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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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一年三組の教室の前に立つ。先週の木曜日にあったガイダンスでも入ったのに、どうしても緊張してしまう。私自身、新しい環境に馴染むのにかなり時間がかかってしまうのだ。

とりあえず決められた席に着く。私の隣は偶然にも博子ちゃんだ。同じ中学の博子ちゃんであるけれども、私と博子ちゃんの家だと最寄りの駅が違ってしまう。私の方が一つだけ君塚より遠い駅を利用している。私と同じ町内に住む理絵も同じ駅を使うはずだ。もう一人の同じクラスの加瀬君は博子ちゃんと同じ町内に住んでいるから博子ちゃんと同じえきになるだろう。博子ちゃん達と同じ駅にしてもいいのだけど、駅までにかかる時間が二倍近くかかってしまうので今はそこまで朝から体力を使う必要はないと思っていた。ただ、問題なのは私が利用している駅には快速電車が停車しないとので電車が来たからすぐに乗って帰るということができない所が若干不便なのかもしれない。そのため遠くても快速が停車する駅を利用している人もいるらしいから同じ中学だからと言って皆が同じ最寄り駅ではないと思っている。


やがて同級生がやって来て、先生が教室に入ってきた。これから入学式前のホームルームになるのだろう。簡単に今日の流れの説明があって、最初に書類が数枚配布される。そんなかには部活動申請書も入っていた。あまりお金を使う部活動は避けたいなあと思ってプリントに書かれている部活動を見ていると写真部と書かれている。父が残してくれたカメラで写真を撮るのは好きだから、覘いて続けたいと思ったら入部したらいいかなと私は思った。

そして、入学式の時間になって、私達は廊下に並ぶ。隣の四組は全員が付属中のクラス何だそうだ。三組も半分は付属中の出身で、私の周りは皆知っていたみたいだけど、私が知らなかったというと博子ちゃんは私らしいねと言って笑っていた。まあ、確かに隣のクラスとかには全く関心がないというのは事実だから仕方ないと思うんだけど。

私の後ろは男子で佐々木君という。彼は付属中の出身で、ぼーっとしている私にフォローめいた事をしてくれる。お世話するのが好きなのかなって思っていたら、入学式の最中にこそっと教えてくれた。付属中からも持ちあがり組は、私達……一般組と仲良くやっていきたいのだそうだ。だから、性別気にしないで不安そうにしていたら声をかけようという事を決めていたと言う。私達が知らない所でそんな事を考えてくれていたと思うと素直に嬉しい。私は佐々木君にありがとう。頑張って慣れるからねって答えるとその調子だよって佐々木君は言ってくれた。

けれども一つだけ佐々木君が言った事が妙に引っかかった。特に佐倉さんは……覚悟してねって。それってどういう意味なのだろう?その後に佐々木君が教えてくれた話だと、一年生は全部で八クラスだという。体育や選択のクラスの分け方によっては全クラスでシャッフルすることがあると言うけれども、基本的には一組から四組と五組から八組に分かれていると言っていた。だから、今のところは理絵と同じクラスになる可能性はかなり低いと言う事になる。

その話を聞いて私が思っていた事はたった一つだけ。目立たずひっそりと過ごしたい。けれども、この決意がいつまで保てるのだろうかという漠然とした不安が私の中にはしっかりと芽生えてしまった。


あっという間に入学式が終わってホームルームになった。明日はオリエンテーションで鴨川の方で一晩過ごす事になっている。その時にクラス役員とかを決める予定だと先生は言っていた。今日のところは、同じ中学という事で博子ちゃんと一緒にいる。ただ少しだけ感じる違和感は、合格してから知った事が影響だと私は思っている。

オリエンテーションの二日後から授業が始まると言う。英語と数学のクラスは既に発表されている。英語と数学だけは能力別にクラス分けがされている。幼馴染達に話したように一組から四組が大きな括りになっている。入学式の時に佐々木君が言っていた通りに、理絵とは一緒になることはほぼなさそうなので私はホッとしている。

それに三組にいる私達……同じ中学の三人だって同じクラスではない。私は英語も数学もレベルAと言われた。授業は隣の四組で受けると聞いている。あまり数学は得意ではないのでレベルAにいることは私自身としては荷が重い。合格が決まってすぐに直君にレベルと落さない様にとかなり言われていたので、三月末にあった実力テストまで今まで以上に勉強をしたと言える位に勉強をした結果なのだろうと思っている。

入学式前のガイダンスの後で貰った教科書と、千世さんと直君のノートと参考書を元に少しずつ予習を始めている。運がいいのか、第一高校と同じ教科書という事も分かった。早速第一高校に通うクラブの幼馴染の家に電話をかけて週に一度に理系を中心に一緒に勉強をする事にした。いずれは予備校に通う事になるとは思うけど、今は時間の余裕がないので予備校のパンフレットを入手すらしていない。

先週は土曜日に忠君の家に行って予習の部分で分からない所を教えて貰った。今のところ、私を教えてくれるのは忠君の兄の仁君がメイン。高校三年生になって部活以外の競泳を引退していて、徐々に受験に専念していくのだそうだ。そんな仁君は私に勉強を教える事が自分の復習にもなると言って丁寧に教えてくれる。

二人とも私の近況を一切聞いてこない。恐らく、共通の知り合いである誰かから私の話は既に聞いているはずだ。

そんな気遣いをしてくれる二人に気がつかないふりをして甘えている自分がいた。


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