第二王子の初恋 3
二人の王子が成長するにつれ、クリストファーとフェルディナントを比較する周囲の大人達の声はどんどん大きくなっていった。
周囲の大人達の影響もあって、クリストファーとフェルディナントの関係はギクシャクしたものとなっていった。
クリストファー自身は勉学も武芸もフェルディナントに劣っているなどこれっぽっちも思っていなかったが、周囲の人間はそうは思っていないようだった。
母親は毎日のようにフェルディナントを引き合いに出しては、クリストファーを叱責した。ただでさえ口うるさい母親に加えて、親戚の貴族達、身の回りの世話をする侍女や侍従、護衛の騎士達までクリストファーにあれやこれやと言ってくる。
彼らの中には本気でクリストファーを心配しているものもいたのかもしれない。しかし、それ以上にクリストファーを利用して第一王子派の貴族や側仕えよりも優位な立場になろうという魂胆が透けて見える人間が多かった。
ーこれならまだ、アンジェリーナの方がマシだ。
アンジェリーナはクリストファーに対して厳しくはあったが、クリストファーに非がない時に責め立てるようなことはしなかったし、叱責する場合もフェルディナントを引き合いに出すことはなかった。
その為、クリストファーは頻繁にアンジェリーナをお茶に誘っては、愚痴を溢した。
アンジェリーナはクリストファーの愚痴に、最後まで黙って耳を傾けた後、決まってこう言った。
「殿下が今、努力されていることは存じ上げております。それでも、周囲の大人達があれこれ言ってくるというのならば今以上に努力して、見返してやれば宜しいのです」
クリストファーとしては、自分に共感し慰めて欲しかった。しかし、アンジェリーナはそんな気持ちを見透かしたかのように、クリストファーを甘やかすようなことは言わず、厳しい言葉をかけるのだった。それが、クリストファーには不満だった。
アンジェリーナに愚痴を溢すことで少しは気分が晴れた。
だが、周囲の人間からのプレッシャーは日増しに大きくなっていき、クリストファーは次第に口煩い人間を自分の周囲から遠ざけるようになっていった。