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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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創君が来たのはなんとなく暇だったから訳ではない事が分かった。でも来たら皆がいたから、皆には聞かれない方がいと判断してこの時間に創君が電話をくれたのも、また彼らしいと思ってしまう。本当に創君は気配りの人。

先頭に立って物事を進めるタイプではないけれど、決められた事を取りこぼしがないかチェックしながらやって行くタイプだ。私と創君は9年間ずっと同じクラスだったから、それを当たり前の様に受け止めていた自分が恥ずかしい。

これからは、創君は私の傍にはいない。私の考えている事を、口に出さなくても分かってくれる理解者がいなくなるという事に、私は漠然とした不安を感じた。ここで悩んでいてもどうにもなる訳じゃない。

それなら、過ちを起こさない様に自分で自分をセーブしていればいい。そうしたら、高校3年間だって気が付いたら終わっているはずだ。だったら浅く広く付き合えば誰も傷つくことはないだろうと私は思っていた。


次の日、中学の頃より2時間は約私は起きた。これからは、朝食とお弁当を用意しないといけない。今日は入学式だけだから早く帰れるからお弁当はいらない。明日からはお弁当が必要になる。最初が肝心って言うからしっかりしないと。

春休みの間に私専用の家電が増えた。食費は別と言われたので、3年後の一人暮らしを見越して思いきって買ったのだ。冷蔵庫・炊飯器・オーブンレンジ。家にそれらが届いた時叔母が何かを言っていた気がする。ここ3年間で我が家の家電はかなり新しくなっている。もちろんそれを買い替えたのは私なのだが。

弁護士さんが介入したことで、たくさんの高額なものを購入していた事は分かった。彩乃のピアノも、ちょっと前に買い替えた車も私の預金からだった事には呆れた。

認定が出来なかったものを含めると、多分最近よく売りに出されている建売1軒分の土地位は軽く払えるだろう。一番酷いと思ったのは、父が勤めていた会社から送られていた品物等も全て着服されていた事。

これは流石に申し訳ないと思ったので、弁護士さんと一緒に謝罪を兼ねて父が生前勤めていた会社に行く事にした。図書券・商品券・レジャー施設の入場券……他にもたくさんあったらしい。父の直接の上司であったその人は、ここ数年の私の置かれていた状況が分かると憤慨してくれた。

今後は何かあったら相談に来るようにとも言ってくれた。今もそうだと思うけれども、当時の私は器も小さかったのだろうと思う。大人たちは何もしてくれなかった訳ではなかった。私に何も教えてくれなかっただけだ。そんな事もこれからはなくなると信じている。


4月に入ってすぐに、父のかつての同僚が我が家に訪れた。もちろんだけど、皆おじさんで仏壇の飾ってあった父の写真を懐かしがっていた。父が植えてみる事が出来なかった桜の花が綻び始めていたので、縁側に移動して父が一度も見る事が出来なかった桜の木を眺めた。

彼らも私達が職場に訪れて真相を知ったようだ。入学のお祝いにとシンプルな定期入れをプレゼントしてくれた。

茶色い革製の定期入れは、片隅に小さく刻印されている印は英国ブランドのものだ。あまりにも高額で辞退しようとしたけれども、ちゃんとしたものを持つ事が重要だと諭されて受け取る事にした。

春休みから始めた最初のアルバイト料で定期入れと同じブランドのお財布を買った。お財布はいいものを持った方が最終的に長期間使えると思ったからだ。現金をそんなに持ちたくなかったので、アルバイトに行った時にキャッシュカードで必要な額を引き出す事にした。食費も込みなので、一度に引きだすのは3万円にした。

最初に買ったのは、学校で使うお弁当グッズ。それと所長の奥さんに教えて貰った常備菜を作るための材料をかった。最初にアルミカップに入れて冷凍するとお弁当作りが楽になるとか、私が知らなかったことをたくさん教えてくれる。土曜日はスーパーで卵が特売で売っている事が多いから自宅に戻る前に買って帰るようにしている。少しずつ、自分が出来る節約を実行しているとそれが楽しい。昨日の夜もグラタンを作って、残りはアルミカップに入れて冷凍したし、今度はハンバーグを作って冷凍する予定だ。

専業主婦って毎日が楽そうだと思っていたけど、必ずもそうではないんだなって思える様になった。一人で家の事をやっていても大変なのに、夫と子供の世話までするんだから。所長の奥さんとお茶をしながら教わった冷凍術を実践したらあっという間に冷凍庫がいっぱいになったと話したら、倫子ちゃんはいつでもお嫁に行けそうね。ここで本格的に花嫁修業することはないんじゃないの?って言われてしまった。

結婚……そんな事はまだちゃんと考えた事はなかったけれども、9月になると私も16歳になる。そうやって私も皆も少しずつ大人になっていくのだろうか?


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