番外 side智 The mornig when I noticed that there was not you. 君がいないと気付いた朝 2
この習慣は、片想いの相手に朝会いたい…ただそれだけの為のものだったから。
けれども、当の本人は先月中学をそつぎょうして、2日後に兄貴と同じS高に入学する。
染みついてしまったこの習慣に気がついて、俺は苦笑いするしかない。
俺達の中学校は1年生だけが校舎が違う。
だから、そんな風にしないと、彼女には俺には会う事が出来なかった。
すれ違うだけでもいいだなんて…と兄貴はどれだけ純情なんだとからかっていたけれども、そこを否定できないことが今でも悔しい。
だって、彼女にとっての俺は男ではなくって、弟的ポジションだし。
今は却ってその方が都合がいいんだ…ここだけの話。
ちっちゃい体にとんでもない力を秘めている彼女。
いつもはとても穏やかなのに、本当は負けるのが大嫌いな負けず嫌い。
俺や兄貴と一緒だと、いろんな表情をする彼女の事が凄く好きだ。
この気持ちだけは誰よりも…負けないとそう思いたい。
そんな俺達の第一印象は、今…思い出しても本当に最悪だ。
当時、小5の俺は、当時の彼女の状況を知らずに喧嘩を売ってしまい、プールサイドで大ゲンカをしてまった。
挙句の果てに、彼女は自分よりも15センチは大きいであろう、男子を指名してその男子よりも早く泳げると言い切った。
確かに兄貴からは彼女は泳ぐのが校内では早いとは聞かされていたが、いくらなんでもそれは無理だと思っていた。
その上に、その男子はクロールで、彼女は背泳ぎで勝負するという。
普通なら、クロールの方が確実に早いはずだ。そんなこと俺だって分かる。
しかも、身長差があるのだから、絶対に彼女は勝てない、口から出まかせだと思っていた。
なのに、実際に勝負をしたら、最初から彼女のリードで終わってしまった。
レースの後に、俺は素直に彼女に謝った。そんな俺に彼女はこう言った。
私、今年は勝てるゲームしかしたくないのよ、その為ならなんでもやるわ…と。
そのきっぱりと言い切る彼女の強さに俺は惹かれて恋をした。