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龍の姫に恋してから、俺の不良ライフが変なんです!  作者: @眠り豆
第三話 隣のあの娘(コ)は小悪魔ちゃん
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9・先輩トリオご乱心!

 紅太と流がカードを買い終わったら、洋にーちゃんから俺のケータイに連絡が入るはずだった。

 けど、俺と紫乃花さんが和スイーツを食い終わってもケータイは鳴らねぇ。

 なにやってんだ、あのガキどもは。

 中が見えないパックを前に、手のひらかざしたりしてたよなー。

 そういや紅太は龍神の坊ちゃんだ。透視能力でもあんのかね。

 って、あったらとっくにレアリティの高いカードゲットしてるわな。

 そんで、俺もなにやってんのかなあ。

 結局まだ洋にーちゃんとの関係は聞けてない。

 てかどう聞きゃいいんだ?

 ──和スイーツの店は和食プレート定食も人気だ。

 お昼が近づいて混んできたんで、俺たちは店を出た。


「今度は定食も食べに来ようや。ここの揚げ出し豆腐美味ぇんだぜ」


 カードショップへ戻りながら言ってみたが、紫乃花さんは乗り気でない。


「んー……ご飯は、勇気さまが作ってくださったものが一番美味しいと思います。お菓子も、この前のクッキーがすごく美味しかったですし」

「……そうか」


 もー! これやっぱそうなんじゃねぇの?

 俺のこと好きってか、俺に惚れ込んでるってか……ん? 俺の料理に夢中なだけだったり?


「勇気さま?」

「お、おう」


 ヤベ、鼻の下伸びてた?

 紫乃花さんは、そっと俺に寄り添ってきた。

 なにコレ、なんなんだよ!

 か、肩とか抱くべき? 腰か? 腰に手を回すのかっ?

 ふわあ、イイ匂い。長い黒髪が揺れるたびに漂うけど、シャンプーの匂いだけじゃねぇんだよなあ。

 細い指が近くの路地を指差した。


「あちらにお三方が」

「へ?」


 いつつのストリートのところどころに、地下駐車場への入り口がある。

 店舗の横や裏の路地にあって、ちっとわかりにくい。

 まあこういうとこは景観も大事だしな。

 それに少々わかりにくくても問題はねぇ。

 わざわざわかりにくい入り口から降りなくても、上の階に上がって、中央広場を見下ろす吹き抜けの辺りにあるエレベータを使えば駐車場に直行できる。一階にゃ停まらねぇけどな。

 一階と上の階は、さっきも使ったエスカレータといくつかの階段でつながってる。

 それはともかく紫乃花さんは、進行方向にある路地に先輩トリオが入るのを見たらしい。まだ四輪の免許持ってねぇと思うんだが……二輪かな。

 紫乃花さんは眉間に皺を寄せている。


「どうした?」

「……以前ご迷惑をおかけしたことですし、あの方々を疑うような真似はしたくないのですが、あちらから邪気を感じるのです」

「邪気?」

「このように人の多い場所では発生して当然なのですけれど、なにか……おかしいのです。ここで発生したのではなくて……持ち歩いている?」


 彼女は首を傾げた。

 自分が感じていることを上手く表現できないみてぇだ。


「変に考えるより、本人たちに確認してみりゃいいんじゃね? 俺たち、あの人たちのアニキとアネゴらしいし」


 紫乃花さんが吹き出した。


「そうですね。もしかしたら、お三方がどこかで悪霊か呪いを拾ってしまったのかもしれませんわ。もしそうなら、わたしがお力になります」


 悪霊や呪いって、そんな簡単に落ちてるものなんか。

 世の中、油断できねぇな。

 思いながら、俺は紫乃花さんと三人が入った路地を覗きこんだ。

 罵声が耳に飛び込んでくる。


「ようよう! 俺らなんか難しいこと言ってる?」

「そのスマホを貸してくれりゃいいんだよ!」

「おら、寄こせよ!」


 ……カツアゲ?

 制服姿の三人が、地下駐車場へ続く扉の前の暗い空間で見知らぬ男を取り囲んでいた。いつもの銀のトゲトゲアクセが、今日は妙に凶悪に見える。

 ウソだろ? そりゃ俺も先輩トリオが紫乃花さんたちと一緒にいたとき、絡んでんのかと思ったけどよ、ありゃ誤解だったじゃねぇか。

 接点できてわかった、アンタたち不良とは名ばかりのただのア……あー、のん気ものだろ?


「「「あ」」」


 俺と紫乃花さんの出現に先輩トリオが硬直した。

 その隙に、スマホを持った見知らぬ男が路地から飛び出す。

 無言で俯く三人に、俺は尋ねた。


「なにしてんスか?」


 俺から目を逸らし、いつも間の抜けた発言をする先輩が口を開いた。


「自分のスマホ忘れたんで、借りようと思っただけっす」


 ほかのふたりが彼をつつく。

 小声で話しかけているのが聞こえた。


「……お、おい」

「……アニキたちにも相談してみたらどうだ?」


 最初に話したひとりは、唇を噛んで首を横に振る。

 溜息をついて、ふたりが俺たちを見た。


「そういうことっす」

「すんません、失礼します」

「……」


 三人も路地を出て俺たちから離れていく。

 引き止めようにも、なにが起こっていたのか、はっきりしたことはわかってねぇ。マジでカツアゲしてたのか? 信じらんねぇんだけど。

 紫乃花さんが俺のシャツの裾をつかんでる。

 なんだかとても苦しそうな表情だ。

 いつも潤んだような瞳が、今は本当に涙ぐんでいる。


「……勇気さま」

「紫乃花さん、大丈夫か?」

「わたし、わたしは大丈夫です。さっきすれ違ったときわかりました。邪気を発していたのは、お三方に絡まれていた殿方のほうです。あの機械、スマホの中に、『なにか』がいました!」

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