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坩堝のダンプサイト  作者: あたりけんぽ
第二話 賢者司る灰色の街
6/41

[02-1]

 今や、ザトウ号は巨大な棺だ。

 シナツが足を一歩踏み出すと、外骨格の表面を血液がぬるりと流れる。

 遠心重力の消えた船内通路には、死体がいくつも浮かんでいる。強力な銃火器に撃たれ、無重力空間に臓物をばら撒いていた。


 視界は最悪だ。

 しかし、集中を乱すことなく、敵の一挙一動を捉え続ける。


 白い気密服を着た船員が、磁力ブーツで通路に立っている。左右の手には、それぞれ電磁誘導式アサルトライフルを携えていた。

 火薬の使えない宇宙を想定して開発された兵器だ。

 強化外骨格兵に対抗できるほどの威力も有している。一斉射撃を浴びれば、シナツとて無事では済まない。


 こちらに振り向いた船員がさらに、背中からミイラのような二対目の腕を伸ばした。その手にもアサルトライフルが握られている。

 ナノマシンに寄生され、四本腕に変異したのである。


 計四丁の銃火器から一斉に閃光が走る。

 銃弾は死体を貫き、血のベールを切り裂いて、シナツの頭を狙って飛来する。


 それを地を這う体勢で避けながら、壁や天井をアトランダムに跳ね回る。

 変異体の目ですら追いきれない速度に弾幕は分散し、無防備な隙間が正面に作り出された。


 その空間を見出したシナツは、ブーメランのような回し蹴りを胸に叩き入れる。

 人間なら一撃必殺の威力に、変異体の体が床から浮く。

 透明なヘルメットの中で吐血する男は、シナツの数少ない友人だった。


「すまない、チャールズ」


 自分の人格に影響を与えた、彼の軽口を聞くことはもうできない。

 シナツは握り締めた拳に体重を乗せ、男の頭を壁へ押しつけた。

 手首までヘルメットに突き刺さり、中で頭蓋骨と脳が破裂する。

 ポリカーボネートには蜘蛛の巣が走り、赤い体液がごぼごぼと溢れた。


 せめて、安らかに眠ってくれ。

 顔を背けながら生体電流を放出し、腕を引き抜く。

 後には砂袋のような気密服だけが残った。


「……くそっ」


 疲労困憊の体を引きずり、通路の奥へと進む。

 皮肉な話だ。

 強化兵士のプロトタイプとして生まれた自分が、化け物となった船員を始末して回っているのである。

 両者とも、肉体を構築するナノマシンは同じ技術だ。

 シナツは、科学者カザネ・ミカナギ率いるチームによって改良されたナノマシンを移植された実験体に過ぎない。


 肉体を書き換えるように増殖していくオーバーライト・セルは、複数のチームによって研究が進められていた。

 この事故は、暴走を起こした失敗作から始まったものである。

 ナノマシンに刻まれた行動原理は二つ。

 自己保存と敵性存在の殲滅。

 変異体は自分たち以外全てを敵と見なしているようだった。


 ザトウ号は、亜空間への潜航準備を進めている。

 超長距離航行の際に利用される回廊ではなく、出口が設定されていない洞穴へと飛び込むことで、暴走した変異体を永遠に封印しようというのだ。


 その前に、取り残された船員を救助しなければならない。

 電子ネームプレートに『九一○号』と表示された船室の前に立ち、閉ざされたドアを強く叩いた。


「カザネ! 俺だ、開けてくれ!」


 訪問者の姿は、部屋の中から確認できるはずだ。

 若干の間があってから、ロックが解除される。無事を知ると、無性に彼女の無謀さが腹立たしくなった。

 開いたドアに体を滑り込ませたシナツは、


「どうして戻って――」


 口を開いたまま言葉を失った。

 目前で、人が手足を広げて浮遊している。

 腹と腰から、おびただしい量の血が流れていた。

 自転して振り向いたのは、眼鏡をかけた黒髪の女性だ。


