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1話~英雄佳人と相手にされない不吉な話~

やっつけで書いてるのでどこかで大幅修正入るかも知れません。

その際はすでにお読み頂いた方には申し訳ありませんが作品全体の品質向上のためご協力お願いします。

こんな作者ですみませんm(;∇;)m

         Ⅰ


 アルフォード帝国、帝都。

 そこは人口30万人を超える大陸有数の大都市。



 4つの強国それぞれが周りの小国を飲み込み属国として支配し、力の均衡が安定した大陸。小さな小競り合いは年に数回あれど、大きな戦争はここ20年以上起きていない。平和とも呼べる場所であった。


 

 商人達の呼び込みの声が飛び交う活気のあふれるこの街を、一人の男が歩いていた。その姿は中性的で美しい。細身の体型にすらりとした長い手足に、キメの細かい黒髪を後ろに纏めたポニーテールという姿はまるで女のようだ。男装の麗人とも思えるもので、男性からも女性からも熱い視線を集めるには十分な容姿だった。



 しかしその格好は元の容姿に比べていささか地味といえた。黒のインナーに胸の部分だけを守る革の軽鎧。市販されている大量生産された鋳造製の安い両刃の長剣。駆け出しの冒険者のような姿だった。



 しかし男の足取りは悠然としたものだ。そこに新人らしさは感じない。中性的な美しい外見と、それにそぐわないニュービ―を思わせる安価な装備品。そしてそれとは正反対の堂々とした立ち居振る舞い。そんなちぐはぐな組み合わせが周りに不思議な印象を与えた。





 男が大通りにさしかかると喧騒はより大きなものとなった。この街は他に比べ賑わいの盛んな所ではあるが普段からここまで大きな賑わいは滅多にない。だからこの盛り上がりには理由があった。



 男が人々の視線の先に眼を向けるとそこにはきらびやかな装飾品に包まれた男と男を守る全身鎧の騎士が十数人。剣と杖が交差する赤い王家の旗が馬車には掲げられていた。若さから見て王子あたりだろうか。



 王子と見られる男は絢爛豪華な馬車の中から民衆に手を振っていた。その所作に民の盛り上がりはより大きくなる。この男の人気がこの短い間でうかがえる。民は大通りの両橋に集まり、馬車へと熱い声援を送る。しかしそんな中、不自然な動きを見せ始める者達がいた。皆一様に目立たない格好に身を包み、いつの間にか顔の半分を布で覆い隠すように巻いていた。―――暗殺者。



 いつの時代も、どの場所でも国の重鎮は狙われる立場にある。それはどこに行っても変わらない。この国の王子も例外ではなかった。



 民衆達にまぎれ、数人の暗殺者たちが行動を開始する。熱の沸騰しきった民衆は気づかない。ここ最近の平和に慣れた騎士も油断をしているのか、気づいた時にはすでに馬車は包囲されていた。ようやく異常に気付いた近衛の騎士はあわてたように号令とともに武器を構えた。



 激しい金属音が鳴り響く。暗殺者の大ぶりなナイフと騎士の長剣がぶつかりせめぎ合う。その光景は馬車の周りで起きていた。その音のすぐ後に民衆の悲鳴が上がった。場は一気に騒然となり、パニックと化した。王子は馬車の中のお付の騎士に守られるようにやや強引に馬車の中へと引きずりこまれた。



 騎士たちは苦戦を繰り広げていた。いくら平和であってもこの国の兵の質は高い。その中でも王子付きの騎士が弱いわけがなかった。暗殺者が手ごわいのだ。



 数は騎士側が多く二人がかりで抑え込んでいるところがあるくらいだ。それでも暗殺者達は数や装備の不利を感じさせることなく戦いを演じていた。そのうえ暗殺者側は皆どこか余裕が感じられた。



 これほど大きな行動には必ず緊張が生じるはずだが、暗殺者達の顔は涼しい。捕まれば死刑は免れないにも関わらずだ。


 

 均衡はなかなか崩れない。このまま持ちこたえればすぐに応援が来る。ここは王家のお膝元、後数分もしないうちに精強な騎士が多くやってくるだろう。それまで持ちこたえればこちらの勝利といえた。



