さよなら大好きな人5
「お前はそれでいいのか?後悔しないのか?」
長居君は私に確認するように聞いてくる。
長井君はこれから私がどうしたらいいのか…方向を決められるようなヒントを持っているのだろうか?
「もしも、長居君ならどうする?別れた彼ともう一度寄りを戻す?それとも…逃げるように逃げ出した初恋の人と寄りを戻す?」
「えっ、それって。佐倉、お前もしかして…」
「長居君が考えている事が正解だと思う。私、クラブで泳いでいる間…4年半近くかな?ひで君の隣にいたの」
「そっか。ひで本人からは、一緒に練習したって聞いていたから。もしかして…とは思っていた」
「でも、私とゆう君が会ったのは本当に偶然なの。この塾に誘ってくれたクラブの同期は隣のハイレベルクラスだしね。私と彼らが幼馴染だったほうがびっくりかしら?連絡はいつも電話だったもの。二人とも」
「ふうん。で、二人は今のお前の事は?」
「もちろん、知ってる。彼らの学校と教科書が全て同じだから、週末に勉強を見て貰う事にしたの」
「ちなみに、二人の学校はどこ?」
「第一高校よ。S高のレベルで第一高と同じ教科書なんて…なんか意外」
私があっけらかんと答えると、長居君は顔を軽く引きつらせている。
私…何かいけないことでもしたのかしら?
「佐倉。それよりも、お前の持っているその人脈の方が俺にはびっくりだ」
「そうかなあ?ただ、ずっと仲よくしているだけだよ。私」
「そりゃそうだけど、それが一番難しくないか?」
長居君の言う事は一番よく分かる。少なくても学校では同期達の様に何でも話せる人はあの4人しか私にはいないから。
「でもね。私だって凄く悩んだんだよ。二人が親友だって分かった時は」
「そりゃそうだろうな」
「私の中では、ひで君とは、あの夏の日に終わった事だから、気にする事を止めたの」
「だけど…ひでは離れていた間も、お前の事を想っていた…と。
私はゆっくりと頷く。ひで君の方はあの日からずっと私を想っていたと言う。
それはあの大泣きした時に言われた。
「そんな事を聞いたらね、私はもっと二人を選べないよ」
「どうして?あんんあに思われるの…嬉しくないのか?」
長居君はどうして選ばないのか?と不思議そうに私を見る。
「私自身…そんなに器用じゃないって。彼氏に振られました。かつての恋人と寄りを戻しましたって…凄く自分本位で相手の事を全く考えてないよね?そんな失礼なのって、私の考える恋のルールにはない」
「確かにそうだけども、普通はそれに乗っかるだろうな」
「ひで君となら…距離間のある恋も出来るよ。でも、今のひで君は一番大切な解きなの。私といる時間よりも、子ども頃に見皆で下夢を叶えて欲しい。ひで君には、夢を追いかけて欲しいの」
「成程。それは分かる。今のひでは…そうだよな」
「そうなるでしょう?二人とも、私と同じ方向の学校には通わないから会う事もないし、今すぐには解決はしないけど、時間の経過がきっと解決してくれる。私はそうありたいから、二人の…どちらの手を取らない。それが私の結論よ」
私はジッと長居君の目を見る。本当は二人のどちらかの手を取ってもという甘えがないと言えば嘘になる。
今はその甘えを選択してはいけない。自分に暗示をかけるように言い切った。
「分かった。お前は本当に強いのな」
長居君は、肩をポンと叩く。咄嗟に私はその手を払いのけた。
「ごめん、つい。本当は、今だって泣きたい時がある。でもね、私は知ってるの。泣いても何も解決はしないのよ」
「それは、そうだけど…。恋愛は別じゃないのか?」
「なのかな?真美だを効果的に使える程、私は器用でもないの。あの時だって、あんなに泣いたのは、7年振り位なの。私はね…どんなに泣いてもどうにもならない事を知っているから。多分…大丈夫。私は一人じゃないもの。長井君みたいに心配してくれる人がいるから。気にかけてくれてありがとう。それとね、今の話はここだけの話にして貰いたいの」
「優に話さなくてもいいのか?
「うん。私達の道は別れているから。もしも…一つだけ伝言してくれるのなら、頼んでもいい…かな?」
「その位は構わないさ。もちろん、他の人の前では言わないから安心しろよ」
「うん。出来ればね。お願いだから…笑っていて下さい。それだけでいいから。多分私の言いたい事は分かってくれるから」
「分かった。伝える。お前も…元気でな」
「うん、長居君も」
そして長居君は私から離れて行った。
しばらく、パーティーでひさしブルに会うクラスメイト達と会話をしてから、私はパーティー会場を出ることにした。
会場の至る所で、皆が写真を撮ったり、連絡先を交換したりしている。
私なりにパーティーを楽しんだので、帰宅しようとパーティー会場を後にしようとした時に、私の視界に入ったのはゆう君と楽しそうに話す理絵の姿があった。
そう言えば、同じコースじゃないけれども。二人とも最初の志望校はN高だったなぁとぼんやりと考える。
そんな二人が何を話しているのかは、私には全く興味がなかった。
けれども、この二人の接触がその後から続くトラブルの元凶になるということはまだ誰にも分からない。
次に、番外編として理絵のサイドストーリーになります。