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仲良し犬猿  作者: 小林
1/1

発端

プロローグ

 

 流れる景色を眺めながらため息をついた。智子が憂鬱なのは、小曽根健一第一秘書が読み上げる今日のスケジュールがあまりにも多忙であったからではない。そう篠村智子は確かに今日、日本国初の女性総理大臣に着任するのだ。ここまで来るまでにどれほどの荊の道が存在したか。幼少時からの英才教育の果てと凡俗にはそう見えるかもしれない。だが真実は想像する以上に激烈であったのだ。智子の歩んだ道には必ず彼女との戦いがあった。そう、あの思い出すだけで虫唾が走る、その女の名は月坂つみれ。

 

1.発端

秋の終わりも近い。運動公園には北国の雪のように落ち葉が積もっていた。公園には一本の小川が流れていて市民の憩いの場となっていた。これは智子が幼稚園に通っていたときの話だ。その日智子とつみれは、いつものように正午過ぎに幼稚園が終わり下校していた。最近の二人の遊びは、もっぱら落ち葉を小川に流すことだった。最初は自然に小川に落ちた葉を眺めているだけだった。落ち葉は小川に流され、以外に速い速度で下っていく。智子は動くものが好きだった。車、船、飛行機。動いていればなんでも良かったのかもしれない。つみれはそうは感じていなかった。ただ、相棒の智子に従順なだけだった。その頃の二人は奔放な智子、従順なつみれという単純構造で出来上がっていた。しかし、この単純構造は欠陥があり、長くは続きそうになかった。実際、続かない。この小川遊びがその発端であったのかもしれない。遊びはやがてエスカレートした。そこら辺に散らばっている落ち葉を掻き集め、一気に小川に投げ入れた。落ち葉は一気には流れず、少しずつ分散して流れた。二人は落ち葉の量をを増やした。どんどん増やした。遂には小川はせき止められた。これが遊びの終わりだった。小川は流れなくなった。事態を深刻だと判断した智子は落ち葉を取り除こうと木の枝で落ち葉をほじくった。「智ちゃん、ながれないよ。もう帰ろう?」つみれはこの時はじめて智子に反旗をひるがえしたと言ってもいい。「つみっちゃんも手伝って!流れなくなっちゃた。」つみれは聞かなかった。「ねぇ。帰ろう?」そのとき、近くを通ったおじいさんが叫んだ。「こら、危ないぞ。なにをしとるんだ!」智子は反射的に逃げた。つみれを置いて。つみれは智子の後を追おうとしてこけた。こけて、転がり小川にはまった。智子は気づかず行ってしまった。おじいさんが慌ててつみれを救った。しかし、つみれは足をすりむいた。一度もすりむいたこと無かったのに。つみれは泣いた。つみれがこの時抱いた感情は永遠に消えなかった。そして、これが爆発するのはもっと後になってからのことである。智子はこのつみれの一種の危険性に気づかず、それを放置し続けたために、後に痛い目にあうのである。この事件以降も二人は親友であり続けた。しかし、この事件の話をすることは全くなく、いつの間にかこのことは記憶から薄れていったのだ。二人の仲が良かったのは幼稚園卒業時までである。地元の小学校に入ると、二人は違うクラスとなり別々の人間関係を築き始める。それが二人の価値観の決定的な違いとなるのだ。ともかく、智子とつみれの壮絶な人生は幕を開けたのである。




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