 しかしその拮抗は一人の騎士の負傷によってあっけなく崩れた。穴を抜いた一人の暗殺者が一目散に王子のいる馬車へと走る。馬車の扉を破壊し、中の騎士もあっという間に昏倒させ、その凶刃を王子に向けた。



 その刃をなんとかよける事のできた王子だが、しかし馬車から転げ落ちてしまう。王宮で剣技を学んだ身ではあったが、実戦経験のない若人では腰に携える装飾過多な剣は文字通りお飾りでしかなかった。腰が抜け、地面にへたり込んだ王子は、死の刃を遠ざける事が出来ない。再び振り下ろされる短刀から思わず目をそらしてしまう。死を覚悟した。耳元で硬質な金属音が響いた。――――――金属音?




 一向に訪れない痛みと自身の耳元で響いた金属音につられ眼をゆっくりと開いた。そこには神々しいまでの麗人が立っていた。こんな状況であるにも関わらず思わず見とれてしまうほどだ。ふわりと舞う後ろにまとめられた長髪。エルフを連想させる中性的な美しい容姿。王子の見た横顔からうかがえる右目には強い意志を感じた。



 「大丈夫?」



 麗人は鈴のような声でそう尋ねた。



 「た、助かった。ありがとう。貴方は?」



 王子は困惑するもなんとか返事をすることができた。



 「まぁ、挨拶も大事ではあるけど、それはまたあとでね」



 麗人はそう答えると暗殺者へと向き直る。



 「やあ、ずいぶんお祭りが好きみたいじゃないか。けど少しハメを外しすぎじゃないか?」



 その口調はかなり軽いものだった。まるで知り合いに話しかけるように気さくで場の雰囲気とはまるで違う。



 しかし暗殺者は動じることなく再び構えた。



 麗人と暗殺者が剣を交差させる。何度も長剣と短刀が交わり、剣戟を奏でる。先程までの余裕は暗殺者の男には微塵もなかった。まるで予想していなかったと麗人に訴えかけるような目線を送る。



 確かに麗人は強かった。その細身の腕からは信じられないような速度で長剣を操り、容赦なく暗殺者の男の体に浅い切傷を刻んでいく。精強な騎士数人がかりで抑え込むのがやっとだった暗殺者の男を微笑み混じりでいなしていく。



 「そんなもの?訓練が足りないんじゃないの?」



 軽い挑発だった。当然こんなことで動じるほど暗殺者の男は柔なものではないが、しかし暗殺者の眼からすこし悲しそうな感情を王子は感じ取った。自分の力が、こんな戦いに向いていなさそうな体の者に押されているのがショックなのか、または任務遂行が失敗に終わりそうなのが怖いのか。この時の王子には知り得ないことだった。



 何度か剣戟の音が響いたあとようやく応援が駆けつけてきた。



 応援の駆けつけるのを察知した暗殺者達は後退を始める。戦いの最中よりも身軽な体さばきで、あっという間に離れて行ってしまう。麗人と対峙していた男は少し遅れて後退を始めるが、麗人はそれを許さない。今度こそ男の眼にはくっきりと驚愕が浮かんだ。



 「そう簡単には逃がさないよ」



 いたずらめいた声音で剣をふるう。男は退避しようと翻していた体を慌てて麗人に向け直すとすでに迫っていた剣に短刀を合わせ防ぎきる。その顔には信じられないと言いたげな眼が王子には印象的に映った。



 「やればできるじゃん」



 麗人はどこか満足げにつぶやくとさらに剣を振りかぶる。



 「くっ……!」



 男の口から思わず苦悶の声が漏れる。このままでは応援の部隊が来てしまう。そうなってしまったら逃げるのは不可能だ。



 男は懐から急いで何かを取り出した。それは暗い銀の色をした鉄の塊だった。男は何かを呟くと同時にその塊を強く握った。その瞬間あたりが強烈な光に包まれた。



 対峙した麗人も、腰を抜かしたままの王子も、逃げずに残った野次馬も目を開くのはままならなかった。それは一瞬では収まらず三呼吸分程度の時間続いた。その時間は暗殺者の男が逃げ切るには十分だった。光が収まった大通りには黒装束の人間は誰一人としていなかった。



