さよなら大好きな人2
「先生…ありがとう」
「おおっ、佐倉元気だったか?」
「はい、高山先生のお陰で本当に助かりました」
ようやく私は、弁護士の高山先生に引き合わせてくれた小森先生と話すことが出来た。
「そうか。それは良かったな」
「でね、小森先生、高山先生に報酬を支払いたいんだけど…高山先生が受け取ってくれないんです」
「成程な。そこは、俺がどうとは言えないが、高山がいらないってことは、親族の誰かが支払ったってことだと思うけどな」
「そうなのかなあ?」
私は小森先生に言われたことに怪訝そうな顔をした。
お金が絡んだそういうことはちゃんと教えてほしいと私は思っている。
それともやっぱり私はまだ子供という事なのだろうか?
「そう考えると自然じゃないかな。そうそう、高山からなお前にアルバイトを頼みたいそうだけど…やってみるか?」
「表向きはアルバイト禁止ですけど…興味があるので、パーティーが終わる前に行ってみようかな」
「なんだ?お前最後までいないのか?」
「ええ。小森先生にちゃんとお礼が言いたかっただけだから」
「そうか。多分、アルバイトはあいつの事務所の雑用だ。俺もやったがそれなりに勉強にもなるから佐倉が引き受けてくれると嬉しいな」
「分かりました。考えておきます」
高山先生は、小森先生の高校の後輩で、民事方面に詳しい弁護士さんだ。
普段は弁護士さんとして実家でやはり弁護士さんであるお父さんと一緒に事務所を開いていると言っていた。
私が依頼したことのほかに、今まで私が持っていた銀行の口座を変更するようにアドバイスをしてくれて、更に私が分かるように資産運用の方法も個人的に教えてくれた。
いかに、今までの自分が、本当に何も知らない世間知らずだったのか痛感したのだった。
私は高山先生の前で、子供な自分が嫌で、早く大人になりたいと呟いたことがある。
高山先生は、そんな私を見て、早く大人になることはないって言っていたけど…君には無理だよねと言った後に、少し悲しそうに私を見ていたっけ。
その時の私は、子供の都合と大人の都合は必ずしも理解しあえるものではないと思っていた。
おば達とは、結果的に同居の解消にはならなかった。
オタ達は姪の小学校を理由に私の家から出ることを拒否したのだ。
この話し合いをしたのが3月中旬。引っ越すには十分なタイミングだと思ったが、友達と引き離すのは残酷と思わないのか?と言うだけだった。
確かに、私の家から小学校までは歩いて5分。低学年のうちは仕方ないと思う事にした。
結論としては、高校を出るまでは同居のままでその後は交渉をして、小学校卒業時には家を出て貰う事にした。
甘いかもしれないけど、この位の落とし所の方が、互いの為と高山先生に言われたので、私はそのまま従う事にした。