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ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex―III 】……魔王討伐編前段階のパートです。
113/147

113 エンドゲーム ①



「おい、くらあ、クサコっ」


 一喝(いっかつ)する声。

 間近でなかったにしろ、エリの耳をつんざく。


「なぜ、俺の指がこんなことになっているのだっ。どういうこと――、いいや、誰の仕業か、とっとと教えろっ。いいか。ヨーコが犯人だとしても隠ずヨーコがやったと言うのだぞっ」


 アレクは続けて、がるるる~と唸る。

 エリには釈然としない内容であっても、苛立ちはよく伝わる。

 そして、このままでは、世話になる店主へ危害が加えられてしまいそうだ……と不安させも伝えてくる。

 だからなのだろう。

 その閉ざしていた口を開くようだ。


「たぶん、私のために? アレクが自分で、人差し指を切断しました」


「そうか。やはりヨーコのヤツが包丁で……ぬん? 待て。クサコ、もう一度言ってみろ」


「ヨーコさんはまったく関係ないから。アレクがじ、ぶ、ん、で自分の指を、スパンって切ったんだよ?」


「なんと、俺が俺の手で俺の指を……そうだったのか……」


 声のトーンも低く。

 アレクは思いつめるようだった。


「とうとう、クサコの頭の中身も限界がきていたか。どうやら、腐りきってしまっていたようだな」


「うう。私がおかしいみたいになってるよお……本当のことなのに」


「ホントだろうがウソだろうが、ワケのわからんクサコに変わりはない。自分で自分の指を切り落としただと? 誰がそんなバカ者を極めるようなことをするというのだっ」


「だから、アレクが極めちゃったんですっ」


「ええい、クサコを相手にしたのが、そもそもの間違いであったか。コイツでは、ラチが明きそうにもない。……大体、俺はこんな場所で……はて? そういえば、いつの間にやら夜になっている……ような気もするぞ」


 時計塔も見える広場。

 アレクなら見覚えはあるだろうそこで、時間の経過には違和感を覚えるようだ。


 指輪の支配によって、その自我が完全に封じられてしまったのが夕暮れ前。

 なので、アレクの感覚では、数時間後の夜なのかもしれない――が、実際には三日ほどの空白があった。

 そんなアレクが、また何かにふと気づくようである。


「ところで、クサコよ」


「うん?」


「お前のほうは、後ろのギョロ目男から羽交い締めにされながら、こんなところで何をしているのだ」


「ええと……人質をやっています」


「やはりな。お前はとっ捕まってばかりの、どんくさいクサコだからな」


 その指摘に、エリは反論できないでいた。

 むしろ、『”人質慣れ”している気がしなくもないようなあ……』と前向きに向き合う。


 現にこうして、気持ちに余裕を持って人質をこなせている――。


 これもこの”慣れ”のおかげだろうと、エリは改めて感じたらしく、


「えへへ」


 と、少し得意げに微笑んでしまうだろうか。


――そんな(おり)


 青筋を立てる男の我慢が限界を超える。

 エリの背後ではこれでもかと言うほどに、フランベンが目を剥き血走らせていた。


「いヒイイッッ加減んんにいいい、しなさいいいいっ」


「ぬおっ。いきなりなんだコイツは!?」


「不浄の戦士っ。そして、小娘もっ。これはナナナなんの茶番、茶番っ、茶番んんンッッッ――」


 フランベンが(わめ)く。

 アレクをびくっとさせ、呆気に取らせるほどに。

 それから、怒りの矛先を人質に向けるだろうか。

 後ろから巻きつくフランベンの腕が、エリをきつく絞め上げた。


「うぎ……」


 エリが痛そうに抑え込れる。


「ジジジ時間稼ぎだろうとなんだろうと、お前はこのフランベンにいいっ、従うしかないのですよおお。それをそれを、この娘がどうなっても構わないとでもおおお。望み通りいいいっ、して差し上げてもいいのですよッッ」


――今にでも、首を()き切ってみせるっ。


 フィランベンが衝動に駆られた――。



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