 「……」



 麗人は端正な顔の眉間にしわを寄せ不快をあらわにしていた。



 歓声があがった。時間を巻き戻すかのように場の熱は再燃し、混乱一色だった雰囲気は一転した。残った野次馬は口々に麗人に賞賛を送る。一番混乱していた王子は、はっと我に戻り立ちあがると咳払いで声の調子を整える。そして立ちつくしていた麗人に声をかけた。



 「私の命を救っていただき感謝する。本当に助かったよ。ありがとう。」



 「いえ、一人の武人として人助けをするのは当然のことですから気にしないでください」



 麗人は先程の表情とは打って変わって再び微笑みの表情に戻り口調も丁寧なものに変わっていた。その柔らかな表情と鈴のような綺麗な声に王子はどきりとした。表情に出ないようにポーカーフェイスを努めたが、あまり自信はなかった。



 「殿下!」 



 数人の騎士が王子に駆け寄る。



 「お怪我はありませんか!」



 「あぁ、なんとかね。だけどこの方が助けに入ってくれなければ私は今頃、賊の凶刃で命を落としていたよ」



 王子は命の恩人である名も知らぬ麗人に向き直る。数人の騎士は麗人の方に顔を向けると敬礼のポーズをとる。



 「この度は殿下の御命を救っていただき感謝の言葉もありません」 



 この麗人がいなければ王子の命は今頃どうなっていたか。騎士たちは自分達が間に合わなかったことを強く後悔し、そして相応の罰を受けていただろう。いや、王子の命が結果的に助かったとはいえ罰は免れないかもしれない。少なくとも警備の責任者はその責任を取らされる形になるはずだ。



 「すまないがお名前をお聞かせ頂けないだろうか」



 王子にそう尋ねられると麗人は腰を折り自身の名前を口にする。



 「私はメレスと申します。冒険者をやっております。以後お見知りおきを」



 麗人の口調は慇懃なものへとかわり、その態度もとても丁寧で王族に対し相応しいものだった。



 「もう知っているかもしれないが、私はこの国の第3王子、カーティス・メイフィールド・アルフォード。今回は本当に助かった。この礼をしっかりと返したい。よろしければ王城まで来てくれないだろうか」



 「身に余る光栄ではありますが殿下がそうおっしゃるのでしたら私に断る理由はありません」



 「ありがとう。ではよろしくお願いするよ」



 王子は朗らかに礼を言うと手を差し伸べた。



 「喜んで」



 メレスはカーティスの手を取り、握手を交わした。



           Ⅱ



 メレスはアルフォードの王城の一室にいた。カーティス王子を助けた事に対し、カーティス王子と現国王が礼を述べるべく、叙勲式が開かれるのだ。



 叙勲式なんて一冒険者からしたら一族皆が誇れるほどの名誉ではあるが、王族や国の重鎮である高官達が多く集まる式典の主役は緊張なんて言葉では表せない程の重圧である。しかしそんな一般市民には荷が勝ちすぎる祭典であるにも関わらずメレスの表情は柔らかい。緊張をかけらも感じさせないものだった。



 部屋の扉がノックされ、この王城の騎士が入ってくる。その騎士から準備が整ったことを伝えられ、メレスは立ち上がり騎士の先導のもと玉座へと向かう。



 メレスの待機していた部屋からしばらく歩き、大きな扉を前に立ち止まる。金と赤を基調とした華美な扉は荘厳なものだった。



ゆっくりとその扉が開いた。



 その扉が開ききると落ち着いた足取りで玉座の間へと足を踏み込む。武官や文官達が部屋の左右20人前後並んでいた。その数が並んでところで部屋の解放感を少しもにじませない程にこの玉座は広かった。



 玉座へと続く階段から数メートル離れた位置でメレスは立ち止まる。メレスが立ち止まりしばらくした後、玉座の左手から四人の人物が出てきた。



 王冠をかぶる者。ティアラを身につける者。屈強な体をした若者。そして三日前に助けた王子。それぞれが現国王とその王妃、そしてその息子である王子二人、第一王子と第三王子のカーティスだ。メレスはそのもの達が入ってくると同時に膝をつき頭を垂れる。四人の王族が椅子に座る。