「……カザネ!」


 外骨格を解除し、彼女の体を抱き支える。

 口元に耳を近づけると、かすかに呼吸しているのが分かった。

 腹の傷はアサルトライフルによる銃創である。貫通力の高さが却って臓器を傷つけずに済ませている。しかし、この出血量――ショックを起こしていないほうが不思議だ。

 ぞっとするほど白い顔のカザネは、黒縁眼鏡の奥で、まぶたを重たげに持ち上げた。


「よかった……必ず来てくれるって……」

「待ってろ、今すぐ医務室に連れていく」


 強く語りかけたところで、表情まで装うことはできない。

 カザネは弱々しく微笑み、首を左右に揺り動かした。


「もうダメだってこと……自分で分かるわ」


 残された力を振り絞って持ち上げられる手に気づき、シナツは握り返した。

 気密服のグローブは二人の体温を伝えてはくれない。


「お願いがあるの。私の代わりに……あの子を助けてあげて……」


 彼女が視線で示したのは、ベッド・カプセルだ。

 その陰から、銀髪の幼い少女が手すりにしがみついて様子を窺っている。

 カザネに気を取られていたとはいえ、どうして気配を感じなかったのか。


 外見年齢は四、五歳ほどで、青い検査衣姿を着ている。

 この部屋を宛がわれている、実験体九一○号だろう。

 三桁目の数字から判断するに、オーバーライト・セルの被験者ではない。

 ナノマシンによる脳機能拡張、つまり、超能力覚醒実験を受けている子供だ。


 ザトウ号は、民間輸送船を生物実験用に改造した軍の施設である。

 データを持ち出せても、認可のない実験体は連れ出せない。

 担当者たちに見捨てられ、取り残されていたのだった。


「カザネ、お前……」

「見たいのよ。ザトウ号の子供たちが作り変える未来を……」


 ザトウ号の外を何も知らないシナツには、彼女の願いを理解することができなかった。

 彼女が信じる『未来』など、本当にあるのだろうか。

 それでもシナツは頷いた。危険を顧みずに少女を連れ出そうとした、カザネの意志を無下にはできない。


「了解した。九一○号は必ず脱出させる」


 はっきりとした返事に、カザネは頬を緩めた。


「ありがとう……」

「脱出させたら、必ず戻ってくるからな」

「ダメよ。一緒に脱出しなさい」

「バカな! そんな命令は――」

「シナツ」


 彼女は笑みを消し、狼狽するシナツを真摯な目で見つめる。

 卑怯だ。黙るのをじっと待たれては、何も言えなくなってしまう。


「九一○号には護衛が必要だわ。それに――」


 カザネは不自然に言葉を切り、虚空に視線を彷徨わせた。

 不安に襲われたシナツは、彼女の体を軽く揺すった。


「おい、カザネ?」

「……それに、あなたもザトウ号の子供だわ。こんなところで死なせ……ない……」


 最後のほうは、息を吐き出しているだけの掠れ声となって痛ましい。

 意識が混濁としてきているのかもしれない。

 だが、カザネは最後にはっきりとシナツの目を見た。


「……生きるのよ、シナツ」


 その言葉を残すと、彼女の瞳から急速に光が失われた。

 何度頬を叩いても、反応は一切ない。

 シナツは歯を食い縛り、血を厭わずに彼女を強く抱き締める。

 穏やかな呼吸も、心拍も、全く聞こえない。

 カザネ・ミカナギの時間は尽きたのだ。


「カザネ……俺は……」


 知人の死を目の当たりにして、現実を受け入れる心構えはできていたつもりだった。

 にもかかわらず、シナツには彼女の死を整理することができない。

 許されるなら、ザトウ号が亜空間に飛び込む瞬間までこうしていたかった。

 わずかにでもいい。

 体温を永遠に感じていられるなら――


 だが、それでいいのか。

 背後の物音にはっと振り返ったシナツは、蒼玉(サファイア)の瞳に気づいた。

