つまり俺はまたクサコを助けてしまったようだ。仕方がないので、クサコからはまたルネを巻き上げなければいけない」


 エリの顔がきょとんとしたものから、ハっとなれば、そこにあった唇がみゅうっと突き出すようにして伸びる。


「俺は時に優しさを見せる男だからな。いつかの時と同じ額にしておいてやったぞ。ありがたく思えよ。だあはははは」


 カラカラ、ガラガラ。ケラケラ。

 愉快な笑い声を乗せた馬車が夜の街道を通り、少女を帰るべき場所へと送るのであった。








ありがとうございました。(`・ω・´)ゞ


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