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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
87/134

8

「おはよう。ちい」

「あれ?直君。今日は早くないの?」

「大丈夫。今日は式典の列席だけだからな。千世は式辞があるけど、あいつなら問題ないさ。それにあいつの家は学校の傍だから待ち合わせは特にしていない」

「ふうん、精とか言って大変なの?」

「そんなでもないぞ。うちの学校はイベントが少ないしな。それに会長だけが選挙で決まるんだよ」

「へえ。それでいいの?」

「どうだろうかな。そういうことに関しては消極的な学校だからな。母体が変わることでどうなるか?来年今工事をしている場所に教会が出来ると教会主導のイベントは増えるだろうな」

「イースターとか?」

「そんなところだ。でもカトリックではないって聞いているからそんなに五月蠅くないだろう。相変わらず賢いお前で俺は嬉しいぞ」

「私……すっごく嫌な予感しかしないんだけども……」

直君がこんな言い方をする時は……いい事だった事は過去一度もない。これ以上何も聞きたくはない。

「お前を生徒会に引っ張るから」

きっぱりと直君は断言する。そんなものだろうとは思ってはいたよ。直君が中学の生徒会長をしていた時だって……冬はオフシーズンだからって散々働かされた事は今でも根に持っている位だ。

生徒限定なら、誰よりも手を汚さずに印刷機を扱える自信は今でもある位には使えるけれども。

それよりもS高でもパシリ確定な事が分かり、本当に泣きたくなる。


「直君……大丈夫だから。私だけでも大丈夫だよ」

「ああん?」

私なりに必死に抵抗を試みてみる。言った途端にデコピンをされてしまう。

「いっ……痛い……」

「……ったりめえだ。俺は、無かった事に一切しないぞ」

直君に言われてしまって、スル―したかった部分を表に引き摺りだされてしまった。バレテいる事だけは確実に分かる。重要なのは……どこまでバレテいるかということなのだが。そこは会話をしながら探って行けば十分だ。

「でも……大丈夫。アレから二カ月が経ったんだから」

「お前らしいけどな。それはお前にとってもう二カ月か?それともまだ二カ月か?」

直君は容赦なく私に問いかける。そんなこと……指摘されるまで考えた事もなかったことに気が付いた。

自分の身にいろんなことがありすぎて、まだ二カ月でもあるし、もう二カ月でもある。うーん、でもそれだけではない様な気もするなあ。気が付いたら二カ月経っていた。これが本音で私の答えだ。

「どっちとも違う。いろいろありすぎて……気が付いたら二カ月経っていた。それが答え」

時間をかけて私は答えた。直君はそんな私の頭を撫でてくれる。普段はかなり大雑把な直君には似合わないその仕草は結構好きだったりする。


「そっか。智から聞いているけど……いろいろあったな」

「うん。でも私はそれから逃げ出したりはしなかった世」

私は直君の目を見る。本当は逃げたかった。でも逃げる事は出来なかった。それに……私は一人ではない事を今はもう知っているから。

「偉いな。女にしておくには勿体無いな」

「それは……女の子としてはとっても切ないんだけど」

「俺らの関係で何を言う」

直君は、そう言うとガハハと笑う。そうなんだけどさ。私にとっては兄みたいな存在である人だけど、何処まで頼っていいのか……その距離を計りかねている。

「俺に頼れ……違うな。俺ら生徒会役員に甘えろ。お前にとっての最高の場所を用意したからな」

「いいの?」

「ああ。ちいの二年間は、俺達が家族になってやる。ちゃんと自分の居場所を……ここで作れ」

そんな都合のいい事……それって直君を利用する事に……生徒会を利用する事にならないかな?

「お前は考えすぎ。大丈夫。俺らにはお前が必要なの。分かる?」

「私は……何要員?その位の種明かしをしてくれてもいいんじゃないの?」

直君が何を目的にしているか……まずはそれを知りたい。そこからどうすればいいか考えよう」

「今は教えてやらない。放課後に教えてやるよ」

……だと思った。直君の場合はいつもの事だ。気にするだけ馬鹿らしい。

「分かった。少しだけ頭に留めて置く事にする」

「そうそう。明日からお前は義人と二人で君塚まで行くのか?」

「そうだよ。別に問題はないんじゃない?私達は親戚なんだから?」

「いとこだったか?」

「違う。はとこ」

よっちゃんの方は、既に根回しとして私がS高に入学することと一緒に君塚まで通う事をな話しているはずだ。

「まあ、はとこだし、同じ方向だから……ってのは分かる。けれども噂になるのは確実だぞ」

「どうして?それだけで?」

「それだけでも十分だ。他校の男と一緒に登校してみろ。それだけで噂になるぞ」

直君に言われて少し冷静に考える。言われている事もかなりあり得そうで……そうなると困るなあ。だとしたら一体どうしたらいいのやら。

「じゃあ、一体どうしたらいいの?解決方法なんてあるの?」

「だから、俺を混ぜろ。いいな。これは決定だから」

直君に言い切られてしまい私は溜め息をつく。既に私には拒否権の発動すらないらしい。


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