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ウルクアレク  作者: かえる
【 Wolfalex―III 】……魔王討伐編前段階のパートです。
100/147

100 月たる鵺、フランベン ①




――盟主メアリー・ヌー。


 人心を集める彼女を、信奉者らは畏敬の念を抱きこうも(ささや)く。


 未来を見通せる聖女。

 もしくは、千年の時を生きる魔女――と。


 聖女であり魔女である彼女は、世界の救いを(うた)う。

 その彼女を盟主と仰ぐ組織がある。


 眠りにつく太陽の姿(アマンテラス)を、夜空の鏡に映したとされる――”月”。

 何者でもあって何者でもないとされる――”(ヌエ)”。

 この二つの言葉を用い、


――教団名は『月たる鵺』とつけられた。


 外部の者からすると、得体の知れない『月たる鵺』。

 そこに属する者は、数百人とも数千人とも言われている。

 また、暗躍の域を出ない教団の活動は表沙汰になることはなく、盟主を始めとした信奉者らが何を求め、何を目的にしているのかなど不明、不可解な点も多い。


――すなわちその実態、その勢力は不確かだった。


 しかしながら、教団の息が掛かる貴族や領主の有力者などの存在から、現行の社会に影響力を持つ組織と言えよう。


 そうした『月たる鵺』の教団員の姿が、プジョーニの街にあった。

 黒や紫の色を基調としたローブで全身を(おお)う出で立ち。

 素性を隠す彼らは、密かな使命を帯びて訪れていた。


――教団の役に立つ、強力な人材の確保。


 かいつまむと、優秀な人物を”教団へ勧誘する任務”である。

 ただし、盟主の力を用いる今回は、勧誘とは名ばかりのもの。

 なにしろ奴隷を越える強要性(・・・・・・・・・)をもって、教団へ奉仕させるのだから。


――『支配する世我の夢宝石マテリア・ドリーミーキャスト』。


 赤色や黒色が渦巻く宝石に、凝った金細工。

 この”魔法具の指輪”をハメる者は自我を失い、ただひたすら教団の意志に従うだけの人間となる。


――その傀儡くぐつとなるに相応しい人物がこの街にいた。


 教団が目星をつけたのは、ウルクともアレクとも呼ばれ、この一帯で悪名高い戦士。

 金にがめついなど人格に問題がある男のようだが、支配してしまえば(・・・・・・・・)それも関係ない。

 あえて言うのなら、人望がないところも都合が良いのかもしれないがしかし。

 むしろ重要なのは、自衛団でも歯が立たないという実力、手荒い奴隷商達を難なく駆逐した経歴――といった”戦闘能力の高さ”のほうであった。


――ゆえに数日前、教団員は戦士と接触した。


 そうしてあとは、盟主から賜った”魔法具の指輪”を指につけさせるだけ。

 実力行使では骨が折れる相手だ。

 しかしそれも、言葉巧みに『この指輪落としませんでしたか?』や『あなたは選ばれました。この幸運の指輪を差し上げます』と与えてやるだけで良いはず。


――おそらくは男の性格も幸いするだろう、誰にでもできる簡単な仕事(ミッション)だった。


 ところが……。


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