失恋
私は十分も掛からずに洗濯物を干し終えた。
「外は暑い……」
今日も相変わらずのかんかん照りだ。
洗濯物を干すだけで汗を掻くのはいやになる。
「お疲れ愛理」
リビングに戻るとお姉ちゃんが飲み物の入ったコップを私に向けて出してくる。
「えっ? 飲んで良いの?」
「もちろんよ」
お姉ちゃんはもう風呂掃除が終わっていたみたいだ。
「ありがとう」
コップを受け取り一気に飲み干す。
「いい飲みっぷりね」
「そ、そう? お姉ちゃん、服少し濡れてるけど着替える?」
お風呂掃除のせいで濡れたのであろう服を指す。
「このくらい大丈夫よ。愛理こそ結構汗掻いてるけど……」
「私も大丈夫だよ」
籠置いてくるね、と言い私はテーブルにコップを置いて、一旦洗面所に行ってからリビングに戻る。
戻るとお姉ちゃんは椅子に座っていたので私も座る。
「もう一杯飲む? 勝手に取っちゃったけど大丈夫だったわよね」
「飲む! そんなこと大丈夫だよ」
「ふふ、良かったわ」
お姉ちゃんは私のコップに注いでから自分のコップにも注ぐ。
「んっ! そうだ」
私はスマホを見つけたことを言い写真を一緒に撮ろうと言う。
「ポケットね、私も気付かなかったわ。灯台下暗しってやつね」
なるほど、と相槌を打ちながら私に近づいてくるお姉ちゃん。
私はスマホをインカメラにして、お姉ちゃんと肩を寄り添い写真を撮った。
「ありがとう! 待ち受けにするねっ」
私は撮った写真を待ち受けにしようとスマホを操作する。
「……愛理」
お姉ちゃんは椅子に戻り、コップのお茶を一口飲んでからお姉ちゃんは私を呼んだ。
「なに?」
「昨日の事なんだけど……」
まさか……。
「き、昨日って?」
「愛理のお母さんが来て話が終わっちゃったじゃない? そのまま寝ちゃったし、ちゃんと話さないと、と思って」
「な、なにを……」
私はとぼけたふりをする。
話さなくてはいけないと思いつつも話したくない。お姉ちゃんに拒絶されたくはないからだ。
「私は愛理の事は好きよ。でも、恋愛対象ではないのよ。昨日はいきなりキスされて戸惑って涙が出てしまったけど、決して愛理の事を嫌いな訳じゃない。信じてくれる?」
お姉ちゃんは私のこと嫌いではない。それは嬉しい。でも、恋愛対象じゃない? それは許されない。
「な、何で? やっぱりアイツが好きなの……?」
「…………そうじゃないわ。愛理は何というか……妹みたいな存在だから。家族と一緒って言うか……何て言えばいいのかしら。言葉って難しいわね」
お姉ちゃんは言葉を探して悩んでいる様だ。
「じゃあ、お姉ちゃんは私以外なら男でも女でも好きになるってこと?」
「それは、……なってみないと分からないわ。でも、心の底から好きになったのなら性別は関係ないと思う」
お姉ちゃんの話を聞いているうちに胸が苦しくなる。
「……そう」
目頭も熱くなる。鼻水も垂れてきそうだ。
「これからも仲良しで居ましょうね、愛理」
「……う、うん……」
最後の一言で私の恋は終わりを告げる。
そして決意をする。絶対にお姉ちゃんを私のものにすると。
「わ、私こそ昨日はごめんね。感情的になっちゃって」
「気にすることないわ。誰にだってそういう時はあるもの」
私は涙をこらえて普通を振る舞う。お姉ちゃんになら分かられてしまうだろうが、そこを指摘してくるとは思わない。なら私がお姉ちゃんを諦めたと思わせておいた方が今は良いかもしれない。
□□□
「「「いただきまーす」」」
お母さんが帰って来て、三人でテーブルを囲む。お父さんはまだ帰って来ていない。
私とお姉ちゃんは既にお風呂に入っていた。あとはご飯を食べて歯を磨くだけで寝れるという状態だ。
そうそう、お姉ちゃん一人だけのワンピース姿の写真もあの後しっかりスマホで撮らせてもらっていますよ。
「それにしても久しぶりね、結紀ちゃん」
「はい。ご無沙汰ですおばさん」
「元気してた?」
「もちろんですよ」
お姉ちゃんとお母さんが話している会話に入らず黙々とごはんを食べる。時折スマホをいじりながら。
