君が嘘をついた・・・7
…とは言っても…そんなに簡単に心が切り換えられる訳がない。
私は全く何をしたのか覚えていない。気が付いたら試験が終わっていた。
完全に心身ともに体調が悪い。
行く時に会うという事は、当然帰りも会う訳で…心のバランスが完全に
取れなくなっていた分、朝よりも激しく泣いていた。
どうしたら泣きやめるのかも分からない位パニックしている。
私が泣いているのは、ゆう君も多分見ていたと思う。
乗り換えのターミナル駅でゆう君の友達に私は引きずられるように連れられた。
「とにかく、聞いた。佐倉の気持ちも分かるけれども、何かを考えての
事だと思うぜ」
「別れると思わないでさ。試験に集中するためと思ったら…って難しいか」
私の事を気にしてくれるのは、正直に言うと有難い。
けれど…私が欲しい言葉はそんな言葉じゃない。
「私…皆が思う程、強くないよ。そんなの…もう無理だよ」
やっと…自分の本音をぶつける。
「今は、とりあえず泣き止むまで泣いておけ。お前は昔から泣き虫だからな」
「…くっ…ひでくんっ」
「とも…俺の所に戻るか?俺はお前の全てを受け入れるから…」
「ひでくん、それは出来ないよ。ひでくんを利用するなんて、ゆう君を
傷つける事…私には出来ないよ」
私はやっとの思いで、ひで君に想いと伝える。
涙でボロボロになっている私をひで君は私を抱き寄せる。
ひでくんは私の幼馴染の一人。3歳から続けていたスイミングで私が辞めるまで
ずっと一緒だった。小学校2年生から4年と少しの間、付き合っていた事もある。
そんなひで君とゆう君は小学校からの親友だったそうだ。ゆう君と付き合い
時にゆう君から聞いたことがあった。
「とも…あいつを好きになって何回泣いた?泣き虫なお前は昨日からずっと
泣いていたんだろう?それより前にも泣いただろう?…違うか?」
ひで君のその言葉に私は頷くしかなかった。それは事実だったから。
それに…ひで君は私の性格を静香並みに良くも悪くも知り尽くしているから。
「俺は、ともを泣かさない。それは4年間側にいたともが一番よく知っているよな?
あの時…俺がともの手を離したのが間違いだったんだよ」
ひで君の目はまっすぐ私を見つめている。その目には迷いはなかった。
けれども…私は…
「ひで君…弱っている時に入り込むのは…ルール違反だよ」
今、ひで君と一緒にいることを選ぶということは、3年前に私がひで君から逃げた…
あの事を回避せずにはいられない。
「分かってるよ。ともが俺を求めてくれたら…俺はそれだけでいい。
あの時は焦っていたんだと思う。電車の時間だから…俺行くな」
「うん…ひで君…心配してくれてありがとう」
私はゆう君と別れたけれども、一人きりになった訳じゃない。
私が手を伸ばしたら、その手を繋いでくれる誰かがいる。
今は…それだけでも十分だった。