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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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番外 side理絵 私だって幸せになりたい2

母の私に対しての関心は私の成績だけ。それ以外は4歳離れた弟が私の母の全てだ。

私よりも頭のいい弟に私立中を受けさせるべく、全てのパワーを弟に注いでいる。

羨ましいと思った時も、弟を恨んだ時もある。

今の私は…弟がいるから、不要に干渉されないですんでいる。まさに弟様様だ。

「あなたの成績だと、あの親なし子より上でしょう?」

「…多分ね」

私は曖昧に答える。母はとにかく佐倉さんの事を目の敵にしている。

本当の所は…私にはどうでもいいと思っている。

そんな私と温度差がある母が凄く滑稽に見えてくる。

その後、内容があるんだかないんだか分からない話を少しする。

「はーい」

私はいつものように返事をするけど、内容は覚えていない。否定しなければ問題ないはず。

佐倉さんの方が私より成績がきっといいと思う。少なくても英語と社会は満点だったはずだから。

でも、この返事だけで母の機嫌が良くなるのなら安いものだ。

この時の私はまだその程度しか考えていなかった。



中3の夏休みに塾の合宿があったので参加した。皆は成績をあげたくて参加したみたいだけど、私の目的は別にあった。

ただ単純に家にいたくなかったそれだけ。合宿に行って気がついたのは、平日コースの友達や富田君や土日コースの人達がいて楽しかった。

勉強するための合宿だから大変だった。けれども、最終日の前日に美紀ちゃんが富田君に告白して付き合うとは思わなかった。

その事が、後で起こる事のきっかけになることなんて、あの時は誰もそれすら知らないことだった。



2学期になって、自然と暮らすも受験モードになっていく。

自分なりに努力はしているけれども、模擬テストの順位も偏差値も緩やかに降下していく。

このままではいけないと思って、焦れば焦る程に泥沼に嵌ってどんどん深みに嵌っていく。

私はそんな中をひたすら足掻くしかなかった。

10月の英検は、私と同じように平日コースに通う由紀子と一緒に学校で受けることにしていた。

学校の受験は一般会場の翌日なので、一般会場で先に受けた子から問題を聞くつもりで、その前日になる土日コースを振り替え受講することにしていた。

同じ中学の子が聞いたらずるいと言われるかもしれないが、気にしない。

今の私が浮上させる切っ掛けにしたかったから。

その時は、同じクラスの佐倉さんもいるっけという程度だった。



「…で、佐倉はどの教室だった?」

「私ね、1年生だったよ。結構、難しかったね」

「うんうん。結局さ、長文の話ってどうなったんだ?最後まで解けなくって…ヤバいかも」

「あれは…カラスは賢い生物ですって事じゃないのかな」

どうやら、佐倉さんは一般会場でもう受験したらしい。

違う中学校…大崎中や末野中の子達と話している。

今の会話で、かなり難しい事は分かった。どうやって、問題を聞きだすか…だ。

佐倉さん達は、相変わらず話をしている。

「そこまで出来ていていれば、2次はありじゃないの?」

「だと…いいんだけど。あれ?理絵ちゃん達は今日は振り替えなんだ?」

「うん、ちいは英検受けたんだ。問題って…覚えている?」

由紀子が、早速彼女に問いかける。見た目はおっとりとしているように見える由紀子だけども、意外に図々しくて強かだったりもするのだ。



そんな私達を暫く見ていたちいは、英検の問題集をぱらぱらとめくる。

数ページのページ数を書きこんだメモを私達に渡してくれた。

「多分、ここの辺りをきっちりと頭に入っていたら平気だと思う。すっごく難しいかと言えば、文法だけだとそんなことないよ。塾のテストの方が難しいと思ったから。だから、構文の書き換えまでで、きっちりと点を取れればいいんじゃないかな?」

「倫子。長文が厄介って言ってたでしょ?」

「それはね、カラスについて、どれだけ知っているか…だよね?」

佐倉さんは同じように受けた子達に聞いていく。

「うーん、動物としてもだけども…ちょっと神話っぽいのもあるから…」

「そう。受験生としては知らなくてもいい事だね。知っている人だけはおいしい話だったって事で」

彼女の言う事が更に分からなくなる。

「とりあえず、もう一つの長文は、地図があるから、そっちはちゃんと分かるよ…ね?」

「うん。そこでミスしなければ、カラスは大丈夫じゃない?」

「それは言えてる」

受けた子達は、カラスは捨てろと言っているみたいだ。

神話か…、私読書嫌いだものなぁ・

「それよりも、私は二人の方が偉いと思うよ。中間テストの初日の後に英検受けるんだもの。私は無理だね」



何気なく、佐倉さんが言った言葉に皆が一斉に振り返る。

「佐倉…テスト勉強は?」

「うーん、今夜からするよ。その事は担任には既に報告済みだもの。英検が受かってくれると、今回のテストが悪くても十分にカバーできるからね」

「何…それ…」

「いろいろあってね、進路変更したの。だから、今の学力の維持で十分なんだ。皆に比べたら楽している気がしなくもないんだけどね…。志望校がね、そのままだともっと成績を上げないと無理って言われてやめたの」

「相変わらず、倫子は、覚めた考え方ね」

「うーん、あえて言うと、無駄な事に時間を使いたくないだけよ。それに定期テストで満点を取ろうと思ったことなんて…一度もないよ」

「どうして?」

「結果的に満点ならいいけど。絶対に取るって思うとさ。プレッシャーになるじゃない?そこんところって」

「気持ちの問題か」

「うん。それだけ。私にはそれがちょうどいいみたい」

何があったか知らないけれども、あっさりと進路変更できるというのは思い切ったなぁと考える。

今のままでも十分受かる学校をターゲットにしていて、英検があると確実になると言う事だろう。

羨ましい限りだ。逆に私が氏病している学校は今のままでは難しいと言われている。

彼女はどの学校を行きたいんだろう?彼女は自分がどの学校を志望しているか、一言も言わなかった。

それよりも希望断念した学校の名前すら口にしなかった。

その時の私も、そんなに大した所に行かないんだと思っていた。

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