 九一○号を道連れにすることが、カザネに対する真心だろうか。

 考えるまでもない。

 私情を押し殺し、使命を果たすのだ。


「九一、○号」


 なぜか、喉に声が引っかかり、鼻がつんとした。

 シナツは亡骸を無重力に任せ、少女を優しく抱え上げる。


「俺がお前を外に連れていく。いいな?」


 こくり、と彼女は小さな頷きで答えた。

 カプセルから引っ張り出した純白のシーツで少女を包んでやる。漂う血液に、触れないための即席の外套だ。

 後ろ髪を引かれる思いでカザネを見つめ――顔からそっと外した黒縁眼鏡をインナーの襟に挟み、開いたままのまぶたを閉じてやる。

 ザトウ号が亜空間に全てを葬るのならせめて形見を、と思い立ったのだ。


「行くぞ」


 それでもなお残る未練を外骨格を纏うことで断ち切り、少女と共に部屋を飛び出す。

 命を預かっている以上、無理はできない。

 実験体との交戦を避けつつ、船から脱出しなければならなかった。


「ザトウ、脱出艇は残っているのか?」

『肯定』


 船の案内人を務める女性型インターフェイスが、シナツの脳に形成された通信機能を介して答える。


『しかし、発着場は武装した反乱分子に制圧されております。危険ですので、最寄りのポッドをご利用ください』


 コンピュータは船員一人一人の生体データを記憶している。

 ところが、変異を起こした個体には狂いが生じるため、そう認識することで解決しているのだ。


「ポッドまでの道を教えてくれ」

『了解――亜空間潜航まで後、九百秒』


 情報を受信したシナツの視界に、光の道が示される。

 それを辿って駆け抜ければ、脱出ポッドの搭乗口に着く。

 道すがら、九一○号の口からたどたどしい言葉が紡がれた。


「外、って何?」


 浮遊する死体をシーツで作ったフードの下から覗き見しながら、関心を持ったのはそのことだったらしい。

 外界の刺激を与えられなかった少女は感情が乏しく、死というものに疎いようだ。

 シナツは足を止めずに答えるのである。


「宇宙だ」

「宇宙、って何?」

「……息ができない。こんな風に話すことも不可能な、真っ暗な世界だ」

「じゃあ、どうして外に出るの?」


 シナツはT字路の曲がり角を覗き込んで、安全を確認する。徘徊する変異体の位置情報は絶えず送信されているが、念には念を、である。

 体力の消耗で乱れる呼吸を整え、道標を追う。


「その先に、お前が生きる世界がある。……多分な」

「多分?」

「俺も船の外に出たことがないんだ。分からないのはお前と同じだ」

「同じ……」


 九一○号はシナツと自分の体を見比べて、ぽつりと呟いた。


「でも、違う」

「体や頭の中身が同じ人間なんていやしない。そういう意味じゃないんだ」

「……私、人間じゃない。実験体だから」

「ああ、そうだな。俺もだ」


 今度は少女とのやり取りに疲れた吐息である。

 話しているうちに、搭乗口が見えた。

 部屋の中はエレベータ・ホールに似ている。

 外部パネルを操作し、並んだ扉の一つを開けて覗くと、ハッチの開いた卵型ポッドに貫通(ほろ)が接続していた。折り畳み式の橋が足場を作っている。

 外骨格を解除したシナツは大人には狭いシートに九一○号を座らせ、ベルトをしっかりと巻いてやった。

 よし、と自らの半身をポッドに乗り出し、モニターに表示されたシンプルな注意書きを読んで聞かせる。


「あー……射出は俺がやる。船の外に出たら、救難信号――助けてくれ、ってメッセージが周りに送られる。近くを通りかかった船が回収してくれるはずだ」


 シナツは画像で教えられた棚を探し、閉じている蓋を軽く叩いた。


「非常食はここだ。一食ごとに分けられているみたいだから、全部食べるなよ。酸素マスクはこっちだ。ここのO2ってランプが赤く点灯したら、引っ張り出して口に当てる……いいな?」