「面をあげよ」



 現国王は厳かな声音でそう告げる。その言葉通りにメレスは頭をあげる。



「今回は我が息子の命を救ってもらったことを感謝する。そして今回はそなたに褒美として金貨と勲章を授けよう」



そう言って片手をあげると後ろに控えていた執事が階段をおり始め、メレスの前で立ち止まると膝をついたままのメレスの首に勲章をかけた。それは赤く王家の家紋に近いデザインの勲章だった。勲章の中でも高い位置につく名誉ある勲章だった。



「ありがたきしあわせ。この勲章は我が家宝とさせていただきます」



メレスはそう言うと再び頭を下げる。



「うむ、それでだ。そなたは冒険者と聞いているが、国に仕える気はないか?そなたの腕前は伝え聞いておる。ふがいない事だが、我が国の騎士達が押さえ込む事の出来なかった手練を単身で追い払ったそうではないか。それほどの実力があるのならこちらでも高い地位を約束しよう」



 国王は自身の兵士が敵わなかった暗殺者を余裕をもって追い払うことに成功したメレスを自軍に引き込もうとした。確かにメレスの戦力は大きい。単純計算で精鋭騎士二人分以上の戦力になる。



 しかも余力を残していたことを考えればそれ以上の戦力も期待できるからだ。しかしそれも方便でしかない。国王が目を付けたのはその美貌と洗練された礼義作法だった。



  中性的な容姿は目の肥えた国王であっても目が眩むものであり、この国とは少し違う礼義作法は堂に入り、美しく洗練されたものだった。そこから考えられる事は違う国の高貴な生まれの者。つまり貴族の出身ではないかという答えだった。



 他国の貴族の血をむやみに取り入れるのは危険だが、その国とのパイプを作るきっかけにもなる。そうでなくてもこの美貌だ。ぜひ王家の血に入れたいと考えている。あわよくば王子の誰かとくっつかないかと考えての提案だった。



「もったいなきお言葉。身に余る光栄でございます。しかし私は剣士としてまだまだ未熟者でございます。そして粗野な一冒険者でもあります。高貴な者たちがいらっしゃる所での働きは私には少々荷が重いものです。大変恐縮ではございますが今回のお誘いお断りさせていただきます」



 しかしメレスにはこの国に仕える気はなかった。その返答に国王は表情を変えないが確かな落胆があった。怒りは無いが周りの臣下は憤っている者も多く見られる。



 名誉なことを蹴ったメレスをよく思わない者は確かにいた。中でもその表情をするものは武官に多く見られる。同じ戦士としてメレスに強い羨望を抱いたからだろう。



「ふむ。我が息子の命の恩人に無理な事は言えないな。わかった。そなたを取り入れるのはあきらめよう」



 強く出ることのできない国王は潔く引いた。これが暴君のような王ならメレスは殺されていたかもしれない。それほどまでに国王という立場は後を考えなければなんでも出来てしまうのだ。



 しかしそういった君主は必ずと言っていいほど身を滅ぼす。現国王はそこまで愚かではなかった。王家の者を救った英雄を強引にどうにかすればそれは民や臣下からの信頼の失墜につながるからだ。



 「であるならばひとつそなたに頼みたいことがあるのだ」



 「はい。頼みとは一体何でしょうか?私でできる事でしたら微力ながら協力いたします」



 「数日後に隣国に訪問するのだがその護衛を頼みたい。当然報酬は十分な額用意しよう。ちなみに訪問に向かわせるのはカーティスだ」



 「承りました。カーティス王子をこの命に代えてもお守りいたします」



 「受けてくれるか。感謝する。」



 メレスはカーティスの護衛を快く引き受けた。

 その後受勲式は順調に事が進み、一時間を少し過ぎたあたりようやく終わった。そして場所を別室へ移し護衛任務詳しい話を武官から聞かされ打ち合わせをした。解放されたのは陽が傾き始めたころだった。





           Ⅲ

 「疲れたぁぁーー」



 ――ボフンッ

 


メレスはベッドに向かってダイブした。仰向けのまま枕に顔を押し付けてしゃべる姿は王城に居た時の清廉な仕草からは想像できない。



 「あああ、」



 昼間には面倒な戦闘を、そのあとは堅苦しい謁見を。そして任務の日付や目的、詳しい報酬などの確認。面倒な事を人一倍嫌うメレスには今日一日は濃厚すぎた。



 これなら高ランク指定のモンスターと戦っていた方がずっといい。戦闘の方がずっと気が楽だ。



 あんな形式張った式典や高官との難しい言葉を織り交ぜた会話など、メレスはよく耐えたと自分を褒め称えたい気持だった。そもそも周りの視線が余りに卑しいのだ。特に国王と第一王子のあの粘つくような目には辟易していた。何を考えているのか大方予想がついていた。



