(129 Σ ――集え、七つの大罪。野郎だらけの合体!?)
ありがとうございます。
こちらはおまけ要素な「129β話」を元ネタにしたおまけのお話」です。
バットなエンドですが、楽しんでいただけましたら幸いです。(`・ω・´)ゞ
※
筋骨隆々の武闘家ノブナガ。
その彼が腕を組み待つ場所は、とある街の時計塔広場であった。
時計塔は、一度も故障することもなく百年の時を刻み続ける。
「たく、本当に来るんだろうな……」
「招待状通りなら、そうだろうね」
勇者アーサーがその美形で微笑み言う。
そして、その手にする招待状にはこう書かれていた。
【来たれ、七つの大罪。
我が名指しする七人の男が集まる時、
我、その集いし場所に現れん。
月の鵺盟主メアリー・ヌーより】
「実際来ちまった俺が言うのもなんだが、かなり胡散臭えよな」
ノブナガは自分の名前のある招待状を見て、ため息をついた。
――と、そこへ。
「これこれは、勇者アーサー様とその相棒とも評されるノブナガ様では、ございませんか」
ニョロんとした口ひげを生やす男が現れた。
「ワタクシ、名うての奴隸商ウーシーカンパニーの代表を務めるガンスざんす。以後お見知りおきいただければ、幸いざんす」
「残念だったな。アーサーは奴隸商が嫌いな男でよ、お前の世話になるつもりはねえってよ」
ノブナガがアーサに変わりにらみを利かせば、ガンスはあらぬ方へ。
すると、そこへ羽飾りとタイツ姿の男が近寄ってきた。
「う~ん、美形と噂の勇者アーサー。確かに美しくはあるね。でも、あはんっ、ボクのスバラシキそれには遠く及ばないけどね」
「なんだ、ありゃ」
「ゴライアス、もしくはボルザックのどちらかだろうね」
名前のリストからアーサーが推察した。
「ならば、あの者はゴライアスでござろうな」
「「うん?」」
勇者と武闘家が辺りをうかがう――もそばに声の主らしき人影は見当たらず。
「下でござる。ソレガシが”ボルザック”でござるからして」
足元には喋る蛙がいた。
「君は、蛙魔って呼ばれる魔族の者だね……」
「いかにも。されど、勇者アーサー。今ここで争うつもりはござらん。拙者の目的はここでなら、ヴァルヘルム殿にお会いできると馳せ参じたまで」
「なるほど、蛙のお目当ては竜王、俺達はメアリーってわけか。まあ、それならそれで、俺達も文句はねえよ」
そう言えば、ノブナガは次に『けどよ』とセリフを接いだ。
「さすがにあの竜王は、来ねえんじゃねえか? 来たら来たらで困るしよお、そもそも人間の呼び出しにいちいち応えてんなら、そりゃもう、魔王でもなんでもねえだろ」
「ふん。人族の分際で、知ったような口を利きおるわ」
後ろからの声に、ノブナガが飛び退き、アーサーが身構えた。
ちなみに蛙は、お辞儀をしていた。
「りゅ、竜王ヴァルヘルム! いつからそこにいやがった!?」
驚くノブナガの問いに、老人の姿をした竜王は関せずといった態度。
そうしたなか、アーサーが冷静な分析をつぶやく。
「僕とノブナガ、ガンスにゴライアス、そして、魔族のボルザックに竜王ヴァルヘルム。これで六人はそろったってことだね」
「ああ……。あとはあのムカつく野郎だけだ」
「ウルクアレク。彼がここに現れれば、その時メアリー・ヌー彼女も姿を表す」
そこには並々ならぬ決意が感じられた。
そして。
アーサーが決意を固めてから、ずいぶんと時間が過ぎ去った。
「たく、来ねえじゃねーか、あの野郎っ」
ノブナガが地面を蹴飛ばす。
――その時であった。
「ほんと、来てくれなかったようで、残念だわ」
その声は上からであった。
「七人の男達を合体させて、今世紀巨大人造体ヌエリオンを造る予定だったのに」
時計塔の最上部には、フード被る少女が立つ。
そして、にやりとした口元は後も告げた。
「時間切れ。あなた達はヌエリオンになることはできない。なぜなら、ここで死んでしまいそうだから」
そう言い放つ少女の背後に、影が浮かぶ。
その影は、竜王である老人のそれ。
「おい、アーサーっ。竜王が俺達より先におっ始めるつもりだっ」
時計塔の下では、ノブナガが武闘拳技を舞う。
「全く、こうして近づいてみればよく分かる。儂の鼻が曲がりそうな程に、主の”匂い”は汚れておるのお……」
「あら、レディに対してヒドいことをおっしゃるおじ様だこと」
少女が皮肉った直後、竜王は竜王たるその姿を開放した。
「そう、わたしに刃向かうつもりなのね」
黒竜。そして、勇者アーサーとノブナガ。
大陸屈指の猛者と盟主を名乗る少女が激突する――。
戦いの後に残るのは、荒れた大地であった。
広場にその面影はなかった。
そして、そこに、
――肉の塊が転がるだけであった。
木っ端微塵となった黒竜の肉塊。
すでにずんぶんと冷たい武闘家の肉体。
蛙の肉片。
さらには、肉片すら残さず消え去った奴隸商。
「他はああなのに。さすがだわ、勇者アーサー」
メアリーは足元で這いつくばる半身の男に言う。
「き、君は……何……者なんだ……どうして、僕……初めて使うあの神技……知っていた……んだ……」
それを最後の言葉に、アーサーが事切れた。
そこへ、男達の中で唯一生き残るゴライアスが駆け寄り、跪いた
「盟主メアリー、お怪我などはありませんか」
「そうね……怪我はないけど、また会えずじまいだったのが、少し気に病んでいるわ」
「ここに来なかった、ウルクアレクという男のことでしょうか」
「ええ。わたしの計画には不必要な存在だけれど、まるで、太陽と月のようにわたしと重なり合うことが決してない存在……」
その白い手が、フードを外す。
「今まで一度も出会えていない彼なのに、そう感じてしまう……。うふふふ、なんなのかしら……」
静かに笑う少女は、細めた瞳で空を見上げる。
そうして――。
少女の計画が進む先では、大陸受胎がその兆しを現すのであった。




