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中編

「大丈夫かい、アンジェリーナ?」

フェルディナント王子は、自身に注がれる貴族たちの視線や、あからさまに敵意を向けてくるクリストファー王子らには目もくれず、真っ直ぐにアンジェリーナに歩み寄る。


「ええ、お気遣いありがとうございます」

「そうか、でも君を晒し者にしたクリストファーには痛い目にあってもらわないとね」

フェルディナント王子の気遣いに優雅に微笑んで答えるアンジェリーナ。

フェルディナント王子もまた、アンジェリーナに微笑み返すとクリストファー王子に向き直る。

男らしい顔立ちのクリストファー王子に対して、美しいと称されるフェルディナント王子はの顔には相変わらず笑みが浮かんでいたが、アンジェリーナに向けた柔らかな笑みとは異なり、多分に嘲りの感情が含まれていた。



「こんな公の場で、ローゼンクロイツ公爵家の令嬢を晒し者にするとはいったいどういう了見だい、クリストファー?」

「恐れながらフェルディナント殿下、アンジェリーナ様がシャルロッテ嬢にしたことを思えば、当然では?」

クリストファー王子にかわり内務大臣の息子が発言した途端、フェルディナント王子の表情から笑みが消えた。



「控えろ。私は君に発言を許した覚えはない」

ピシャリと言い放った声の冷たさに内務大臣の息子は青ざめ、慌てて謝罪の言葉を述べるとすごすごとクリストファー王子の後ろに引き下がった。

「クリストファー、先程の目撃者と名乗る彼らの証言の裏は取ったのか?」

静かに怒るフェルディナント王子に、クリストファー王子はすっかり気圧されてしまっている様子で、吃りながら答えた。

「しょ、証言の裏だと?彼等は皆、私に忠誠を尽くす貴族の子息や令嬢達だ。彼等を疑う必要などないではないか!」

「きちんと裏をとっていない証言でこんな愚かな真似をしでかしたのか?話にならないな」

眉間に深く皺を刻みながら、フェルディナント王子は言葉を続ける。

「彼らがアンジェリーナを陥れるために嘘の証言をしたという可能性を考えなかったのか?」



その言葉にクリストファー王子は一瞬、ハッとした表情を浮かべたが、すぐに反論に転じた。

「彼らが嘘をついている証拠でもあるというのか!?」

「もちろん、あるさ」

間髪いれず断言するフェルディナント王子。

それまで固唾を飲んでことの成りゆきを見守っていた貴族たちの間にざわめきが広がる。



フェルディナント王子は、顔色をなくして震える証言者たちに鋭い視線を向ける。

「君達は放課後の中庭でアンジェリーナがシャルロッテ孃に暴力を振るったと言っていたが、そんなことは絶対にありえない。アンジェリーナは毎日、放課後になると王妃教育のため登城しているから中庭にいるはずがないんだよ」

「そんな、まさか!!」

「クリストファー、お前はアンジェリーナとはクラスも違うし、普段から彼女と距離を置いているから知らないのだろうが、学院の授業が終わるとすぐに彼女は私と共に登城しているんだよ。私の証言が信じられないのであれば、馬車の御者や城の門番、侍女や侍従たちに聞いてみるがいい。勿論、アンジェリーナに王妃教育を施されている王妃陛下が一番の証人になって下さるだろう」



そうですよね、と玉座を見上げ同意を求めるフェルディナント王子に、王妃は鷹揚に頷いて答えた。

「私がアンジェリーナの潔白を保証いたしましょう。それに、先程五日前の昼と申しておりましたが、その日、アンジェリーナは学院にはおりませんよ。私と共に、ファイザード帝国の使者を招いた茶会に出席しておりましたからね」



「どうせ、アンジェリーナを婚約者の座から引摺りおろして自分達が成り代わろうと考えていたのだろうが、詰めが甘いな。虚言を以てローゼンクロイツ公爵家の令嬢を貶めようとしたこと、ばれればどうなるか勿論覚悟はしていたんだろうね?」

呆然と立ち竦むクリストファー王子の横で、内務大臣、近衛騎士団長の息子と証言者達ががっくりと膝をつく。

次々に謝罪の言葉を口にして許しを請うが、証言者達はフェルディナント王子の命令を受けた近衛騎士達によって引っ立てられていった。

ローゼンクロイツ公爵家から王家に嫁いだ王妃は、アンジェリーナの叔母にあたり、彼女のことを大層可愛がっていた。王妃の怒りをかった彼等は高位の貴族といえども厳しい処分は免れないだろう。



「クリストファー、お前はアンジェリーナに対して未来の王妃に相応しくないと言ったが、お前自信はどうなんだ?確かに、お前は勉学も武芸も優秀だが、周囲の人間の言葉を鵜呑みにして無実の人間を糾弾するなど、お前の方こそ未来の王に相応しくないのではないか?」

フェルディナント王子の言葉に、クリストファー王子は反論もできず唇を噛み締めながら俯く。



「色恋に溺れて自ら王太子の座を捨てるとは愚かだな。今回の出来事は全て次期王太子を私とお前、どちらにするか決めるために両陛下とアンジェリーナ、そしてシャルロッテ孃が仕組んだことだと気づかなかったのか、クリストファー?」






あと、もう少し続きます。

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