 言葉では分かりにくいかと思って、両手を口に当ててみせる。

 すると、九一○号がシナツの動作を真似し、手のマスクに声を籠らせた。


「分かった」

「よし、賢いやつだ」


 シナツはフードの上から少女の頭を優しく撫でた。

 九一○号は不思議そうな顔でこちらを見つめている。反射的に逃げようとしないのは、悪く思っていないからか、あるいは実験体の性質上、触られるのに慣れているか。


『亜空間潜航まで、後三百秒』


 もうすぐ脱出装置が作動しなくなってしまう。

 幌からホールに引き返したシナツは、慎重にパネルへと触れた。


「お前を先に送ったら、俺もすぐに追いかける。近くを飛ぶから、一人じゃない」


 後は運に任せるしかない。

 大勢の船員が退去しているのだから、事故を察した船が駆けつけるだろう。一人乗りのポッドにも気づいてくれると信じたい。


「出すぞ、九一○号!」


 意を決し、射出機構の作動ボタンを押した。

 しかし、制御盤が鳴らしたのは、不快なエラー音だ。

 疑似人格が告げた警告に、シナツは耳を疑ってしまった。


『船員が搭乗していません。正しく手順に従って――』


 再度ボタンを押しても、同じエラー・アナウンスが繰り返されるだけで、ポッドはうんともすんとも言わない。


「なぜだ! ちゃんと乗っているじゃないか!」


 時間がない。シナツは思考をフル回転させ、原因を考える。

 安全確認は全てクリアしている。子供だと反応しないのか? 緊急時の脱出装置に、そんな制限があろうものか。


「反応――そうか!」


 思わず頭を抱えてしまう。

 警告は『船員が搭乗していません』と言っていた。


「船員じゃないからいけないんだ」


 九一○号のことは、生体センサーに感知できても、人間によく似た何かと認識しているのかもしれない。

 搭乗者がシナツでも分からない。コンピュータは個別認識しているようだが、特有の生体反応に対して定義づけされているからに過ぎない。


 それが分かってどうなる。はっきりしたのは脱出できないという事実だけだ。

 外部パネルを殴りつけてやりたい気分だった。人間と認められていない者が、外の世界を歩むことは許されないのか。

 九一○号の青い瞳がこちらをじっと見ている。

 なんと説明したらいいのだろう。

 申し訳なさで顔を歪めるシナツに、少女が尋ねた。


「どうして、四七二号なのにシナツって呼ばれてるの?」

「あ? ああ……カザネが数字の読み方を変えて――」


 と、しどろもどろに答えたときだ。

 外部パネルが突如、『ぴっ』と軽快な電子音を立てた。


『船員の搭乗を確認しました』

「……なんだと?」


 しかめ面で装置を睨んでも、機械はそれ以上の言葉を発さない。ずいぶんと素直な態度になって、射出の合図を待っている。

 代わりに、少女が口を開いた。


「私たちのこと、教えてあげたから」


 教えてあげた?

