告白
日は過ぎて、中間テスト最終日の金曜日。帰りのホームルーム。
「テスト終わったからといって羽目外しすぎるなよー。以上」
「起立――」
号令をして放課後となる。
テストのできはまぁまぁといったところだろう。赤点は取ってないと思いたい。補習は嫌だからね。
それもこれも、勉強を教えてくれた美那子先輩のおかげだ。
その美那子先輩は、今日、屋上でアイツに告白をする。アイツの呼び出しはもうしていると昼休みに言っていた。
私は先回りして屋上へ行く。告白の行く末を見守るためだ。
屋上は本来立ち入り禁止だ。しかし、今回は生徒会の特権を活かし、内緒で私用に使わせてもらうそうだ。
私は屋上に着く。鍵はもう開いていた。少しドアを開けて覗き込んでも誰も見えなかったので勝手に入った。
「……あれ? 誰も居ない」
鍵が開いていたから、屋上の何処かに美那子先輩は来ているかと思ったが居なかった。トイレにでも行ったのだろうか。
今のうちに隠れてしまおう。
屋上は普段解放されていない。だからか、周りに転落防止のフェンスは無く、屋上の端は胸辺りまで上がっている壁のみだ。乗り越えようと思えば簡単かもしれない。
校舎の入口の上には貯水タンクがあり、横側の壁に上れるように鉄の棒がくっ付いている。
私はそこに上り見守ることにした。
私が貯水タンクの所に上がり少ししたら、屋上のドアが開く音。誰か来たみたいだ。
「ま、まだ来ていない。落ち着け私。落ち着け……」
この声は美那子先輩だ。
先輩は屋上の真ん中あたりまで歩いており、私から見える位置に居てくれた。私は、ばれない様に身を屈めながら様子をうかがう。
先輩はそわそわしていて、いつもの頼れる先輩の雰囲気は無い。でも、いつもは見れない可愛らしさがそこにはあった。
先輩が来てから、あまり待たずしてドアの開く音。アイツが来たのだろう。
「さ、里見さん、ぼ、僕に話したいことって?」
このおどおどした話し方が私は嫌いだ。美那子先輩には好きになった理由を聞いたから何とも言えないが、お姉ちゃんはどうしてこんな奴を好きになったのだろうか。
アイツも私が目視できる場所まで出てきてくれた。
「こ、小春! ま、前から想っていたんだ!!」
先輩!? 主語がないですよ!
案の定、アイツも困惑の表情をしている。
「あっ……えっとだな……」
顔を真っ赤にした先輩は小声で口を動かす。そのせいで声が聞き取りにくい。
こんなことなら読唇術を身に付けておけば良かった。
アイツの声も小さく、所々しか聞き取れない。
「――だから、私は――――好きだ。付き合ってほしい。結紀が――――――――いるでも、この気持ちは――――――――。どうかお願いします!」
先輩は腰から頭を下げた。
「……里見さ――――――れしい。――――――を好きって言ってく――――てね。でも――――。僕は結――――の事が好きなんだ。だから――ん」
美那子先輩は頭を上げる。その表情は暗かった。
アイツは校舎へと歩いて行く。
「もし! もし結紀と別れることになったら私と付き合わないか? 待っているから!」
「……ごめん」
アイツは里見先輩に背中を向けたままそう言い、この場から去っていく。
先輩はその場に腰を下ろし空を眺めていた。
「先輩!」
私は先輩の下に駆け寄った。
「……あぁ、愛理。もしかして見ていたのか?」
「はい。言葉はちゃんと聞き取れなかったですが」
「そうか……私、振られちゃった。結紀のこと好きなんだってさ……」
私は先輩を胸に寄せた。
「先輩、私は先輩ほどないですが、こんな胸で良ければいくらでも使ってください」
「愛理……うわぁぁん!」
先輩は私の背中を、制服を両手で握りしめ、私の胸で涙を流した。
また一つアイツを怨む理由が増えた。美那子先輩をこんなに泣かすなんて。許さない。
先輩の背中を優しく撫でる。
大丈夫です。私が何とかします。お姉ちゃんと別れさせて……。
短かったので二話連続投稿しました。これの方が短いですが…(^^;




