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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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番外 side智 The mornig when I noticed that there was not you. 君がいないと気付いた朝 6

いつもの2倍位長いです。途中で切ることを断念しました。

それからは、彼女に会う為だけに役員の仕事をしてましたと言いきれる。ちっちゃい彼女をステージ上から探す事は今では余裕になった。

本人に言うと。ちっちゃいって言うなって怒られるけど。そして、ときどき兄貴を含めて三人で出かけたりした。

それだけでも俺は嬉しかった。そして、俺はまた彼女が他の男に恋したことに気がついた。

かつて見たことのある、あの表情を見られる事は嬉しかった。けれどもそれは俺の為でもないのが現実で…。

それを想うと胸はぎゅうっと苦しくなるが、弟キャラのままいつものように彼女の近くにいる事を俺は選んだ。

後になって知った事だが、そんな彼女の幸せな日々は2カ月もなかった…と思う。

俺には何が起こったのか分からないけれども、受験前日に別れたと後になって聞いた。

その事が切っ掛けかもしれないけど、彼女の表情が一気に乏しくなった。

皆といるときは、あまり表情を変えなかったけど、俺といる時だけはそんな事は今までは一度もなかった。

それだけ心が傷ついているんだと理解すると悲しくなる。

そんな俺に出来るのはたったひとつだけ…いつも通りの俺でいる。それしかできなかった。

そして、これも後で分かった事だが、彼女はクラスで孤立していたとも聞いた。



彼女がどれだけその別れた男の事を想っていたのか思い知らされたのは、卒業式の直後のこと。

生徒会室の上の第二音楽室から聞こえた彼女の歌声。

歌いきった後に微かに聞こえる泣き語を聞いて、俺はダッシュで階段を上る。

彼女に何が起こったのか、自分の目で確認するために。

第二音楽室にいた彼女は肩を小刻みに震わせて「大丈夫。私が弱いだけだから。全てをなかった事にはできない」と大粒の涙をぽろぽろと零しながら周囲に訴える。

彼女は兄貴と同じ学校に行くから兄貴に任せようと思っていたけど、今の姿を見て、やっぱり一人にさせられないと思った。

もう誰かのモノの彼女を見たくもない…それしか思えなかった。

そして気が付いたら今の自分ができる最大の告白をしていた。

「同じ学校に行ってもいい?」と。彼女にストレートに伝えても受け入れて貰えないこと位、彼女の事を俺なりに分かっているから。

そんな俺に対して、彼女はしばらく考えてから、「来れるのなら…おいで。待ってる」と答えてくれた。

拒否はされてない。その事だけで充分だった。



春休みは、何度か彼女の家に行って縁側でお茶したり、彼女の両親が残した音質の手入れを手伝ったり、二人で川を見ながら話をしたり、兄貴に代わりに一緒に買い物に行ったりした。

それと、俺のライバルが誰であるかも自然と分かった。

一人は、彼女のはとこである義人先輩。二人でいると双子の様なタイミングで行動する事が多い。

彼女が言うには、はとこだからずっと一緒にいるんだと思うよって笑って答える。恋愛感情なしと捉えていいんだろうな。

もう一人は、9年間ずっと同じクラスだったという創先輩。

この二人は…二人でいるのがとても自然で違和感がない。二人でいても、言葉がなくても側にいるだけで十分な感じにも見える。

やっぱり、彼が今の俺にとっての最大の壁だろうとおもっている。俺達三人は今は同じスタートラインに立っているはずだ。

俺の班では、彼女との歴史のなさ。だったら、彼女が見た事のない俺を見せればいいと考えていた。

いつまでも兄貴の弟でいる気もなかった、彼女からニックネームも付けて貰えたわけだし、そこは大いに利用させて貰う予定だ。



こんなに計算高くて、ずるい俺でも、彼女は受け入れてくれるのだろうか?



あっという間に、俺の春休みは終わってしまった。いつもの習慣で生徒会室にいる俺は苦笑する。

頭では分かっていたはずだった。もう、彼女はいないと言う事を。なのに、心は…いない彼女を全力で探している。

こんなに彼女を求めていた事に俺自身もびっくりだ。本当に…本当にすきなんだ。

いつになったら、俺だけを見てくれるの?俺は誰もいない生徒会室で思わず呟いた。

彼女を手に入れたいと思う。その為には、俺が彼女にふさわしい男にならないといけない。

彼女と同じ学校に行く…今の俺は、それが最大の目標だ。たまにだけども、彼女に夢中になってもいいかなって思う。

その位、想える相手に出会えたことも凄いと思う。これは本当にそう思ってる。

彼女の声が聞きたくなった俺は、机の引き出しアkら一本のカセットテープを取り出す。

音楽の岩城先生が俺にだけくれた、彼女の歌声が入っている。テープを聞いて気がついたのだが、音楽のテストのアカペラの独唱までご丁寧に入っていた。

一番驚いたのは、1年生のころからの音源だった事だ。これをくれたって事は…先生には俺の気持ちは完全に知られている訳で…。

恥ずかしいけど、先生の前では彼女への気持ちを隠す事は止めた。だから、開き直ってテープを貰って、すぐにダビングして家にあることだけは…知られたくない。

テープのツメ…もちろん折ってある。俺としてはそこは基本だと思うんだけど。



俺はテレコにテープを移して、再生ボタンを押す。やがてピアノの音と共に聞こえる彼女の澄み切ったソプラノの歌声が俺を包み込む。

暖かな気持ちが俺を支配するが、すぐに俺は気がついた。こんな事をしても、彼女はいない。

「おはよう」とも「じゃあね」とも言ってくれない。やっぱり…寂しい。急に切なくなって気がついたら涙を零していた。

俺が見たあの日の彼女の様に。そして、俺は気がついてしまった。失くすってこんなに辛いと言う事に。



俺は誓う。今度こそ…ちゃんとその時が来たら思いを伝える…と。俺はもう彼女を一人にさせない。

あの柔らかな表情を今度は俺にだけ向かせて見せると。そして涙を拭いながら、絶対に負けないからと呟いた。


ようやく、本編に戻ります。

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