さよなら大好きな人4
「話は…あの後の事でしょう?ゆう君の事?それとも…ひで君の事?」
私から話を切り出した。
「流石は、佐倉だな。まずはひでの事な」
そう言ってから、長居君は、あの事を話してくれた。
学校に戻ってから、ひで君はゆう君に私を取り戻すと宣言したそうだ。
あの日逃げるように別れを選んだ私に意地を張らないでちゃんと謝っておけば良かった。
親友のお前なら、私を任せられると思ったのに…と。
何があったかひで君が納得できるように話すように詰問したらしい。
それはその通りだなと私も納得できる。
私自身も、ゆう君の嘘を見抜いた上で別れる事にしたのだから。
長居君も二人が何を話したかまでは知らないけれども、知りたいのならどちらかに聞くべきだと言う。
「そうだね。でも…怖くて聞けないや。あれだけ泣いた所を見られているし、その事でゆう君を私は傷つけてしまったのだから」
私だって…真実は知りたい。私は当事者だから。でも…その気持ちと同じ位に…知りたくない自分もいる。
「俺が言える事は一つだけ。どんなに辛い事でも知るべきだと思う。佐倉…お前、ゆうの事を恨んでいるか?それなら知らない方がいいけど…」
「ねぇ、長居君。私が…ゆう君の事を恨んでいるように見えるかな?」
逆に、私は長居君に問いかける。
「佐倉…お前…もしかして…」
長居君は私の気持ちに気付いたのか言葉を濁したままだ。
「私…私ね。ゆう君を恨めないし、嫌いにもなれないよ。今の私をあえて言うと好きだった人かな」
「そっか」
「あれだけ、好きだったんだもの。長井君だって、見てて分かるんじゃないの?」
「そうだな。佐倉がゆうを見てたのは、俺は早くから知ってた」
「それだけ好きだった気持ちをそんなに簡単に全てを…なかった事には出来ないよ。けれども…けれどもね。元に戻る事も私は考えていないの」
「どうして?そこは、お前の気持ち次第じゃないのか?」
長居君は、私を見てから息を吐く。
「溜め息をつくとね、長居君の幸せが減っちゃうよ。それでもいいの?」
「それは…マジ困る」
長居君が焦るのと見て、相変わらず見てて面白いなぁと思う。
「長居君の言いたい事は分かるよ。片想いはね、一人で出来るけど、恋は一人ではできないの。それに…ゆう君は私に嘘をついている。嘘をついてまで別れたいといったゆう君の気持ちも私はなかった事に出来ない。多分…、ゆう君がその事を決めた時は、きっと私以上に辛かったはずだもの」
私はそう言うと、ゆう君がいる方向をチラリと見た。
彼が友人と笑っているのが見える。
「佐倉…お前…」
「ゆう君…笑っているね。良かった。笑えなくなったかと思っていたの」
私が何気なく言った言葉に長居君が素早く反応する。
「佐倉…お前…」
「うん。あの日から笑えない。笑い方を忘れちゃったみたい。おかしいでしょ?あっ、でも微笑む程度は出来るから…安心して…」
「そういう問題じゃないだろう?」
「分かってるよ。私がそれだけゆう君に甘えていたって事だから。それは、私の責任だから」
私がそう言うと、長居君は黙り込んでしまった。