 まるで分からず屋を説得したような、少女の言い方だ。

 実験によって獲得した超能力と、何か関係あるのか。だとしたら、絶体絶命の窮地を彼女に助けられたことになる。


「感謝する、九一○号――と呼ぶのもなんだな」


 シナツは苦笑交じりに肩を竦めた。


「落ち着いたら、一緒に名前を考えるか? 俺みたいなやつさ。実験体ナンバーと分からないような」

「名前……私の……シナツみたいな……」


 彼女は上の空に頷いて、「うん」と答える。

 相変わらず表情の変化は見られないが、青い瞳には確かな感情の煌めきが窺えた。


「よし、今度こそ行くぞ」


 シナツは左手にサムズアップを作り、改めてパネルへ手を伸ばす。

 今度こそ脱出機構が作動を始めた。幌が折り畳まれ、ポッドと搭乗口のハッチが同時に閉鎖される。

 扉の向こうでは、クレーンに運ばれたポッドが射出レールに乗ったことだろう。電磁誘導によって加速し、一気に無重力空間へと飛び出すのだ。


 すぐに次のポッドが運ばれてくる。

 搭乗口から乗り込もうとしたシナツはつまずいて、ポッドの座席に倒れ込んだ。

 少女を送った途端に気が緩んだのかもしれない。

 長時間に渡る戦闘の疲労が、どっと押し寄せてきたのだ。

 なんとか正面を向いて座り直し、内部から射出シークエンスを開始させる。


『亜空間潜航まで後、百二十秒』

「じゃあな、ザトウ号」

『はい、ご搭乗ありがとうございました、シナツ』


 調子のよいコンピュータだ。

 ポッド搭乗者に対する注意喚起が機内のスピーカーからアナウンスされる。


『アームレストに掴まり、舌を噛まないよう、ご注意ください』

「あいよ」

『射出、十秒前。三、二、一――ゼロ』


 急加速で、体がシートベルトに押さえつけられる。

 この負荷に九一○号は耐えられただろうか、心配でならない。

 彼女の顔を思い描くよりも早く、強烈な感覚はふっと消えた。自分もいよいよ宇宙に出たのだろう。


 外部カメラと接続したモニターに、灰色の巨大船が映る。

 ザトウ号――外から見る自分の故郷は、船内の惨状など全く窺えない、宇宙を泳ぐ巨大生物の威容があった。

 船の前方には、星の光をも呑み込む亜空間への入口が広がっている。


 シナツの脳裡にザトウ号の日々が想起される。

 初めて認識した人間はカザネだ。彼女の助手たちに様々なことを教わった。ときには自分の肉体に恐れを抱いて――

 今、全てが消え去ろうとしている。

 亜空間に侵入し始めた船が先ほどよりも膨らんで見えた。疲労困憊が祟って、目がおかしくなったのかもしれない。


「……いや、違う!」


 シナツは驚くあまり座席から立ち上がろうとして、ベルトに押さえつけられた。

 射出速度を失ったポッドが、船に引き寄せられているのだ。


「どうなっているんだ!?」


 彼には知る(よし)もない。

 亜空間へ潜航する膨大な質量の物体は、通常空間に歪みを生じさせる。周囲の物体に対し、入口が開いている間は引力が働き、閉じると今度は斥力が働く。

 いわゆる、『引き波現象』だ。

 外部カメラを動かすと、九一○号のポッドもこちらに近づいていた。

 このままでは二人ともザトウ号の自殺に巻き込まれてしまう。


「来るな! 来るんじゃない!」


 こうなったら、ポッド同士をぶつけて突き放すしかない。

 シナツはコンソールを死に物狂いで調べ、推進装置を作動させる。

 だが、機体の向きを修正する程度の低出力ブースターでは引力の渦に逆らえない。

 二機のポッドが接触するよりも先に、シナツは亜空間に呑み込まれるだろう。


「くそっ……何か……何かないのか!?」


 任務の遂行によって維持していた精神が、呆気なく砂のように崩れる。

 シナツはスクリーンにうっすらと反射する化け物の姿に気づいた。

 この状況を打破することもできず、なんのための力だ。

 誰も救えない。

 この手が作り変える未来など、ないのだ。


 だが、九一○号はまだほんの小さな子供ではないか。

 そんな少女すら物理現象から見逃してもらえないのは、あまりにも残酷すぎる。


「早く行け、ザトウ号!」


 自分はどうなっても構わない。

 だから。


「あいつだけは――」


 外部カメラが暗闇に覆われる。

 絶叫の半ば、シナツの時は凍てついた。

 生も死もない世界を通り過ぎ、そして――

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