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すみません、一話分抜けておりました。
ホームルームが終わった私は、北棟の二階の右端にある生徒会室の前に立つ。中学時代にも足を入れる事が定期的にあった場所だ。コンコンと二回ノックをする。中から「はーい」という聞いた事がない声がした。直君以外の誰が勝いると言う証拠だ。気に引き締めているとドアが開いて、その瞬間自分が緊張している事に気が付いた。
「千世。ちいが来たぞ。とにかく入れよ」
直君が私に手招きをする。
「おじゃまします。初めまして。一年三組の佐倉倫子です」
私は自己紹介をしてからドアを閉めた。ドアはバタンと大きな音を立てて閉まる。
「いらっしゃい!!ようこそ生徒会に!!」
千世さんはそう言うと。パンパンとクラッカーが鳴って、私の頭には紙テープが乗っかっている。
「……えっ?何?」
「お前の歓迎会だ。入学おめでとう」
「すみません。ほとんど初対面なのに……ありがとうございます」
私はゆっくりと生徒会室を見まわす。私と千世さんと直君以外に三人いる。そのうちの一人は三月の制服の試着の時に会った人であった事は分かった。この時間にここにいるのだから、彼の生徒会役員というのは分かる。
「私と直也はいいわよね。真理ちゃんからね」
「吉野真理。三年生です。ここでは会計です。ようこそいらっしゃい」
私は慌てて吉野先輩にお時儀をする。
「俺は佐藤勇也。二度目だよね。覚えているかな?」
「はい。あの時はお世話になりました」
「何、ゆーや君だけずるくない?」
「千世さん達は、その時は確か……職員室か、体育館にいたと思いますが。覚えていませんか?」
「うっ、悔しいけどそうかもしれない」
「そうそう。俺は二年三組だから体育祭は一緒。役職は書記だそうだ」
「私は角田真奈美。私はあなたの隣の一年四組。生徒会役員というよりはお手伝い要員です。よろしくね」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
四組という事は付属中の人だと言う事を想いながら私は角田さんを眺めている。
「最後に、俺は一応副会長で、千世が会長。分かったか?」
直君に言われて私は頷く。ちょっと引っかかったのは、副会長の前に一応と付いている事。
一通りの自己紹介の後に、千世さんは私にいきなり聞いてきた。
「ところで、ちいちゃんはここでは何と呼ばれたい?」
千世さんは瞳をキラキラさせて私に聞いてくる。そういう事……全く考えていなかった私は戸惑う。
「ちいってのは、見た目からだよな。ちびっこだから」
直君は説明する必要がない事をわざと言ってくる。
「そうですよ。他には、ともって時もありましたし、佐倉って時もありましたよ」
私は今まで呼ばれていたと思っている呼び名を上げておいた。思った割にいろいろと呼ばれていたようだ。
「ちいちゃんでもいいと思うけど。どうせ、直也は直すつもりは一切ないでしょう?」
「そうだな。俺はそのままでもいいかと思っているけどな。あのころは可愛かったよな。お兄ちゃんって言って必死に追いかけてきたっけ」
「直君、小学校低学年の頃の話を今持ち出さないでください。直君にチビ扱いされるのはもういいです。そういう意味では諦めていますから」
私はいつもの癖で直君と呼んでしまった。いけなかったかな?
「へえ……直君か。ずいぶん可愛いもんだな。直也」
「うるせえな。ガキの頃からこいつはこう呼ぶんだよ」
佐藤先輩にからかわれている直君はムッとしている。でも私の中では……直君は直君で。妥協するとすると直也君になるのだが……。
「私達も……この際だから直君にする?いつもは近寄りがたいんだからさ。どう?直也?」
「千世……それは言うなよ。俺はこのキャラでいいと思っているから」
「それから、真理ちゃんは真理ちゃんで、勇也君はゆーや。愛美ちゃんはまなって呼んでいるのよ。今までは直也はなおで私は千世ね」
私はきょとんとしている。皆さん……名前からのニックネームをつけていることは分かった。
「私達もちいちゃんと呼ぶから……早く慣れてね」
「分かりました。ところで千世さん、私は一体、ここで何をするのでしょうか?
入学式の放課後に私をここに呼び出して、自己紹介で終了ということはないだろうと思っている。
そんなことなら、別に今日のこのタイミングではなくても十分はずだから。