美那子先輩 『今日なんとか会えた。』
美那子先輩 『小春のお母さんは優しい人だったんだ。』
私が返信返せなくてすいませんと送ってから他愛のない話が続いていた。
また明日も会いに行くそうだ。
『明日、次の日お出掛けに誘ってみるのはどうです?』
美那子先輩 『そうだな。』
美那子先輩 『誘ってみる。』
美那子先輩 『で、でもどこに行けばいいんだ?』
『小春先輩が行きたいと言った場所とか、遊園地で遊んで楽しい思い出にするとかどうですか?』
美那子先輩 『名案だ。』
美那子先輩 『相談に乗ってもらって悪いな。』
『いえいえ。私も先輩には幸せになぅてほしいですから』
美那子先輩 『ありがとう。』
『そうだ、先輩。私もお姉ちゃんと一緒に学校に行くことになったんですけど大丈夫ですか?』
美那子先輩には言っておかないと。お姉ちゃんには内緒で行こうと思っているのだ。どうして居るのかと聞かれて言い訳が出来なくなってしまうのはまずい。
美那子先輩 『四日後の話か。』
美那子先輩 『大丈夫、正直に言うと私も行く気だからな』
『そうですか、良かったです。では四日後に会いましょう』
美那子先輩 『おう。』
『あっ、相談はいつでも受け付けますからね』
美那子先輩 『ふふ、ありがとな』
「愛理、携帯いじりながらご飯食べないの」
「は~い」
お母さんに注意される。
もう話は終わったから良いんだけどね。
「何をやっていたの?」
お姉ちゃんから聞かれる。正直に美那子先輩とチャットをやってたとは言えない。
「何か面白いアプリないかなーって思ってさ。お姉ちゃんに教えてもらったアプリをとる場所で探してたんだ」
実際、アプリは自分で取ったことないけどね。チャットだってお姉ちゃんにやってもらった訳だし。
「何か良いのあった?」
「良く分かんなかった。えへへ」
「そっか」
「……最近の携帯はおばさんには分かんないのよねぇ」
そんなこんなで晩ご飯は終わり、お風呂に入ろうという事になったが、その時お母さんに、「昔みたいに一緒にお風呂入っちゃえば?」という名案を言われたので昨日に引き続き一緒に入った。
ありがとうお母さん。
明日も一緒に入ろうねお姉ちゃん。
口には出さずにそんな事を考える。
お風呂から上がって、歯磨きもしてから自室にお姉ちゃんと一緒にいく。
「明日の洋服はここから好きなのとって良いよ」
私は買い物袋を指す。
「……愛理、こんな沢山いいの? 高そうな服ばかりだけど……」
「お金はまだあるから気にしないで良いって言ったじゃん。それにお姉ちゃんには可愛くいてほしいからね。そのままでも十分魅力的だけど」
「そ、そんなこと言っても何も起こらないわよ」
お姉ちゃんはそう言ってベッドに腰掛け、手招きで私を呼ぶ。
「うん?」
お姉ちゃんに近づくとお姉ちゃんは自分の太ももの上を両手でパンパンと軽く打つ。
これは、ここに座れということなのだろうか。
後ろを向き、お姉ちゃんの太ももにおしりをつけた。
「んふふっ」
お姉ちゃんは私の頭の上に顎を置き、両手を私のお腹辺りでクロスさせて私を抑える。
まだ微かに湿っている私の髪にお姉ちゃんの吐息があたる。
体の後ろ側全部と前も一部。体の半分以上がお姉ちゃんと密着した状態だ。
一緒に寝たりしているのに何故か私は今、緊張している。
「ど、どどどうしたの!?」
「ん? こうしてると何か落ち着くのよね。愛理からそういう成分が出てるのかしら」
お姉ちゃんは私の頭に頬ずりをしている様だ。
「そ、そろそろ寝ようか」
私は何故か耐え切れなくなりそう発言する。
「そうね。早寝早起きは三文の徳だものね」
「うわぁ」
お姉ちゃんはそう言うと私ごと後ろに倒れ込みベッドに横になる。
そこからもぞもぞと体勢を変え、寝る気満々だ。
「おやすみ愛理」
「お、おやすみ……」
お姉ちゃんのペースにのまれていたと今更ながら思う。
……この状態で寝るの?
今だに捕まったままの私。
横になってはいるが頭の上で聞こえるお姉ちゃんの息。
私は寝れるのでしょうか……?
今日、もう1話投稿予定です。




