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龍の姫に恋してから、俺の不良ライフが変なんです!  作者: @眠り豆
第三話 隣のあの娘(コ)は小悪魔ちゃん
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12・きつ姐さんもご乱心?

 ──ショッピングモールの人込みの中、先輩トリオを探していたら、


「よう、楽しそうだな。デートか? コラ」


 私服だったせいか、不良(笑)に絡まれた。


「七尾さん、なにやってんスか」

「うっせぇし、お前に関係ないし」

「わかりました。じゃあ行こうか、紫乃花さん」

「はい」

「ちょ!」


 七尾さんが、紫乃花さんのジャケットの裾をつかむ。


「聞けよ!」

「うっす」

「申し訳ありません、七尾先輩。わたしたち大事な用事があるので、お早めに済ませていただけますか?」

「冷たいな、お前ら。まあ、いい。すぐ済むよ。あー……猿藤先輩見なかったか?」

「待ち合わせですか?」


 俺は七尾さんの服装を確認した。

 こないだ紫乃花さん家で着ていた、オレンジのストラップレスキャミソールと黄色いショートパンツ姿だ。

 高校に入ってから女性の服は買ってないと聞いて、紫乃花さんが進呈したと聞いている。

 七尾さんは足が綺麗だから、ベストなチョイスだろう。

 少し寂しい胸元は派手なアクセで誤魔化している。さすが女子だな。

 ワンピース好きの紫乃花さんが、ぱん、と両手を打ち合わせた。


「あら、素敵。デートですか? 七尾先輩、ご自分で猿藤先輩に告白なさったのですね」

「おめでとうございます」


 良かった良かった。

 恋する乙女ってのはすげぇな。

 恋愛感情を打ち明けるなんて考えただけで心臓止まりそうなのに、七尾さんは性別詐称まで告白したんだ。俺みてぇなヘタレには到底真似できない。

 ゴリ先輩は甘いの嫌いじゃなかったから、月曜日にお祝いのケーキでも作って行こうかな、なんて思っていたら、七尾さんは悲痛な面持ちで首を横に振る。


「違ぇよ」


 俺と紫乃花さんは視線を交わし合った。

 あんまり聞きたくねぇが、一応確認しておこうか、後輩として。


「……ストーキングっすか?」

「いくら好きでも、それはどうかと思います」

「違ぇし!」

「ああ、偶然を装って会うってわけっすね。だったら、いいんじゃないスか? でも俺たちゴリ先輩見てねぇっす。今日は来てないかもしんないスね」

「来てるよ。猿藤先輩、毎月ここに来るんだ。あんな女のために」

「来るのがわかっていて……やっぱりストーキングですか、七尾先輩?」

「違うってば! 見てないんだったらいいよ。電話してもつながらないから、ちょっと心配なだけだ」

「映画でも観てるんじゃないスか。俺や洋にー……先輩もかけたんスけど、つながりませんでした」

「ヒロ番長が猿藤先輩に? なんかあったのか?」


 七尾さんは妖狐で、ゴリ先輩の腹心として番長の仕事も手伝ってる。

 事情を話してもいいんだろうか。

 俺の表情を見て、七尾さんは頷いた。


「ああ、そうだな。事情にもよるか。自分で聞いてみるから、ヒロ番長の居場所教えてくれよ。それも秘密にしろって言われてんの?」


 俺は首を横に振った。

 てか、画像女のことも口止めはされてない。

 もうすでにネットでは話題になっているんだと。


「洋先輩は上のフードコートでタコ焼き食ってます」

「わかった。ありがとな」


 片手を振って、七尾さんは階段のほうへ向かっていった。

 ちなみにタコ焼きは紅太の要望だ。そんなに食いたかったのか、アイツ。

 七尾さんを見送る紫乃花さんが複雑そうな顔をしている。


「どうしたんだ?」

「勇気さま、これってストーカーほう助に当たらないでしょうか?」

「だ、大丈夫だと思うぜ?」


 それより俺は、ゴリ先輩の行動のほうが心配だった。

 七尾さんの口調からして、会ってんのはたぶん例の幼なじみだろう。

 あんな真似されたのに、毎月会ってるってのはどうなんだ。

 いいように利用されてる姿しか想像できねぇよ。

 クイズ番組でたまに出てくるメッシーやアッシーとやらにされてんじゃね?

 ゴリ先輩誕生日早いから、ゴールデンウィークに四輪の免許取ってたし。

 とか思いつつ、ゴリ先輩を笑う気にはなれなかった。

 恋しちまったら、どうしようもねぇんだよな。

 好きな相手のためなら、なんだってしてやりたくなるもんだ。

 俺の視線に気づいて、紫乃花さんが首を傾げる。


「勇気さま?」

「あ、いや、今日はなんか電話のつながらねぇ日だと思ってな」


 俺は先輩トリオの連絡先を知らないが、紅太は知っている。

 別れる前に事情をボカしてかけてもらったんだけど、それもやっぱりつながらなかった。

 辺りを見回せば、つながらない電話に毒づいてるヤツが結構いる。


「つっても、ここは元からつながりにくい場所なんだけどな」

「人も霊脈も多いですからねえ」


 霊力と電力、代用できるくらいよく似た力は互いに影響し合う。

 ホラー映画で、悪霊出現の前に電化製品がおかしくなるのは、ある意味自然なことだった。

 そういやさっきのクズは、フツーに動画再生してたな。

 ネットの保管庫じゃなくて、自分の機体に保存してたのかね。

 七尾さんのストーカー疑惑やゴリ先輩のアッシー問題は置いといて、俺と紫乃花さんは先輩トリオ探しを再開した。

 てか七尾さん、ゴリ先輩がほかの女子といるところに乗り込む気なのか?

 ゴリ先輩と幼なじみ女子の過去を詳しく話してくれたのは、ご本人ではなく七尾さんだった。ゴリ先輩は、フラれたんじゃよ、と笑ってただけだ。

 七尾さん、自分で調べたのかなあ。

 だよな。たとえ七尾さんが相手でも、だれかを悪者にすることになる話をするゴリ先輩じゃねぇ。

 ……止めたほうが良かったかな。

 ぼんやり後悔していたら、紫乃花さんが声を上げた。

 ちかくの路地を指差している。


「勇気さま、あちらに!」


 俺は頷いて、彼女の示す場所へと向かった。

 今の優先順位はこっちのほうが高い。

 それに女子の争いは、男が首突っ込むと余計ややこしくなるもんだ。

 あっちはゴリ先輩に任せよう。

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