表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex― IV】……あれやこれやで王都オークションとかのパートです。
131/147

(129 Σ ――集え、七つの大罪。野郎だらけの合体!?)

ありがとうございます。

こちらはおまけ要素な「129β話」を元ネタにしたおまけのお話」です。

バットなエンドですが、楽しんでいただけましたら幸いです。(`・ω・´)ゞ


               ※


 筋骨隆々の武闘家ノブナガ。

 その彼が腕を組み待つ場所(ここ)は、とある街の時計塔広場であった。

 時計塔は、一度も故障することもなく百年の時を刻み続ける。


「たく、本当に来るんだろうな……」


「招待状通りなら、そうだろうね」


 勇者アーサーがその美形で微笑み言う。

 そして、その手にする招待状にはこう書かれていた。


【来たれ、七つの大罪。

 我が名指しする七人の男が集まる時、

 我、その集いし場所に現れん。


        月の鵺盟主メアリー・ヌーより】


「実際来ちまった俺が言うのもなんだが、かなり胡散臭えよな」


 ノブナガは自分の名前のある招待状を見て、ため息をついた。


――と、そこへ。


「これこれは、勇者アーサー様とその相棒とも評されるノブナガ様では、ございませんか」


 ニョロんとした口ひげを生やす男が現れた。


「ワタクシ、名うての奴隸商ウーシーカンパニーの代表を務めるガンスざんす。以後お見知りおきいただければ、幸いざんす」


「残念だったな。アーサーは奴隸商が嫌いな男でよ、お前の世話になるつもりはねえってよ」


 ノブナガがアーサに変わりにらみを利かせば、ガンスはあらぬ方へ。

 すると、そこへ羽飾りとタイツ姿の男が近寄ってきた。


「う~ん、美形と噂の勇者アーサー。確かに美しくはあるね。でも、あはんっ、ボクのスバラシキそれには遠く及ばないけどね」


「なんだ、ありゃ」


「ゴライアス、もしくはボルザックのどちらかだろうね」


 名前のリストからアーサーが推察した。


「ならば、あの者はゴライアスでござろうな」


「「うん?」」


 勇者と武闘家が辺りをうかがう――もそばに声の主らしき人影は見当たらず。


「下でござる。ソレガシが”ボルザック”でござるからして」


 足元には喋る蛙がいた。


「君は、蛙魔(アマ)って呼ばれる魔族の者だね……」


「いかにも。されど、勇者アーサー。今ここで争うつもりはござらん。拙者の目的はここでなら、ヴァルヘルム殿にお会いできると馳せ参じたまで」


「なるほど、蛙のお目当ては竜王、俺達はメアリーってわけか。まあ、それならそれで、俺達も文句はねえよ」


 そう言えば、ノブナガは次に『けどよ』とセリフを接いだ。


「さすがにあの竜王は、来ねえんじゃねえか? 来たら来たらで困るしよお、そもそも人間の呼び出しにいちいち応えてんなら、そりゃもう、魔王でもなんでもねえだろ」


「ふん。人族の分際で、知ったような口を利きおるわ」


 後ろからの声に、ノブナガが飛び退き、アーサーが身構えた。

 ちなみに蛙は、お辞儀をしていた。


「りゅ、竜王ヴァルヘルム! いつからそこにいやがった!?」


 驚くノブナガの問いに、老人の姿をした竜王は関せずといった態度。

 そうしたなか、アーサーが冷静な分析をつぶやく。


「僕とノブナガ、ガンスにゴライアス、そして、魔族のボルザックに竜王ヴァルヘルム。これで六人はそろったってことだね」


「ああ……。あとはあのムカつく野郎だけだ」


「ウルクアレク。彼がここに現れれば、その時メアリー・ヌー彼女も姿を表す」


 そこには並々ならぬ決意が感じられた。

 そして。

 アーサーが決意を固めてから、ずいぶんと時間が過ぎ去った。


「たく、来ねえじゃねーか、あの野郎っ」


 ノブナガが地面を蹴飛ばす。


――その時であった。


「ほんと、来てくれなかったようで、残念だわ」


 その声は上からであった。


「七人の男達を合体させて、今世紀巨大人造体ヌエリオンを造る予定だったのに」


 時計塔の最上部には、フード被る少女が立つ。

 そして、にやりとした口元は後も告げた。


「時間切れ。あなた達はヌエリオンになることはできない。なぜなら、ここで死んでしまいそうだから」


 そう言い放つ少女の背後に、影が浮かぶ。

 その影は、竜王である老人のそれ。


「おい、アーサーっ。竜王が俺達より先におっ始めるつもりだっ」


 時計塔の下では、ノブナガが武闘拳技を舞う。


「全く、こうして近づいてみればよく分かる。儂の鼻が曲がりそうな程に、主の”匂い”は汚れておるのお……」


「あら、レディに対してヒドいことをおっしゃるおじ様だこと」


 少女が皮肉った直後、竜王は竜王たるその姿を開放した。


「そう、わたしに刃向かうつもりなのね」


 黒竜。そして、勇者アーサーとノブナガ。

 大陸屈指の猛者と盟主を名乗る少女が激突する――。





 戦いの後に残るのは、荒れた大地であった。

 広場にその面影はなかった。

 そして、そこに、


――肉の塊が転がるだけであった。


 木っ端微塵となった黒竜の肉塊。

 すでにずんぶんと冷たい武闘家の肉体。

 蛙の肉片。

 さらには、肉片すら残さず消え去った奴隸商。


「他はああなのに。さすがだわ、勇者アーサー」


 メアリーは足元で這いつくばる半身の男に言う。


「き、君は……何……者なんだ……どうして、僕……初めて使うあの神技……知っていた……んだ……」


 それを最後の言葉に、アーサーが事切れた。

 そこへ、男達の中で唯一生き残るゴライアスが駆け寄り、(ひざまず)いた


「盟主メアリー、お怪我などはありませんか」


「そうね……怪我はないけど、また会えずじまいだったのが、少し気に病んでいるわ」


「ここに来なかった、ウルクアレクという男のことでしょうか」


「ええ。わたしの計画には不必要な存在だけれど、まるで、太陽と月のようにわたしと重なり合うことが決してない存在……」


 その白い手が、フードを外す。


今まで(・・・)一度も出会えていない彼なのに、そう感じてしまう……。うふふふ、なんなのかしら……」


 静かに笑う少女は、細めた瞳で空を見上げる。

 そうして――。

 少女の計画が進む先では、大陸受胎がその兆しを現すのであった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