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ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex―III 】……魔王討伐編前段階のパートです。
114/147

114 エンドゲーム ②


――だが、短剣が人質を血に染めることはない。


 それは切り札(人質)を失い、自ら窮地に陥ることを意味する。

 よって、フランベンはギリギリのところで留まった――そう彼女(・・)には見えただろう。


 彼女とは、事の成り行きを見守っていた巫女、サクラ・ライブラ。

 もしサクラが、遠巻きの横からではなく真向かいからそうしていたなら、異なる見方をしていたはずだ。


 なぜなら、フランベンは計算高いゆえに、己の衝動を抑えたのではない。

 本能からの警告。

 意思に反して、身体が痺れたようにして固まってしまったのだ。


――殺気めく圧力。


 ビリビリと空気を震わせるその中では、短剣の刃を突き立てることができなかった。


「おい、ギョロ目。クサコがどうなろうと知ったことではない。だが、キサマごときが俺のクサコをどうこうできると思うなよ」


 重い声で淡々とした言動には、刀剣の持ち替えも行われた。

 血を流すアレクの右手――にもかかわらず、その利き手でしっかりと握りしめる。

 さすれば、おもむろに振りかぶる。


「俺が今すぐクシ刺しにしてやるから、身の程を知って死ね」


 アレクが大きく息を吸い込む。

 その様子に、尋常ではない反応を示すのがエリであった。


「うわあっ。うわああっ」


 体の自由がないながらに、首は右往左往、足をバタつかせ暴れだす。

 そんな厄介な人質を盾にして、フランベンは……じりじりと後退していた。

 狂気とも言える強い使命感と信念――とは裏腹な、気後れであろうか。


「小娘っ。ナナナ何を今更にいい、抵抗しようなどとおおッッ」


「だって、だってっ、このままだと、ビュンってアレクの剣が飛んできて危ないんだもんっ」


「ビュンではない、ズバンッ――だ! だからこそ、俺の必殺技は”ズバッシュ”と命名している。そして、このすんごい必殺技で、ギョロ目男をクシ刺しの刑にしてやろうというわけだっ」


 振りかざす刀剣がさらに後ろへ。

 ギギギと、弓を引くがごとく反り伸びる上体。

 グググと力が込められてゆく、全身の溜め。

 

 フランベンに、どれほど特別な攻撃なのかは推し量れない。

 しかし、繰り出されるであろうモノ(剣技)は容易に察する。

 アレクとエリの言動と、”投げナイフ”の特技がそうさせた。


 そして、その攻撃には懐疑的であった。


「不浄の戦士っ。お前、お前に、そんなことがでえええきるはずもない。人質の小娘を盾にいい、身を隠すこのフランベンを射止めるなどっ、不可能ッッ」


 投擲技(とうてきぎ)を身につけるからこそ、相手がどこを狙えるかをフランベンはよく知る。

 だからこそ、エリを上手く使い、その箇所を残しておくようなこともしない――のであったが。


「何が不可能なものか。クサコの盾ごときでは、俺のズバッシュは食い止められん。そのままクサコごとキサマがつら抜かれるだけだ」


「それは、それは、コココこの娘がどうなっても、構わないいいと言いたいのですかッッ」


「言っただろう。クサコがどうなろうと俺は知ったことではないっ」


「本当ですからっ。アレクに人質とか意味ないですからっ。だから、急いで逃げないと、逃げないとおお」


「くらあ、クサコっ。お前に、無駄口を叩く暇などないだろうがっ」


 チッ、と舌打ちをしたアレク。

 そしてすぐさま、ぐわっと瞳を大きくした。

 爆発しそうな力を溜める。その限度に達した模様だ。


「こんのおおお、バカ者めがっ」


 思いっきり振り抜かれた腕。


――そこから、凄まじい破壊力を秘めた刀剣が放たれた。


 アレク(いわ)く、ズバンッ――のそれは、ズドンッともズギューンッとも。

 また、矢のごときとも砲弾のごときとも言える勢いで、エリもろともフランベンを襲うのであった。




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