表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

4話 つまりはアーサーと一緒に地道な世界平和を(上)


 ウイシュヌ様に雄偉ある泣き土下座をかました私は、ラストラストチャンスとしてある命令を受けた。



「きみがアーサーと共に世界を救うのだ」

 意味不明だった。

 アーサーと共に? 世界を救う? 何を言っているのだろうか?


「アーサーはもう死んでしまいましたけど」

 アーサーとともに(死後の)世界を救うのだ、という遠回しの首切り宣言であるなら理解できる。許容はできない。したくない。死にたくない。


 しかし恐れていた深読みは杞憂だった。

 ウイシュヌ様はそばにある愛用の大鎌を手に取ることく話を進める。

 

「たしかに彼は死んだ。ログを見るに、毒キノコを食べて死んだらしい」

「え! 毒キノコで!」


 知らなかった。そんなしょーもない理由で死んだなんて。そして世界監視モニターに履歴チェック機能がついていたなんて。誰か教えてくれればよかったのに。てか、これまでのサボりもバレてたのかな?


 恨み落ち込み少しの不安状態の私を置き去りに、ウイシュヌ様は質問を投げかけてきた。


「彼は死んだ。しかしだね、ルウム君。我々は天界の住人だ。何かできることはないかな?」


 できること?


「うーん……アーサーを蘇らせるとか?」


 頭に浮かんだ適当な意見を述べると、同期のアホがとびかかって反論してきた。

「何を言ってるんだ! 死者を蘇らすなんて世界への冒涜だぞ! そんなことしたらアーサーの世界は間違いなく大騒乱だ! 少しは考えて発言しろ」

「はっ……!」


 確かに彼女の言うことはもっともだ。死者を生き返らせるなんて、世のことわりを完全に捻じ曲げる行為。そんなことをしたら世界が壊れてしまう。我々は世界の監視者として、強引な介入は避けなければならないのだった。小さく、地道な介入をもって安定に導かなければならないのだった。


 危ない危ない。この仕事をやる上での最低限のルールさえ忘れていた。ナイス指摘だ、同期よ。


 しかしウイシュヌ様、

「いや、ルウム君の意見でいい。我々の力をもってすれば死者の帰還など容易であるからな」

 ……同期のバーカ。私が正解じゃん。


 でもなんで? 生への冒涜という究極の介入が許されるなら、小さな介入を目指してきた私たちの努力の意味がなくなるのでは?


 同期も同じ疑問を抱いたらしい。


「でもアーサーを蘇らせたとして、世界は絶対に怒りますよ。そしたら人類を救う以前に世界が壊れてしまうような……」

「本来ならそうだ。天界には死者を蘇らせる力はあるが、権利がない。下界に散らばる数々の世界、そのどれもが我々の大きな介入を拒んでいるからな。死者の蘇生、転生はその最たるものだ」

「そうでしょう。だからアーサーを生き返らせるなんて……」

「しかし、今回のケースは特殊だ。考えてみたまえ。アーサーという少年の特異性を。異常を」


 アーサーの異常なところ……。


「圧倒的な力、とか?」

「そうだ。彼はあの世界において、並外れて強い」


 その通り。アーサーは最強の軍団と名高い魔王軍をはるかに凌駕した戦闘力を持っていた。

 強さランキングで表すと、


 1位 アーサー

    ・

    ・

    ・

 2位 魔王軍

    ・

 3位 アーサー以外の人間たち


 となっている。

 ひとつの軍団をはるかに凌ぐ力を、彼は単体で身につけていたのだ。見るからに人外である。


 改めて考えると、アーサーがいかに異常な存在かが分かる。あるいは彼がいかに人間にとっての英雄であったか。


 少しの違和感が沸いてきた。


「出来過ぎとは思わないか?」

 くすぐるようにウイシュヌ様がいった。

 違和感が鮮明になった。


「……異常だ」


 アーサーの異常性。それは人類、魔王軍、そしてアーサーによる一連のストーリーから汲み取れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