 「今回の任務で王子とドキドキな展開とか狙ってんだろうけど、そもそも俺は男だっつーの」

 


 そう、メレスは女性のように美しい容姿ではあるがれっきとした男だった。別に隠しているわけではないが、ある理由から女の身分の方が便利であるため自らを男と名乗りでないままでいた。



 自分は女だとも言っていないため、苦しい言い訳であるが、周りが勝手に勘違いしているだけともいえる。まぁ、女性という身分はもうあまり必要ではないのだが。任務中は相手から聞かれない限り自身が男だとは告げないだろう。ただ、騙した側として言い出しにくいだけなのだが。



 「早く終わらせて帰ろう」



 そう呟くと体をだらりと起こして夕餉を求めて下の酒場へと降りた。


 

 酒場へと降りるとそこはすでに人で賑わっていた。夕方の時間帯から人が増え始めるのだが、今日は賑わうのが少々早い気がした。確かにもう夕方だがこの賑わいっぷりはまるで夜の客入りが一番多い時間帯のものだ。



 何があったのだろうと顔を出すと周りの酔っ払い達が一斉にこちらに顔をむけて大きく叫んだ。メレスはなんだなんだと心の中で慌てふためいていると、

 


「おお!昼間の姉ちゃんがでてきたぞ!」



 ようやく聞こえたはっきりとした言葉にメレスは納得した。昼間の野次馬達の集まりだった。ここに宿をとっているを誰かが知っていてそれが広まったのだろう。王子を救った凄腕の美女ともなれば話題性は抜群だろう。だいたいの男共は美女の部分だけが目当てなのだろうが。本当は男だが。



 周りで盛り上がってはいるが話しかけてくる者はいない。貴族のような気品のある容姿は一般市民には近づき難いのだろうか。昼間の武勇自体も後押ししているのだろう。メレスは周りがうるさい中静かに注文した料理を食べ始めた。



 周りも落ち着き始め次第に話題はそれていった。視線はちらちらと絶えないが。一人で食べるメレスは周りの話が気になり聞き耳を立てる。



 はっきりと聞こえる話は談笑や世間話ばかりだが、こそこそとしている所はやはりメレスの事を話していた。中身は下品なものが目立つ。そんな中談笑をしていたグループの一人が真面目な顔を作りそう言えばと話を始めていた。そのグループの話が気になったメレスは、下品な話をしていた所が話の熱があがり始め、声が大きくなり始めているのを無視してそちらに耳を傾ける。



「最近ソヴァージュ王国近辺で悪魔が出るって話を知ってるか?」



ソヴァージュ王国や大陸の東側に位置する大国であり、任務で向かう訪問先であった。



「しかも現れるのは1体や2体ではなく複数体固まって現れるって言うんだ」



 それを聞いた男たちの表情は胡散臭げだ。悪魔は個体の強さが非常に高く、一番弱い個体でも中堅冒険者の2パーティー分の強さに匹敵するが、集団を作らないことが定説だからだ。



 いままで悪魔が徒党を組んだなんて話は魔王の出てくるお伽話の世界でしか聞いたことがない。



 子供のころに本を読みきかされ当時は皆怖がっていたが大人になるとそれは子供の頃の懐かしい思い出でしかない。それを皆一様に思い出したのか、悪魔の話を持ち出した男はそっちのけで、それぞれ子供の頃の思い出を語り始める始末だった。



「おーい。聞いてんのかよー。ほんとなんだからな―!」



 男はやけになるが、周りは自分をおいてすでに昔話に花を咲かせて盛り上がってしまい誰も取り合わない。男は誰も乗らないとわかるとなんだかんだと自分もその会話に入っていった。



「悪魔…ね」



 男の言ったことは都市伝説のようなもので俗物だと思いたいが、火の無い所に煙は立たぬともいう。それに話の舞台は任務の目的地であり王子が訪問するソヴァージュであった。食事の終わったメレスは嫌な予感を胸にしまって部屋へと戻った。


プロットって難しいよね(言い訳)

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